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軍事訓練編 戦手照会《せんしゅしょうかい》

これはククリの日記編、35日目~36日目に行われた軍事訓練を描いたものです。未だに剣と剣がぶつかり合う戦闘らしきものを書いていない事に気付いた為、暫くは戦闘描写を書こうと思いました。

と言っても、まだ今回は選手紹介だけで戦闘は次回からです。

稚拙な文章ですが、どうか末永くお付き合いください。

 シン帝国内に幾つも存在する観戦施設、規模は大小様々であるが、全観戦施設に映像を映し出す巨大魔晶石が備えられている。

 観戦者の視線を釘付けにしている巨大魔晶石に突如映像が浮かび上がった。

 映し出されたのは軍服を着て恭しく頭を垂れるシン帝国内務大臣ドリエルこと、ドリーの姿である。

「本日はお足もとの悪い中、お出で下さり誠にありがとうございます。」

 顔を上げ、にこやかな笑顔で趣旨説明を始める。

「日頃は皆様の目の届かぬところで愉快な戦争をやっておりますが、兵士の奮闘ぶりを少しでも楽しみながら観ていただけたらとの思いから、今回も公開軍事訓練を行う運びとなりましたー。」

 ドリーは両腕を上げ最高の笑顔で開催の喜びを伝えようと大仰なパフォーマンスを見せる。

 それに応えるかの様にどっと場内は沸いた。

「もちろん、今回も賭博席、飲酒観戦席、鳴り物エリア、野次罵声エリアを御用意致しましたので、是非とも御利用下さいませ。」

 再度、頭を下げ客席に挨拶をする。

 頭を上げると、ドリーの表情は満面の笑みから、鋭い眼差しで冷笑を浮かべる表情へと変わっていた。

「羽目を外されるのは結構ですが、周囲の方々にご迷惑を掛ける様な振る舞いはご遠慮ください、万が一の事がありましたなら、それ相当の対応をさせていただきますので、ご了承の程を宜しくお願い致します。」

 三度頭を下げるドリー、深くお辞儀をし終えると、元の笑顔に戻っていた。

「なお、長時間の訓練となりますので、お疲れの際は宿泊施設にてお寛ぎ下さい。」

 映像に宿泊場所を示すテロップが流れる。

「それでは、魔族の戦いぶりを心行くまでお楽しみください。」

 観戦場から節度ある歓声が起こり、魔水晶の映像はドリーから訓練場へと切り替わった。



 映し出されたのは実況席、そこには青い紳士服に赤い蝶ネクタイをした壮年の半小人(ハーフコロポ)族のギルビットと、内務大臣のドリー、軍務大臣のライルが座っている。

「どうもどうも、久方振りに開催の運びとなりましたシン帝国軍事訓練、実況はわたくしギルビット、解説者としまして主催者でもあるドリエル内務大臣とライル軍務大臣のお二方にお越しいただいております。どうぞ宜しくお願いします。」

 両名、軽く会釈を、ギルビットは深々と頭を垂れる。

「それでは西軍、東軍に分かれましたる各部隊を御紹介いたします。」

 場面が切り替わり、訓練場となる広大な平原に陣取る両軍合わせて10部隊、約2万の兵がずらりと立ち並ぶ。

「最初にご紹介いたしますは、先々月、ゼルタリス要塞攻防戦において、辛辣なザザールーク王国軍の侵攻を食い止める事に成功した、西軍のトリックスター悪農王ライムとオウガデス師匠です。」

 ライム、オウガデスが率いる部隊の映像がズームアップされ、詳細データがテロップで流れる。


西軍:『悪の』『お笑い』隊(隊長:ライム、副隊長:オウガデス)

