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軍事訓練編 武勝霧消《ぶしょうむしょう》

場面は実況席→黒月隊→悪笑隊→実況席→・・・の順に移り変わります。


「え~、黒月隊による魔法攻撃の途中で悪笑隊兵士が突然消えるという事態が起こりました。この事態に黒月隊側は警戒を強めている模様ですので、部隊消失は悪笑隊によるものと思われます。ライル様、これはどういう事でしょうか?」

「ゴースト兵が放った闇属性魔法の『暗闇』に合わせてオウガデスが魔法具を使用していたように見えたので、一種の影渡りに似た効果の魔法、もしくは錬金術であろうな。」

「なるほど、黒月隊の多重魔方陣により決着が付くかと思われましたが、悪笑隊は何とか怒涛の連続攻撃を凌げたようですね。」

「うふふ♪オウガデス師匠が・・あっと失礼、オウガデスがその気になれば簡単に凌げましたわ。なぜなら彼はまだ己の代名詞たる霧を使っていませんもの。」

「本気を出していないわ。肝心の部隊指揮も執っていないわ。何をやっているのだ!真面目にやれ、真面目に!!」

「あーら、彼らは真面目にふざけているじゃありませんか、正面からぶつかり合うだけでは面白味に欠けますわ。」

「主催者側の趣旨を汲み、尚且つ全力を出し切り戦うのがシン帝国武官というものだ。奴らにはその自覚が足りん!」

「武官の自覚?席は武官でも彼らの日常は文官のそれに近いものですよ、帝国民を楽しませようとすらしない何処かの誰かさんよりは遥かに帝国士官らしいですわ。」

「あわわ、また始まっちゃいましたよ・・・。」

「何処かの誰かとは俺のことか!!」

「あ~ら、そう聞こえまして?もしや自覚がお有りなのでは?」

「な・ん・だ・と~!」

「自覚が足りないのも問題でしょうけど、自覚が有るのも問題ですわね。」

「わ、わわ~!白熱する実況席ですが、同じく激戦を繰り広げる西軍、東軍の様子はどうでしょうか?戦場に目を移してみましょう。」


※※


「ライゼル様、多重魔法陣が途切れてしまいましたが、もう一度初めからやり直されますか?」

「無駄だ。多重魔法陣は敵兵数を削るのが目的、兵が消えた以上、続けるは無意味。」

「では、私が獣人兵を率いてオウガデス、及びライムの首をあげて参ります。ご許可を。」

「焦らずとも良い、ゴースト兵に市街地を囲むように結界を張らしてあるのだ。いかに影渡りと言えど結界の外には出られまい。必ず我々の近辺に潜んでいよう。それに奴の狙いは解っているのだ。」

「御意。して、奴らの狙いとはどのようなものでしょうか?」

「決まっていよう、我が首よ。紫狼丸が獣人兵を伴い奴らを攻める。オウガデスはゴーレム兵を召喚し迎え撃つ。その間に潜ませていた1千の兵をもって我を攻め立てよう。お主が引換えそうともオウガデスはここぞとばかりに霧を張り視界を奪うであろう。」

「では、何処かに潜む敵兵を見つけるのが先決でございますな。」

「いや、それでは奴の読みの先には行けぬ。あえて獣人兵をぶつけよう。ただし、我がゴースト兵を取り憑かせてな。」

「な、何やら身震いしてしまう話でございますな。ですが、潜伏兵への対策は如何致しますか?例え兵を強化しようとも引き返せなくてはライゼル様を危険に晒す事になるのでは?」

「ふん、この俺がたかだか千の兵に遅れを取ることはありえぬ。それよりも異界門は動かせそうか?」

「いえ、まだ70%といったところです。」

「まだか、足りぬ分は私の魔力で補填しなくてはな。魔導力の充填が完了し次第、異界門を閉じるぞ。攻防切り替えのタイミングを誤るなよ。」

「仰せのままに。」

「よし、『ゴースト兵』よ我が召喚に応じ姿を此処に現せ。」

「「主よ、我らに使命を与えよ。」」

「獣人と魂を合わせひとつとなるのだ。憑依合体『霊獣人ウルバシー』!!」

「今が攻め時ぞ!ウルバシーよ、我に続けー!突撃!!」

「『グオォォォォォ!!』」


※※※


「あらあら♪そうきましたか♪では此方も召喚いたしましょう♪『精霊人形(ゴーレム)』召喚♪並びに『魔造人形(ガーゴイル)』召喚♪」



「黒月隊と悪笑隊との戦い、遠距離戦から接近戦に切り替わりました。素体は黒曜石でしょうか?黒いゴーレムと黒いガーゴイルがオウガデス様により呼び出され、ゴーストが憑依した獣人兵を迎え撃ちます。」

