眠れぬ月のために
あれからどれくらいの時間がたったのだろう。早く眠らなければ、眩しい世界に飲み込まれてしまう。いくら目を瞑って拒んでみても、瞼の裏側にまで赤く届く強い光。わたしを消し去る強烈な光・・・。そう、やはり朝が嫌い。
目を覚ますと、目の前の景色はさほど変わっていない。それでも、とても長い夢を見たような気がする。深い暗闇にわたしは独りで居て、なにもせずにただそこに居る。わたしがそこに在るかどうかは、わからない。でも、わたしは確かにそこに居る。きっと眠りについたのは、夕方に似た朝方なのだ。
厚手のカーテンが外部からの光をほとんど遮断したわたしの部屋。完全な暗闇ではない。眠たさを合わせてもちゃんと部屋の中だと分かる。それなのにカーテン一枚を閉めてしまえば、わたしの心と外の世界は完全に遮断されてしまう。
今日は何をしよう。とにかく何かしなければ、どうにかなりそうだ。コージは昨日会ったばかりで、なにより自分から誘うのも嫌だった。珍しく今日は、独りで呑みに行く気分でもない。
気晴らしに掃除でもしようと、窓をすこし開けた。季節は夏から秋になろうとしている。陽が落ちれば心地よい涼しい風が吹くのだ。日中閉めきりで、まがまがしく溜まっていた何かが外へ逃げていくようだった。