兵力:ゴーレム500体、ガーゴイル500体、スライム兵500匹、エルフ500名


「え~、隊名についてですが、前部分を隊長が、後部分を副隊長が名付けておりますので、この隊は『悪のお笑い隊』になります。」

 解説の隣、実況のドリーがすぐさま捕捉に入る。

「略して『悪笑隊』ね、このコンビが組むと、いつも『悪笑隊』か、『笑悪隊』のどちらかになるわね。」

 負けじとライルも情報を付け加える。

「こいつら思考は柔軟だが、互いに我が強く、決して譲らぬものを持っている。軍としては、こういう輩には好き勝手遊ばせておくのが一番だ。」


「なるほど、遊撃隊としては有能だという事ですね。さて、続きまして事前に設置されていた隠し録画映像をご覧ください。」

 魔水晶がモノクロ映像に切り替わり、悪笑隊の隊長、副隊長が映しだされた。


「あー、やだやだ、俺は今回は参加しねえって言ったよな。」

「参加者が足りなかったので、ライムさんは強制参加になりました♪」


「強制参加になった事をオウガデスが迎えに来るまで知らなかったのは誰のせいだ?」

「誰も伝えようとは思わなかっただけなので、誰のせいでもありませんよ♪」


「せめてお前だけでも前もって伝えに来いよ!」

「当日まで伝えない方が面白いかと思いまして♪」


「ふん、どちらにしろ面白くねえよ。」

「ふふふっ♪」


 映像は再び実況席に戻る。

「相変わらずの掛け合いでしたね。もはや定番になりつつある組み合わせですが、軍務の立場から見てこのお二方は如何でしょうか?ライル大臣。」

「こいつらに関しては実績だけを評価する事にしている。やり取りを真面目に聞いたところで、こちらが馬鹿を見るだけだ。」

「なるほど、軍務的には高評価という事ですね。ドリエル大臣は如何でしょう?」

「我々魔族の使命を理解し、実行してくれているわね。その貢献度は高く評価できるものです。」

「おお、両名ともに評価が高いのですね。実は国民から、何故ライム、オウガデスは帝国での地位が低いのか?との質問が多く寄せられているのですよ。」

「「それは我儘野郎(雷帝シン)のお守りをしないから()!!」」

「・・なるほど、政府にも色々事情があるようですね。」



「・・え~、興奮冷めやらぬ中、続いての部隊をご紹介します。」

 体躯の良い怪腕怪物オーガ、鎧兜に身を包み刀を携えた鬼、その最前列に立つ低身の少年と長身の青年、この二人が隊長と副隊長である。

「300歳にも満たない少年ながら、その実力が評価され西軍の大将を務めますプリン激烈大好きっ子シュアリー隊長、人と魔族の混血ながら数多の戦闘を経験した老練なる策士、打ちたがりの星十朗が副隊長を務めます。」


 そして隠し過去映像へと切り替わる。


西軍:『プリンを』『狙い撃ち』隊(隊長:シュアリー、副隊長:星十朗)

兵力:重装オーガ兵1000名、軽装鬼兵1000名


「・・・俺と組む事は知っていたよな?」

「・・・はい。」


「・・・じゃあ何で隊名を『狙い撃ち』にしちゃった訳?」

「・・・『狙撃』にするべきでしたか?」


「いやいや、そうじゃなくて、俺がプリンを好きなの知ってるでしょ?」

「はい。」

「だったら、『食べたい』とか、『愛してる』とかにしてくれよ、『プリンを狙い撃ち』隊ってどういう事よ?」

「いけませんか?」

「いけませんよ、いけませんとも、俺はね、プリンを食べたいのよ、愛でたいのよ、決して撃ちたくはないってんだよ。」


「・・・略して『プリン狙い』隊では如何でしょう?」

「プリン狙いたい・・・良いかも。」



 映像は現在へと戻り、生放送中の実況席からため息が漏れる。


 額に手をやり苦悶の表情を浮かべるドリー。

「・・・プリン、・・・どうでもいい・・・。」


 額に冷や汗を掻き、場を取りつくろうとするギルビット。

「・・・え~、『プリン狙い隊』も長いので、こちらでは『プリ狙隊』と呼ばせて頂きます。」


 額に青筋を立て込み上げる怒りを抑えながら疑問を投げかけるライル。

「これはあれか?笑いが無ければいけないのか?公開とは言え、もう少し真面目にやっても良いんじゃないか?」


「なるほど、厳しい意見、有り難うございます。」




「気を取り直しまして、次はシン帝国貴族代表、竜戦姫ロスマリヌス様と闇の獣魔人ロンの紹介です。」

 獣人とは、普段は人の姿で活動しているが、いざ戦闘になると驚くべき俊敏さと膂力を兼ね添える半獣半人(ライカンスロープ)へと変貌するのだ。

 今回の訓練ではロスマリヌスは隊長であるが、賓客として部隊に加わっている為、実際に部隊を指揮するのは、この獣人達を(しもべ)とする副隊長のロン、その人である。


西軍:『悠久』『久遠』隊(隊長:ロスマリヌス、副隊長:ロン)

兵力:獣人兵『竜人』(ワードラゴン)100名、獣人兵『虎人』(ワータイガー)200名、獣人兵『狼人』(ワーウルフ)500名、獣人兵『兎人』(ワーラビット)300名、