「憑依といっても肉体の主導権は獣人の方にあるようだな。」

「ええ、ゴースト兵は獣人兵の魂と協調しながらサポート役に徹しているわね。身体強化と魔力強化、それに特性強化の役割を負っているわ。」

「因みに召喚兵として登録されている種族のみ、登録数を上限に複数体の召喚を許可しております。悪笑隊ならば、ゴーレム500体、ガーゴイル500体、スライム500匹です。黒月隊ですとゴースト1000体まで召喚可能です。」

「同種を複数体召喚したなら兵として、単体で召喚した場合は魔法として扱う。召喚兵を倒されても上限までなら魔力が続く限り何度でも召喚する事が可能だ。」

「かなり召喚士が有利なルールですね。」

「魔物を一体召喚するだけでもかなりの魔力を必要とするのよ。並の召喚士だと10体も呼び出せば己の魔力が枯渇し命の危険が伴う事になりかねないわ。」

「なるほど、無限に呼び出せる訳ではないのですね。」

「ところがオウガデスに、いや、悪笑隊に限ってはそうではないのだ。ほぼ無限に召喚が可能だ。」

「ど、どういう事でしょうか?」

「それはオウガデスの相棒であるライムの特性によるものなの。」

「ライムは只の耳長族(エルフ)ではなく、高位耳長族(ハイエルフ)の上の伝説級耳長族(レジェンドエルフ)の更に高位の古代種耳長族(エンシェントエルフ)の生き残りではないかと言われているのだ。」

「ん?随分曖昧な物言いですね。」

「我々魔族誕生よりも遥か昔の話だからな。ライム誕生秘話に比べれば神話などごく最近の出来事と言える。」

「そ、そんなにライム様が高齢だったとは驚きです。」

「ふふ、でもライム自身の記憶は3000年程度よ。3000年ほど前にオウガデスがライムの封印を解いてからの記憶しか残っていないそうなの。」

「なるほど、それでライム様がエンシェントエルフであるかどうかの確証は無いのですね。」

「だが、その特性は他のエルフ種には無いものなのだ。」

「それで、その特性とは一体どういったものなのですか?」

「それは使用魔力の増大と魔力の無限循環よ。」

「ライムの傍にいるエルフは魔法の威力が増大する。先程の多重魔法陣の猛攻に耐えたエルフの魔法障壁を見れば分かるだろう。」

「確かに、エルフ兵の被害は不意をつかれて魔法攻撃を受けた初撃のみですね。」

「更に魔法の使用で消失した魔力はライムが無意識のうちに増大収集し、またエルフに魔力を供給するの。」

「ただし、この恩恵はオウガデスとエルフ種のみが受けられるのだ。」

「何故、魔族であるオウガデス様は特別なのでしょうか?」

「詳しいことは分からないけど、呪いが関係しているそうよ。」

「オウガデスがライムに掛けた呪いにより、ライムはオウガデスが死なぬ限り不死になり、オウガデスはライムの傍にいる限り無限の魔力を得る。」

「なるほど、では、このコンビは無敵と言っても過言ではありませんね。」

「無敵?さあ、どうだろうな。」

「オウガデスとライムが組んで勝利した所を誰も見たことがない筈よ。」

「そう言われれば過去の記録を見ても大規模戦闘訓練では、悪笑隊は途中敗退、降参、壊滅などで、全敗していますね。」

「局所的勝利は収めても必ずどこかで誰かに負けている。まるで態と負けているかの様にな。」

「・・さて、ライル様の御機嫌が悪くならないうちに戦場に目を戻しましょう。・・どうやら霊獣人兵が優勢のようですね。」


※※


「紫狼丸め、ウルバシーを率いているとは言え善戦しているではないか。湧き続ける召喚兵をものともしておらぬな。」


※※※


「オウガデス殿、お覚悟を!『秘剣・月光斬』!」

「ぐはっ!紫狼丸さん、お・み・ご・と・です・・・♪」

「や、やった?今ので倒せたのか?」

「なんちゃって♪」

「くっ、やはりそう簡単には倒せないか・・・。」

「いえいえ♪良い太刀筋ですよ♪私に傷を負わせる日もそう遠くないでしょう♪」

「なんだか遠い未来の様にも聞こえる・・。だが、まだまだ諦めぬ!『秘剣・月蝕斬』」

「あらあら♪寝ているライムさんを狙うとは考えましたね♪仕方がありません、魔界獣『アールゾック』召喚♪」

「なっ!目から光線だと!?これも通じぬか・・。」

「ふふふ♪彼女(アールゾック)は直ぐに駆け付け寝ているライムさん(エルフ)をも安全に守ってくれるのですよ♪」



「いや~、紫狼丸様の鋭い斬撃でしたが、屈強な守護者(ガーディアン)が現れ、寝ているライム様を素早く完璧に守りましたね。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・さて、砕き、壊して倒す霊獣人兵の猛攻ですが、倒しても倒しても湧き出る召喚兵達が相手では決定打に欠けるようです。」

