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第99話 シーク


「我が導に従い、その力を示せ! 蔦ァ!!」


 開幕と同時、ハルは魔術を発動する。

 発現した蔦は真っ直ぐとシークへと向かっていく。

 軽やかに跳びながら蔦を躱すシークは、挑発の意味を込めてハルへ笑いかけた。


「そう急かすなよ、後輩!」


 着地をした後、充分な間合いを取りながらシークは片手に持つランタンに目を落とす。


「俺が戦闘向きじゃないことは、よく知ってるだろ?」


 ハルへと視線を戻し、シークは口角を上げる。

 彼の持つそれから溢れ出る魔力に、ハルは跳びだすことを止め、相手の隙を見計らう。


「俺はアルフみたいに大がかりな魔術は使えない」

「魔術供給とか、割と大がかりだろ」


 大きく仕掛けることもなく、2人は互いの出方を探る。

 ニヤリ、と口角を上げたままのシークは、どことなくアルフに似ていた。


「だから、俺はこれ」


 シークは、手に持つランタンをハルへ掲げて見せた。

 妖しく光るその炎に、ハルは無意識に警戒する。


「そう警戒すんなよ」


 笑いながらシークはランタンについている扉をゆっくりと開ける。


「出ておいで」


 シークがランタンの中へ声をかけると、ランタンの明かりが一層強く灯り、魔力が爆発的に大きくなる。


「なっ……!?」


 ハルが警戒を強くし、構え直したその先で、ランタンからはじけるように1つの炎が飛び上がった。


「おいで!」


 はじけた火の玉に、シークが手を差し出す。

 形が定まらない火の玉は、空中を漂いながら、もう一度はじけた。


『ぴきゅっ!』

「……は?」


 手のひら程の身体で、目いっぱい手足を伸ばし、全身に酸素が行きわたる様、大きく深呼吸するそれは、小さな火の精霊であった。

 膨大な魔力量から凄まじい魔物が飛び出すと期待した観客は口を開けたまま絶句し、緊張感を募らせながら構え直したハルは、体から力が抜けた。


「んだよそれ!!」


 文句を口にし、火の精を指さすハルに、シークは面白そうに笑う。

 自分の周りを自由に飛ぶそれに、シークは優しく手を添えた。


「そう言うなって。これからなんだからさ!」


 火の精を乗せた手を体の前へ伸ばし、シークは魔術を展開する。


「我が導に従い、その力を示せ!」


 シークが展開したのは、彼の大得意とする魔力供給の陣。

 火の精は自分に向けて放たれたそれに、小さかった体は大きく成長し、幼かった顔つきも、徐々に大人のものへと変わっていった。


「なっ!?」


 観客を置いてけぼりにするその精霊は、15センチメートル程であった身長が2メートルまで伸び、魔力量も計り知れないものになっていた。


「あれは、……イフリート?」


 東ゲートにて。

 ティアナはシークが召喚した精霊の姿を、最強と謳われる火の精霊イフリートにたとえた。

 レイも否定することなく、その姿を見つめ続ける。


「……はっ、どこが大がかりじゃないって?」

「凄いだろ?」


 自分に寄り添うように立つ火の精に、シークは誇らしく笑い、その眼光を鋭い物へと変える。

 ゾクリ、と背筋が凍るハルは、息を飲み、自分を奮い立たせるように笑う。

 無理に表情を作る後輩を見て、シークはアルフそっくりな嗤いを浮かべた。


「さ、やろうか」




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