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第100話 賭ける価値

本日二話目の投稿です


「おいおい、冗談きついぜ」

「冗談なもんか」


 威勢を張り続けるハルに、シークは見透かすように眼の笑わない嗤いを向ける。


(……正直、予想外だった。シークが、こう出てくるとは。アルフが言ってた『一工夫する』ってのはこのことか……!)


「へぇ……!やるじゃねぇか」


 今まで見せたことの無い戦法に、西ゲートから観戦しているアルフは、感嘆の声を上げる。

 その隣で従兄を見守るハイドは大きく溜め息を吐いた。


「はぁ……。準備を手伝わされた僕が、どれだけ大変だったか」


 腹を立てているかのように呟くハイドに、アルフは嬉しそうに口角を上げた。


「兄の世話は、弟がするもんだろ」

「お前はそう言っていつも手伝わないんだ」


 もう一度、自分の疲労度を幼馴染に知らしめるように溜め息を吐くハイドに、アルフは大きな笑い声を上げる。


「さぁ、お手並み拝見だな」


 フィールド上へ眼を向けるアルフに、諦めたように項垂れるハイドは、従兄の背を仰ぎ見た。


「あんなに、小さかった癖に……」


 ポツリ、とハイド漏らした呟きを聞き逃さなかったアルフは、表情を引き締め直し、腕を組む。

 幼馴染の成長を、見届けるように注がれるその視線は、どこか温かかった。

 一方、フィールド上で固まったまま動かないハルは、シークの笑みが恐ろしく見えていた。


「俺は勝手にイフリートって呼んでるけど、コイツ結構強いんだぜ?」

「イフリートって言うんだからそうだろうな」


 冷や汗を流しながら、ハルは己の拳に力を込める。

 俯いたまま動き出さないハルに、シークは首を傾げながら挑発する。


「なんだ? 来ないのか?」

「そういうなよ、先輩」


 魔力を持っていかれたにもかかわらず、余裕そうに振る舞うシークに、ハルは嗤って返す。


「俺は今、最高に滾ってんだからよ……!!」


 顔を上げたハルの顔は大きく口角を上げ嗤っており、まるでこの状況を楽しんでいるかのようだった。

 後輩の意外な反応に、シークは釣られて嗤う。


「俺は、必ずお前を屠る!」

「かかってこい!」


 シークの行動に、ハルは毎回アルフを重ね見る。


(ったく、幼馴染だからって似すぎだろうが……!)


「蔦ァ!!」


 ハルは魔術を発動し、イフリートに蔦を絡ませる。

 足元から徐々に自分の自由を奪っていく蔦に、だがイフリートは慌てることなくそれを燃やし尽くす。


「やっぱりそうか……!」


 自分の蔦が燃えていく姿を見て、ハルは唇を噛む。


(精霊を使うなら、本来魔力の消費が激しい火の精霊である必要はない……! 俺の魔術を知っていたからこそ、)


「俺を倒すためだけに、お前は命を懸けるのか!」

「俺は、アルフの待つ決勝へ行く!!」


(前回もそうだった。コイツは、簡単に命を懸けてきやがる! 魔力供給は命懸けだってのに! 無いだろう、無いと思いたい。だが、シークは絶対にやる……! 無茶を承知で、絶対に!! 魔力供給をもう一度、イフリートに!)


「お前、アルフに1回怒られてるだろうが!」

「だからどうした! お前には、それだけ賭ける価値がある!!」


 叫びあう2人の顔は、どちらも眼を見開き、口角は上がり、闘志に燃えたものであった。


「だったら、お前が果てる前に俺がぶっ飛ばす!!」

「やってみやがれ最弱が!!」


 シークの言葉を合図に、ハルとイフリートが同時に跳びだした。




100話到達!


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