「そうですね。もうひと工夫欲しいところですね。」


※※


「くっ、くっ、くっ、もう少しだぞ紫狼丸。あと少しで奴らに止めを刺せるのだ。あと少しで・・・。」


※※※


「『秘剣・朧月』!『秘剣・十六夜』!『秘剣・月夜返し』!」

「どれもこれもお見事です♪思わず惚れ惚れしてしまいます♪」

「我が秘剣をこうも易々と避けられては褒められても気落ちするだけ、一度でいい、オウガデス殿からその笑みを消してみたいものです。」

「ふふ♪私の笑顔を消すには踏み込みがもうひと伸び足りませんね♪」

「ならば、『秘剣・十六夜・・・改』!」

「・・・ふふ♪ああっと、失礼♪笑ってはいけませんでしたね♪お見事です♪敵方の忠告をこうも素直に受け取られると、驚きと嬉しさで笑みがこぼれてしまいました♪」

「霧化ですか・・、ようやく切っ先が貴方に届いたと思ったのに、その先はまだまだ遠そうです。」

「気乗せや気込めは習得しておられるようですが、属性付与なされないのですか?紫狼丸さんならば容易に体得できますでしょうに♪」

「正直、悩んでいるのですよ。鬼道に落ちるか、魔導に進むか、精霊界に属するか、妖に嵌るか、それともこのまま剣気を極めるのか、進むべき道が多くて己の道を選べず、未だ一歩先へ踏み出せずにいます。」

「なるほど♪では紫狼丸さまにとって有益となるかはわかりませんが、お耳に入れておきたい情報があります♪」

「それは一体何でしょうか?」

「エトリさんからの情報ですが、シン帝国より遥か東の地に魔刀出現の兆しが出ているそうです♪しかも2箇所から♪」

「そ、それは、拙者にも魔武具を手にする機会がやってきたと言う事でしょうか?」

「ええ♪情報伝達順序から見ても紫狼丸さんの為の魔武具である可能性は高いですね♪」

「何者かに横取りされる可能性はありますか?」

「紫狼丸さんもご存知のように魔武具との巡り合わせは魔武具が決める事、望めば必ず叶うというものではありません♪」

「そうですね・・そうでした。魔武具が拙者を求めていると信じ、出会いに東へと向かいます。・・・貴方を倒した後で!!」

「ふふふ♪直ぐにでも旅立ちたいでしょうに、生真面目な方ですね♪では私もやる気を出しまして魔界獣『ロックオーン』召喚♪」



「おやおや~?紫狼丸様の連撃が続いておりましたが、徐々にその周囲が霧に覆われてきましたよ。そして霧の中から何かが空へと飛び出しましたが、何だったのでしょうか?」

「あれはオウガデスの三大召喚獣の一匹、炎蝙蝠『ザーマス』の眷属である蝙蝠型魔界獣だな。超音波での攻撃が特徴だが、果たして眷属ごときがライゼルに通用するかどうか・・・ともあれオウガデスもいよいよ本腰を入れ始めたという事だな。」