    獣人兵『蜥蜴人』(ワーリザード)300名、獣人兵『犬人』(ワードック)300名、獣人兵『猫人』(ワーキャット)300名


「ロン殿、訓練の割には実戦形式なのですね。」

「ええ、今回は軍務と内務の合同開催ですから、地味な訓練と言うよりも、派手な演習を求められている様です。」


「ならば我が同胞は参加せずとも良いのですか?」

「確かに竜戦騎部隊なら派手になるでしょうが、あくまで訓練ですから相手を殲滅させては意味がありませんよ。」


「ふふ、相手は一騎当千の絶対強者(つわもの)ばかりではありませぬか、出し惜しみなどせずとも良いでしょうに。」

「ロスマリヌス様が参加されているのです、出し惜しみをするなと言われている訳ではありませんよ。」


「では、いつも通り臨機応変に・・・。」

「ええ、お任せします。」


 実況席が湧いた。

「いやー、良いですね。まともでしたね。」

 ギルビットは人心地付いた様に感想を述べた。


「流石はロスマリヌス様だ、含みも持たせて何やら期待させてくれる発言だったな。」

「ええ、そうね。なんだかホッとしましたわ。相方もロンで正解でしたわね。」

 組み合わせ選考に苦慮した感を見せる両大臣であった。


「え~、因みに部隊名は略して『久々隊』と呼ばせて頂きます。」

「それじゃあ大きく意味が変わるよね?」




「さて、次の部隊はミスター優男ヤヌスと女怪盗ラミールさんです。異色の組み合わせですねドリエル大臣。」

「ヤヌス氏の直属部隊の編成に疑問を持ちまして、今回、このような組み合わせに致しました。」

「確かにヤヌスの部隊は大半が女性で編成されており屈強とは言い難いものだが、それでも戦功は立てているぞ。」

「ええ、ですが、男性のみの部隊なら、これまで以上の戦功が見込めるのではと考えましたの、いかがかしら?」

「なるほど、選考試験でもあるのですね。」

「フンッ。」


西軍:『麗しき』『無頼漢』隊(隊長:ヤヌス、副隊長:ラミール)

兵力:魔族(ラミール配下)、盗賊500名、山賊500名、海賊500名、空賊500名


「昼間に会うのってなんだか新鮮だよね。」

「本当ね、陽に当たるのなんていつ以来かしら?これ以上色黒になりたくないわ。」


「どちらにしてもラミールさんが素敵な事に変わりは無いさ。」

「あら、ありがと♪」


「ドリーさんからの依頼だから引き受けたけど、俺の部下は使わせてくれないんだね。」

「あらぁ~、私たちでは御不満かしら?」


「戦力としては問題ないよ、でも、次は野郎抜きで組もうよ。」

「ふふっ、前向きに考えておくわ。」



 唖然呆然の実況席、これまた三者三様、怒り、焦り、悩み、の表情を浮かべる。

「あいつ白昼堂々なに口説いてんだ!」

「な、なるほど、ヤヌス隊長は誰かれ構わず口説いてしまう癖があるのですね。」

「ふっ、誰かれ構わずではありませんよ、私は口説かれた事ありませんもの・・・。」



「さ、さて、再度気を取り直しまして、次の部隊の紹介です。シン帝国唯一の大巨人、デボボと、私と同じ魔族と小人族とのハーフであるララバインのコンビです。」

「ララバインも大変だな。」

「大変ねぇ~。」

 数十モルトル級の巨人よりもさらに大きい、数百モルトル級の大巨人がデボボである。

 400歳の巨体ではあるが、大巨人族としてはまだ子供である。

 小さくもなれるのだが、すぐに縮こまる術を忘れてしまう為、思い出すまでは大きいままである。

 副隊長のララバインはデボボの穴を開けた耳たぶに内に居て、デボボとの意思疎通を図っている。


 また、デボボの頭髪に共生している魔獣フォレストアント亜種は実質、副隊長ララバインが率いる事になる。


西軍:『でっかい』『子守り』隊(隊長:デボボ、副隊長:ララバイン)

兵力:魔獣フォレストアント2000匹


「デボボは戦うよ~ぅ。」

「はい、期待していますよ。」


「ララバインも戦うのかぁ~?」

「はい、一緒に戦いますよ。」


「デボボも一緒に戦うぞ~ぅ。」

「はい、一緒に戦いましょうね。」



 コメントに苦しむ実況席。

「まあ、あれだな、やる気はあるみたいだな。」

「まだ子供なのに頑張り屋さんね。」

「なるほど、ララバインさんには頑張って欲しいものですね。」



「では東軍の紹介に参ります。まずはシン帝国最強の呼び名も高い戦士ディアブロ、その恋人ミュリエルさんです。」

 紹介後、ドリーが頭を抱える。

「ミュリエルさんはドリエル大臣の妹君でもあらせられますよね。」

「ええ、可愛い妹ですが、300年間毎日聞かされる惚気話にはもうウンザリですわ。」

「なるほど、幸せいっぱいの様です。」


東軍:『こっそりと』『孤高』隊(隊長:ミュリエル、副隊長:ディアブロ)

