玉集めは順調に
「あと五体のゴーレムと戦う?どういう事なの?」
同期入隊の三人で小休憩しながらの作戦会議、フックは黒髪を掻きながら困った顔を浮かべる。
「精霊人形から出た玉の色の事なんだけどね、最初が赤色で、次が橙色なんだよ。」
「何がしかの意味があるって事か?」
「うん、おそらく虹の七色と関係しているんじゃないかな。」
「虹?虹って七色なのか?」
虹の色を思い出し、指折り数えるレイヤー。
「たしか・・・、七色だったと思うよ。」
釣られてフックも指を折り始める。
「赤、橙、次が黄、緑、青、藍、最後に紫の七色。」
「うへ~、じゃあ、あと五回走り回るのかよ。」
まだまだ元気そうなレイヤーだけど、天を仰ぐように寝そべっちゃった。
「今、分かっているのは、玉を門に掲げなければ、次の精霊人形は出てこないから、休憩できるって事、まだ確定ではないけど精霊人形は玉の所持者だけを追いかける事、複数体出現する精霊人形の中でも能力の高い精霊人形が玉を保有している事、玉を得るには精霊人形を転倒させてから右足を狙う事、他に気付いた事ってある?」
レイヤーは首を横に振る。
「んにゃ、考えるのはパッチに任せてるからな、俺は動くだけだ。」
腕組みしながらフックは頭を悩ませている様だ。
「ん~、次はどんなゴーレムが出てくるのかな?」
「精霊人形にも色々種類があるみたいだからね、次に何が出てくるのかは、まだ分からないよ。」
「何が出るかはお楽しみって事だな。」
「うん、でも、楽しみの前に出来る事はやっておきたいんだけど良いかな?」
「おお、なんだ、なんだ?」
興味を引いたのかレイヤーは起き上がり、前のめりになりながら話に耳を傾ける。
「今いる兵士の中で一番足が速いのはレイヤーだから、玉を持って逃げて欲しいんだ。」
「おう、任せろ。」
「玉は背負い袋に入れてね、どんどん増えると思うから。」
「まあ、軽いもんだからな、七個になっても問題ないぜ。」
フックが背負い袋をレイヤーに渡してくれた。
「七個揃ったらクリアじゃない?」
「あっ、そりゃそうだ。」
みんなの笑い声が闘技場内に響いた。
いつの間にか他の兵も僕らの話を聞こうと集まっていた様だ。
「精霊人形を倒す方法なんだけど、前の精霊人形の体を利用すれば良いと思うんだ。」
動かなくなった木人形を指差す。
「さっきも木人形は石人形に躓いて転んでたよね、今度は木人形に躓かせるんだ。」
「そう言えば、ウッドゴーレムは残ってるけど、ソイルゴーレムはいつの間にか消えて無くなってるね。」
「次の精霊人形を倒せば、木人形は消えるって事だな。」
「うん、多分ね。」
多分とか、だと思うとか、曖昧な事しか言えない自分が悔しいけれど、やっぱり多分これであってるはずだ。
「ねえねえ、落とし穴を掘るのはどうかな?」
「足から落ちてしまったら右足を狙えなくならねーか?」
「あっ、そっか、そうだね・・・。」
俯き落胆するフック。
「アイデアは悪くないと思うよ、小さく浅い落とし穴なら誘い込むのは難しいけど、上手くいけば転倒させられるかもね。」
「おお、そうだな。」
「フックも、レイヤーも、気付いた事があれば、どんどん教えてね。」
「ああ。」「うん。」
「それじゃあ、そろそろ行きますか。」
一度大きく伸びをした後、レイヤーは橙玉を扉に掲げた。
待ってましたとばかりに石人形群が大地から這い出てくる。
「石?俺の短剣が通用するかな?」
「レイヤー、転倒させてくれれば鈍器部隊で攻撃するよ。」
「おう、了解だ。」
玉入りの背負い袋を背負ったレイヤーは、闘技場の壁に沿って走り、作戦通りに石人形を誘導してくれている。
石人形は木人形よりも大きいが、動きは遅い。
半周ほどした時点で玉持ちの石人形が判明、あとは木人形に躓かせるだけだ。
ズシーーーン!
ズシーーーン!
ドシーーーーーン!!
その動きは倒れる時もゆっくりだった。
「今だ、やっちまえ!」
玉回収部隊がハンマーを高々と振りかぶり、石人形の右足へと振り下ろす。
意外にもあっさりと右足は砕け、黄色の玉が転がり出てきた。
同時に後続の石人形が崩れ消えていく。
「攻略法さえ分かれば簡単だな。」
作戦が上手くいった事に拍子抜けしたのか、レイヤーは頭の後ろで手を組み少し物足りなさそうにしている。
「パッチの予想通り、黄色の玉が出たよ。」
フックがレイヤーに黄玉を渡す。
「あと四回だな、こりゃ楽勝か?」
レイヤーは受け取った黄玉を背負い袋に入れる。
「油断しないでね、今回ので気付いた事なんだけど、精霊人形の出現数が徐々に減ってる事と、徐々に大きさが大きくなってる事、それと、徐々に固い物になってる事なんだよね。」
「減ってるのは良い事だよな、最初は100体くらいだったか?次がその半分くらいで、さっきのだと更に半分くらいだよな。」
「さっき数えてみたけど、ストーンゴーレムは20体だったよ。」
数えてたんだ・・・余裕が無い様に見えて、実は結構冷静だったんだね。
「じゃあ、次は10、その次が5で、その次は2か?それで最後は1ってか?キリの良いこったな。」
「大きさに比例して動きは遅くなるのかな?」
想像力を広げつつ、首をかしげるフック。
「たぶん、材質にも依るんじゃないかな、土人形よりも木人形の方が動きは速そうだったよね。」
「じゃあ、石人形の次は何が出てくるんだろう?硬いのが出たらどうするの?」
「う~ん、攻略方法は一緒だと思うよ、もう既に突破の仕方は概ね分かっちゃったからね。」
一息ついたところで、レイヤーは黄玉をかざしに出口扉へと向かう。
次に現れ出でたのは岩人形、石人形よりも大きく重鈍だ。
「3モートル位ってとこだな、でかくてもやる事は同じ、転ばせて倒すべし!」
・・・そして、僕達は順調に緑玉を手に入れた。