「重い腰を起こすのが遅すぎたかも知れませんわね。」

「おや?ドリエル様、それはどういう事でしょうか?」

「それはあのライゼルの高笑いが物語っていますわ。」


※※


「くっ、くっ、くっ、遂にこの時が来たのだ!オウガデス!!貴様の泣きっ面を拝む時がな!!閉じよ異界門!魔導の流れを断ち切り我に勝利をもたらせ!」


※※※


「・・・おや?」

「気づかれましたかオウガデス殿。ライゼル様が異界門を閉じた事により異世界への魔力干渉が遮断されました。これ以降は互いに召喚魔法の使用は不可能になりましたよ。」

「あらあら♪なんとも召喚士泣かせの戦術ですね♪」

「これで今いるゴーレムやガーゴイルを殲滅し、伏兵を撃滅させれば我々の勝利です。」

「ふふ♪それでは、そうなる前にライゼルさんには退場していただきましょう♪」


「・・・ライム殿共々消えたか、だが、オウガデス殿の次なる一手、ライゼル様は先刻お見通しですぞ。」



「・・さて、オウガデス様の魔霧により戦場は濃霧に包まれ、実況席からは戦況がわからない状態になっております。」

「解説の私たちも戦況がどうなっているのか把握できておりませんの。」

「くっ、面目ない。」

「流石のお二方でも霧の中は視認できませんか。」

「あれが只の霧であれば問題はありません。ですが、オウガデスの魔霧は暗視や魔視を遮断します。」

「透視能力を持つ者か、気配察知能力が高い者であれば魔霧による視覚障害を然程受けずに戦えるのだがな。」

「では、霧の中にいる黒月隊の苦戦は必至ですね。」

「いいえ、透過能力のあるゴーストなのですから、当然透視能力も備えていますわ。獣人兵にゴーストが憑依したのですから、霊獣人兵(ウルバシー)には透視能力があると見て間違いはないでしょう。」

「確か、ゴースト兵を使役するライゼルも透視能力を持っていたはずだ。」

「なるほど、悪笑隊にとっては魔霧に包まれようとも、大きく有利な状況を得るとは言えないのですね。」

「ああ、だが魔霧と言えばオウガデスの代名詞だからな。これが無くては奴と戦ったとは言えないのだ。」


※※


「まさか互いの首を絞め合う様な真似をなさるとは思ってもいませんでしたよ♪」

「来たか、オウガデス。召喚師としての実力は貴様の方が上だと認めているのでな。故にその力を奪った。錬金術師としては互角といえよう。だが戦士としては俺の方が上だ。」

「もちろんですとも♪黒炎の魔法戦士と言えば誰しもが認める戦士の中の戦士ですよ♪」

「だが今の俺は地に落ちた戦士よ。先の戦いにおいて貴様に屈辱的な勝利を掴まされたのだ。この屈辱を晴らさずには再び戦士を名乗ることができぬ。オウガデスよ!覚悟せよ!!」

「ふふ♪戦士であるライゼルさん相手に単独ではとてもではありませんが敵いません♪ここは伏兵も交えて挑ませてもらいますよ♪」

「ふん、そう来ることは百も承知よ、束になって掛かってくるが良いわ。ライム諸共消し炭にしてくれる!」


※※※


「ふむ、この濃霧の中で容易に動けぬのは俺だけの様だな。副隊長としては何とも不甲斐ないものよ。見えぬのに指揮は執らねばならぬとはな。・・ウルバシー兵よ、新たに敵兵が召喚されることは無くなった。もう一息だ!残存兵を殲滅せよ。」

「『グオォォォォォォォン!』」



「ああっと!ライゼル様の爆炎魔法により、魔霧が吹き飛ばされ戦場が一瞬垣間見えました。見えましたが、また直ぐに魔霧が発生し、魔水晶からの映像が魔霧により遮られてしまいました。残念です。」

「ライゼルとオウガデス、それに騎獣キマイラに騎乗するエルフ兵500の姿が見えたな。」

「ライゼルは黒鎖バクガイア、黒剣グリムグラスを装備していましたね。魔武具を装備していたとなると、これが決着の時なのでしょう。」

「おおっ!また爆発です。ああっ!また爆発。爆発の度に戦況が伺えるのですが、その度にエルフ兵や騎獣キマイラが吹き飛び地に転がる姿が見えて何とも痛々しい。氷結魔法や支援魔法が飛び交っておりましたが、健闘むなしくライゼル様に打ち据えられている模様です。」

「ん?どうやら透視機能付き魔水晶が軍務から届いたようだな。」

「あら、それは魔力消耗が激しく短時間しか映せない軍務省の魔水晶ですわね。」

「長時間持続しても粗い画像しか映せない内務省の魔水晶よりはましだ。」

内務省(うち)が誇っているのは全国民への普及の為に低魔力(コスト)で大量生産可能な魔水晶ですわ。軍務省(おたく)魔水晶(魔力食い虫)と同じにしないで欲しいですわね。」