兵力:魔族(兵種多数)2000名


「あの~、ディアブロ様。」

「なんだ?」


「なぜ私が隊長なのでしょう?」

「今回は隊長を倒せば部隊は壊滅扱いとするらしい、この決まりは俺に単独行動を取らせない様にする為だろうな。」


「私が狙われるって事ですか!?」

「安心しろ、お前には傷一つ付けさせはしない。」


「・・・はい。」



 御馳走様状態の実況席。

「・・・え~、ごちそうさまです。」

「「ごちそうさま。」」



「甘いものの次は堅いものを見ていただきましょう、我らがシン帝国の守護者、親衛隊長ジュリア様と、今尚、女性からの支持率上昇中のラギさんとの女傑組です。」


「同じく女性支持率の高いドリエル大臣はラギさんをどう見ていますか?」

「態度も性格も良くて嫌いになれないわ。でも、女性だけでなく男性にもモテるから嫌い。」

「どっちなんだよ。」



東軍:『鉄壁』『武装』隊(隊長:ジュリア、副隊長:ラギ)

兵力:魔族、親衛隊500名、重装歩兵1500名


「さあ、ラギさん、今回も守り抜きますよ。」


「今回も一貫して守備ですか?」

「ええ、専守防衛こそが親衛隊の基本方針ですから。」


「その親衛隊は誰を守るのでしょう?」

「えっ?・・・え~と、雷帝シンや各大臣は不参加だし、私より偉いのは・・・いらっしゃらない?」

「ええ、東軍大将はジュリア様ですよ、今回の戦場は市街地ですが拠点はないので、守るべき物もありません。」


「あらら。」

「東軍の皆がジュリア様をお守りします。」

「では、私は誰を守れば良いの?」

「御自分をお守りください。」


「わ、私に出来るかしら?」



 不安にかられる実況席。

「だ、大丈夫でしょうか、ジュリア様のテンションが半減していたようですが・・・。」

「心配無い、天界門の門番を長年務めている親衛隊だ。・・・まあ、守るべきものを求めて戦場を転々と彷徨うだろうがな。」

「ラギ副隊長がしっかりと手綱を握ってくれるでしょうから心配いりませんよ。」

「なるほど、心配そうに見守る両大臣の心中、お察しいたします。」




「続いての紹介は、オウガデスと並ぶシン帝国二大錬金術師の一角、黒炎のライゼルと、寡黙なる忠臣、月狼の紫狼丸です。」

「ライゼルが南方の戦争を速攻で終わらせたのは、この公開訓練の為なのだそうですわね。」

「ああ、そうだな、この公開訓練に並々ならぬ意気込みを持っている様だな。」

「戦争は長引かせて良いものではありませんが、急くがあまり人間の方に戦死者が20人も出たそうですわね。この失態、軍務はどの様に責任をとるのです?」

「ふっ、そんな事もあろうかと、特殊救護班ハルエリエを同行させていたのだ。死者は能力を失うことなく蘇生した。どうだ問題無かろう。」

「幻術処理もしくは催眠処理はしたのですか?仲間を失った者が悲観に暮れる事、蘇生した者が後々酷い目に会う事の無い様に配慮しなければ問題が無いとは言い切れませんわね。」

「内務とてライゼルが早期決着を望む事は容易に予測できたであろう、ならば悲劇を生まぬ様、公開訓練を先延ばしにするか、ライゼルを不参加にすれば良かっただけの事、軍務のみの責任ではあるまい。」

「なんですって!?」

「わわわ、お二方、公開生放送されている事をお忘れなく!どうか冷静に、冷静に。」


 暫し映像が乱れた後、モノクロ画像へと切り替わった。

東軍:『黒炎』『月狼』隊(隊長:ライゼル、副隊長:紫狼丸)

