二章 歩く歩く
「…自転車でー…日本一周目指します…」
自分を元気づけようと歌うが、元気になれない。
というか、一向に人里につかないのだ。
歩いて見えるのは、木、草、木、草。
時折、木々や草が重なり合い奏でるハーモニーが聞こえる。
最初のうちはそれで心いやされていたのだが、
しばらく経つと癒される。それが
うるさいに変わるのだった。
そんな地獄のような風景を眺め、
たまにほふく前進で進んでいると、もう一夜経過していた。
昨夜一番地獄だったのは、この部屋着で、
外で寝るという事だ。
今の日本、外で寝ると
ホームレス扱いで名誉が傷つく、もしくは、
犯罪に巻き込まれる、ヤンキーに
笑われるのどれかである。
唯一、人が通らなかったのが救いだ。
怖くて、その辺の葉っぱを敷き詰め、
布団にし、眠りについた。
一日中歩くと、やはりすぐ瞼は重くなる。
嗚呼…神様お願いです。
どうか私をふかふかのベッドに戻して…
翌日目覚めたのは、赤い夕陽が沈もうとしている
時だった。
最悪、という二文字が頭の中で光る。
20時間ほどねていたのだ。
よほど疲れたのだろう。自分の体。
20時間寝たらもう元気ハツラツ。
…ということはこれからの暗闇、眠れないという事だ。
ああ…酷い…
そう思いつつ歩く歩く歩く。
自分を疲れさせるため走ったりもした。
だがつかない。
なんのいやがらせか。
私は普段からよい行いをしているとは言えない。
が、どちらかというと、悪い行いをしている人間の
受けになっている。
朦朧とした意識の中で、愛美は歩く…
嗚呼・・・
もうだめ
このまま眠ってしまいたい…
「―――…」
「――マナ…や…」
誰かが私に何かを話しかけてくる。
おばあちゃんのような声。
嘘でもいいおばあちゃんが助けてくれたんだね。
意識がハッキリしてお婆ちゃんに抱きつきたく、
目を覚ます。
「おばあちゃん!」
といって上半身をおこすと、確かに
愛美のお婆ちゃんに似ていた。
が、違う。
「やっと目覚めましたね。」