「軍務の売りは長距離遠隔魔水晶だ!内務の安物と一緒にするな!」

「あわわ、わああっと!ライル様提供の魔水晶で覗ったところ、黒月隊と悪笑隊との戦いに決着が付きそうですよ。」

「紫狼丸様率いるウルヴァシー兵がゴーレム兵とガーゴイル兵を壊滅させた模様です。鬨の声ならぬ勝利の雄叫びを上げております。」


※※


「聞こえるかオウガデス、向こうの兵は紫狼丸が全滅させたぞ。あとは残りカス(エルフ兵)を焼き払えば俺の勝利だ。」

「はあ、はあ、何とか一矢報いれるのではと思いましたが上手くいかないものですね♪」

「次はお前達が俺を目の敵にする番だ。楽しみにしているぞ。」

「ふふ♪ええ、楽しみにしていてください♪」

「トドメだ。『黒爆火円陣』。」

「くっ、全ての召喚兵を失ってしまうとは残念です。今回は撤退させていただきます♪」


ピンポンパンポーン♪♪


「執行部よりお報せです。先ほど黒月隊により悪笑隊兵は壊滅いたしました。引き続き軍事訓練をお楽しみください。」


ピンポンパンポ~ン♪


「くっ、くっ、くっ、オウガデスを撃ち漏らし、ライムには逃げられたようだが、まあ良い、こちらの損害は少なく、敵兵を全滅させたのだ。勝利は勝利だ!これで我が悲願は果たされた。もうこんな訓練に用はない、者ども引き上げだ。カタコンベにて宴を開くぞ!」


※※※


「おお、霧も晴れライゼル様が満面の笑みで飛び去って行きなさる、どうやら決着がついた様だ。ライゼル様の念願かなって何よりだな。・・しかし、カタコンベで宴とは悪酔いしそうだが、勝利の美酒ならそれも悪くはなかろう。よし!全兵撤収せよ!」

「『おおぉぉ!!』」



「おや?ライゼル様が飛び去って行きましたよ。戦いを放棄するのでしょうか?」

「・・・もしかして悪笑隊に勝ったから帰るのかしら?」

「勝ったら帰って良いと思っているのか?訓練とはいえふざけているな。」

「負けたら帰って良いと思っている悪笑隊と良い勝負ね。」

「ふん、勝って帰るのも問題だが、早く負けて帰ろうとする奴らの方が許せんな。そんな武官は処罰の対象だ。」

「あら、ではライゼルは不問で良いのかしら?こちらも厳しく処罰しなければいけないのでは?」

「よくよく考えてみれば、戦功を立てた者に厳しい処罰は反感を買いかねん。厳重注意くらいが妥当だ。」

「ではゴブロブ隊を壊滅させた悪笑隊も処罰できないわね。」

「なんだと!?」


ピンポンパンポーン♪♪


「執行部よりお報せです。先ほど黒月隊は演習場を離れ退却いたしました。引き続き軍事訓練をお楽しみください。」


ピンポンパンポ~ン♪


※※


「上手くいったようだな。」

「ええ♪上手くいきましたね♪」

「場内アナウンスを魔界獣に真似させるのは反則かと思ったが、それも戦術だと判定されたようだな。審判員は今回もユーリさんだろ?流石だな。」

「はい♪ですが、次回からは反則として規則を改訂なされるでしょうね♪」

「ライルさんも勝って帰るなら小言で済ませてくれるらしいからな、さっさと帰ることにしようや。」

「小言では済まされないとは思いますが、早く帰ることには賛成です♪」

「よし!野郎ども、おつかれさん、心休まる場所に帰るぞ。」


ピンポンパンポーン♪♪


「執行部よりお報せです。先ほど悪笑隊は演習場を離れ退却いたしました。引き続き軍事訓練をお楽しみください。」


ピンポンパンポ~ン♪



「いったい、これはどういう事でしょうか?」

「悪笑隊を全滅させたと思っていたら全滅していなかったということね。」

「ドリエル様、もう少し詳しく教えてください。」

「察するにエルフ兵を『影渡り』で何処かに潜ませ、伏兵として現れたのはエルフ兵に化けたスライム兵、召喚兵は全滅させられたけれど潜んでいたライムとエルフ兵は健在だったという訳ね。」

「ここで執行部からの情報です。どうやら魔界獣『ロックオーン』が場内アナウンスの声を真似てライゼル様に悪笑隊全滅の偽情報を伝えたとの事です。」

「つまりは、ライゼルの勘違いということか・・・。」

「これはまた荒れるわね。」

「この結果を誰がライゼル様に伝えるのか・・・考えただけで身震いしてしまいます。」

「あらあら、ゴブロブ隊を壊滅させ、黒月隊を撤退せしめた悪笑隊は称えるべきなのかしら~♪」

「うっ、くぅ、あいつら~。」

会話のみで話を進めようと試みましたが、状況説明が難しく、展開も遅くなり、実力不足を痛感しました。

もっと精進を重ねてから再挑戦したいなと思います。

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