第102話 弱点と欠点
本日二話目の更新です
(つーか、今俺のこと吹っ飛ばしたのイフリートでいいんだよな?)
ハルは自分の中に芽生えた疑問に、ふと、イフリートを見つめる。
(攻撃されたら四散する癖に、自分が攻撃するときは肉体を持つのか……? クソ、どこまで自在な体してやがんだ……!)
「どうしたもんかな……」
立ち上がったハルに、イフリートは容赦なく襲いかかる。
火の玉を打ち出しながら自分も飛び出し、ハルの逃げ場を無くしていく。
「ッ、蔦ァアァ!!」
襲い来る精霊めがけてハルは蔦を発現させる。
太く頑丈な束として発生させた数本の蔦は、飛んでくる火の玉を貫き、四散させる。
(イフリート相手に物理なんて無駄でしかねぇ! 俺にはもうティアナみたいに属性関係なく魔術を打ち出せるだけの才能はねぇし、そもそも火に対して相性のいい魔術を持ち合わせてねぇンだよ!!)
「蔦ァァ!!」
ハルは大量の蔦をイフリートめがけて飛ばし、その身体の至るとこを四散させていく。
(とにかく、アイツの膨大な魔力を少しでも削らねぇと何もはじまんねぇ……!)
「さっき無駄だってわかっただろ?」
「無駄でも、魔力くらいなら削れるだろ!」
挑発してくるシークに、ハルは強気で返し続ける。
火の玉を防がれたイフリートは、四散した体を再生しながら次の攻撃に出た。
『……!!』
イフリートは自分の背後から発生させた細く鋭い炎をハルへと向けて無数に飛ばす。
炎の雨の様に自分の頭上へ降り注ぐそれに、ハルは蔦を傘の様に編み上げ、盾として身を護る。
「……ッ!!」
(あぁ、クソ! 魔力がたりねぇ! こんなんじゃ、予想より早く魔力切れになる!!)
数本、体に掠らせたものの、ある程度防ぎ切った穴だらけの蔦を睨みながら、ハルは唇を噛む。
火傷により出血こそないものの、痛みは倍に跳ね上がり、確実にハルを蝕んでいった。
「どうにかしねぇと……!」
負傷した体を庇い、ハクは動き続ける。
焦るハルに、イフリートは歩み寄り、シークは煽る様に言葉を投げかけた。
「さっきまでの威勢の良さはどうした!」
「うるせぇ!」
自分の冷静さを欠かせるための言葉に、ハルはシークを睨みつける。
そこで初めて、ハルはランタンに眼をつけた。
(アイツ、なんでまだランタン持ってんだ? それに、イフリートが出た後なのに、ランタンにはまだ火が灯ってる……!?)
頭に浮かんだ疑問に、ハルはニヤリ、と口角を上げ、眼を見開く。
「ハッ! なんだ、簡単なことじゃねぇか」
自分の前で煙を上げる蔦を地面へと戻しながら、ハルはゆっくりとシークへと歩み寄る。
立ちはだかるイフリートには眼もくれず、ハルは余裕を醸し出す先輩を睨みつけた。
(どうにかしてイフリートを蒸発させるんじゃない。俺にそれができたとしても、コイツは消えねぇだろうからな。なら、コイツの発生源を、シークの持つランタンを壊せばいい!!)
「うおぉおおぉぉ!!」
痛む体に無理を言わせて、ハルはシークめがけて走り出す。
雰囲気の変わったハルに、シークは警戒を強め、イフリートへ命令を出した。
「イフリート!」
「邪魔だああ!!」




