三章 ベットの上に…
やっと目覚めましたね…?
どこかから聞こえたこの声。
お婆ちゃんの声に似ていた。
お婆ちゃんと声をあげてみたけど、
顔が見れないまま、そのお婆ちゃんは
どこかへ消えていった。
怖いよ。この世界。
色々な意味で怖いよ!
きょろきょろと周りを見渡すと、
サイドテーブルといえばいいのかな。
バーでよくあるテーブルの上に、さっきまで
私がきていたルームウェアと、
ルームシューズが置かれていた。
土で茶色に汚れていたが、
元の色を取り戻していた。
寮のベットよりはるかに大きいベッド。
右には、白いデスクと羽つきのボールペン。
デスクの前にある白いカーテンのかかった窓からは
暖かな日差しとさわやかな風が差し込んでいる。
明らかに寮ではない。
寮をこのように改造しようもんなら、
三日はかかるだろう。
いや、それ以上か。
まず驚いたのは羽つきのボールペンだ。
幼少期、ハトの羽で作った事があるが、
やはり本物は違う。
豪華な内装。
…ちょっと待てよ。
ルームウェアを脱がされたって事は、
別の洋服着てるってことじゃん。
先に気づけよ自分。
下半身に目を向けると、
自分のルームウェアよりも、生地がモコモコで、
履き心地がよい。
ピンクのハーフパンツに、ところどころレースを
あしらった女の子らしいルームウェアだった。
ルームウェアを、まじまじと見ていた時だ。
――カチャリ
静かにドアがあいた。
食事を運ぶ銀のワゴンが先に入ってきた。
それから、お金持ちしか雇えないであろうメイドが
入ってきた。
メイドをよく見ると、日本でもごく数人のメイドしか
着ることができない、超貴重なメイド服を着ていた。
「お目ざめになられましたか。
おからだの調子はいかがですか。」
ベッドサイドにワゴンとともにやってきて、
訪ねてくる。
笑顔だけれど、言葉言葉に心がこもっていない。
こんなメイドの仕事なんて、素人の私でも
できるぞ。
「大丈夫です。
私を助けて下さったのは、貴方。
メイド様なのですか。」
「違いますが。」
訪ねた瞬間、すぐ返ってきた。
氷みたいだ…。
じゃあ誰が助けてくれたのだろうか…。
「ご主人さまとおくさまが、
行き倒れであった貴方様をお救いになられました。」
そういってこのメイドが嫌味っぽく微笑んだ。
黒い笑顔とは、この事だろうか。
凄いこのメイド、嫌。
「そうなんですか。
お礼がしたいのです。
そのご主人さまとおくさま、とかいう方々は
どちらにおられますか。」
この腹黒メイドに対して、敬語を使う私。
美しい!
メイドは、ニヤっと笑って、
「ずっと眠ってらしたわ。
ご主人さまと奥様は心配なさってたけど、
貴方の介抱を任せられた私は、
心配という文字のカケラもありませんでしたわ。
ずっとねむっていらしたから、
さそがしよい気分なんでしょうね。
では、ご主人さまと奥様をお呼びいたします。」
メイドはまたニヤリと笑って、
ワゴンを置いて出ていった。
メイドが出ていった瞬間、
ワナワナと怒りがこみ上げる。
『さそがしよい気分』
『心配という文字のカケラもない』…
どうしてアイツを雇ったんだよ!
しばらくすると、またドアがひらいた。
またアイツか…?と思いながら、
ドアを見つめる。
返事をすると、先ほどのメイドの後ろに
老夫婦がいた。
「さっきは驚かせてごめんなさいね。」
お婆ちゃんの声だった。
さっきは驚かせて…って何をしたの?
「実は、貴方の様子が知りたくて、
精霊さんに頼んだのよ。
精霊の事は気にしなくていいの
貴方、おからだは大丈夫なの?」