兵力:ゴースト1000体、獣人兵『狼人』(ワーウルフ)1000名


「俺はオウガデスを殺る、お前はライムを殺れ。」

「承知。」


「此度こそは完膚なきまでに叩き潰し、完璧に勝つ!」



 お茶を飲み一息入れていたら録画映像が直ぐに終わり慌てる実況席。

「さて、黒炎月狼隊、略して黒月隊は、悪笑隊に対して非常に闘志を燃やしていたようですが如何ですか?」

「え?ええ、前回はオウガデス隊に勝利したものの、ライゼル隊は相当な打撃を受けていましたからね、遺恨の残る勝ち方だったのでしょう。」

「負けた方の損害は少なく、勝利した方は部隊として成り立たない程の損害だったからな、ライゼルが躍起になるのも無理からぬ事と言えよう。」



「次の部隊は白き魔術師トウヤです。ライゼルとの模擬戦は、今も皆様の記憶に残っている事でしょう。また、副隊長として先程話題に上がりました銀翼の癒し手ハルエリエさんが務めます。」」

 部隊へと映像が変わると、そこは雪国・・・。

 いや、トウヤの凍気によって部隊の頭上にだけ雪が降り注いでいた。


東軍:『白塔』『救護』隊(隊長:トウヤ、副隊長:ハルエリエ)

兵力:魔族、軽装歩兵1000名、特殊歩兵500名、衛生兵500名


「ハルエリエさんと組むのは初めてですね。」

「ハイですのな!宜しくお願いしますのな!」


「こちらこそ宜しく。」

「ハルは治療しかできませんのな!だから今回も衛生兵として皆さんを癒しまくりますのな!お任せ下さいのな!」


「ええ、戦闘は私が直接指揮をとりますので、治療任務は一任しますよ。」

「御期待に添える様に精いっぱい頑張りますのな!」


 ほのぼの実況席。

「一生懸命なハルエリエちゃんを見ていると和むわ~。」

「ああ、確かに・・・和むな。」

「なるほど、日々激務をこなし、鬼の様に厳しい両大臣もハルエリエさんには癒される様です。」

「鬼ではないけどね~。」

「ああ、確かに・・・鬼では無いぞ。」



「さてさて、最後の部隊紹介となりました。ハイホブゴブリンの剛腕戦斧ロブ・バルバドスと、その懐刀、副隊長ロブ・フリゲットです。」

「ゴブロブか・・・ハンデは十分与えたのか?」

「倍の兵数を与えましたわ。十分とは言い難いですけれどね。」

「え~、辛口な評価を受けておりますが、ロブ・バルバドスはホブゴブリン族の棟梁でして、我々魔族がこの世界に来る以前から、この地域を根城にしていた由緒正しき一族です。」

「まあ、40代目の棟梁なのだから由緒正しいのかも知れんが、実力主義の魔物社会において、魔族の庇護下にあるのを嵩にきて権勢を振るうのは、由緒正しき者がするべき事なのかどうかは甚だ疑問だな。」

「戦闘力の高さは認めますわよ、でも、それだけですわね。」

「なるほど、実力者揃いの東軍には数合わせ要員も必要という事ですね。」


東軍:『剛腕』『戦斧』隊(隊長:ロブ・バルバドス、副隊長:ザブ・フリゲット)

兵力:重装ホブゴブリン兵500名、長槍ゴブリン兵500名、軽装ゴブリン兵500名、弓装ゴブリン兵500名、キマイラ1000匹、グリフォン1000匹


「何故我が隊だけ数が多いのだ?もしや、上層部に実力不足とみなされたのではあるまいな。」

「いえいえ、キマイラとグリフォンは騎獣扱いで登録しただけの事で御座いますよ。」


「なるほどのう、そちはなかなかの知恵者じゃな。」

「いえいえ、ロブ様ほどでは御座いません。」


「そうか?ガハ、ガハハハハハ。」

「ええ、ええ、そうですとも、ククククククク。」


「で、ワシの騎獣はどれじゃ?」

「へっ?」



 呆れ返る実況席。

 両大臣は実況席の傍で控えている内官を呼び寄せる。

「おい、キマイラとグリフォンを1000匹ずつ追加で送ってやれ、ロブとザブの分も忘れるなよ。」

「そうねロブには特別な騎獣を送ってあげて、面子を立たせる理由は陸用の騎獣と空用の騎獣を兵数分渡していなかったで十分でしょう。」

「当事者の知らないところで大盤振る舞いのハンデを受けましたが、果たして、この戦力で他部隊と渡り合えるのでしょうか?これも一つの見どころといった感じです。」


東軍:『剛腕』『戦斧』隊(隊長:ロブ・バルバドス、副隊長:ザブ・フリゲット)

追加兵力:キマイラ1000匹、グリフォン1000匹+α

    


「皆様、大変長らくお待たせしました。帝都郊外に設けられました模擬訓練用の無人市街地にて、シン帝国開催、公開訓練の開始です。」

 実況席の3名は程度こそ違え、会釈すると、開始の合図である大銅鑼型サイレンが鳴らされた。


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