旅立ち
〜桜の国〜
一年中桜が咲いている国があります
国全体が桜で覆われており、天気は晴れていて温かく日中は*お日さま*がいつも顔を出しています
夜になると*お日さま*と入れ替わってまんまるの*お月さま*が顔を出す…
一年中それを繰り返します
国の中心には大きな桜の木があり他の桜に比べ色が濃いのが特徴です
この桜は国を支える大きな柱
桜が枯れたことは過去に一度もありません
この大きな桜はお城になっていて中には桜の妖精達が働いています
遠くからだと見えないので近づいてみましょう
あらら?
桜の妖精達の働く姿をお見せしようと思ったのですが…
嬉しそうに歩いている女の子がいます
どうしたのでしょう〜♪
気になるので様子をみてみることにしましょう〜♪
全身淡いピンクに身を包み、ふわふわの髪を揺らしながら桜の枝を歩く女の子
大きな淡いピンクの瞳を輝かせながら、どこかに向かっています
大きな扉の前に立ち息を整え扉に手をかける…
ギギギィ…と大きな音がして扉は開き
女の子は中へと入っていく
この部屋は窓がたくさんあり日中は日が差し込んでいてとても温かい…
奥に進むとベットがあり、そこには足まで伸びる長い髪、白い肌に栄える緑の瞳をもった少女が座っている
日の光でウエーブの髪がキラキラと輝いていた
「お姉さま…」
少女に向かって女の子が言った
「シルキー…どうしたの?」
シルキーは少し照れながら・・・
「最終試験に残りました♪」
嬉しさのあまり姉はシルキーを抱き寄せた
「良かったわね…おめでとうシルキー」
そしてシルキーの頭を撫でた
シルキーがこの試験を受けるのは2回目…
去年はある理由から試験に合格することが出来ませんでした
「今年こそは合格して学校卒業してみせます♪」
輝いている妹を見て愛しいと思う姉
「シルキーなら大丈夫よ」
姉にそう言われシルキーは満面の笑みを浮かべる
桜の国では妖精達が通う学校があり、国の歴史や魔法の勉強をします
試験は歴史・魔法…そして最終試験の調合/飛行の三つになります
この試験に合格して卒業出来るのです
卒業してからは桜の国で作られている『桜葉』を作る仕事と配達する仕事の
どちらか一つの仕事で働くことになります
それからしばらくしてシルキーは両親にも報告してくると部屋を出て行った…
一人部屋に残された姉は…
シルキーが出て行った扉を見つめ…
(シルキーまでも私の傍からいなくなってしまうのね…)と思わずにはいられなかった…
何故…私の大切な人は私の前からいなくなってしまうのだろう…
私がもっと強ければこんなことには、ならなかったのだろうか…
〜翌日〜
最終試験に残った生徒達がこの国で一番高い桜の木の上に集まりました…
まずは飛行の試験から…
桜の木から魔法で出した花びらに乗り、上手く着地出来たら合格になります
言うのは簡単なこと問題は魔法でどれだけ大きな花びらを出せるのか…
その花びらに乗るバランスも必要になります
その二つが出来て花びらに乗ることが出来るのです
試験を受ける生徒達は枝の先まで行き魔法で花びらを出します
一人目の生徒は魔法で自分よりも大きな花びらを出し、それに乗り楽々と着地してみせました
先生や生徒から歓声が沸き起こりました
シルキーはと言うと…
桜の花にしがみつき恐る恐る下をみました…
(高い…?!もしかして去年よりも高いんじゃないかな…)
実際は去年と同じ場所からなのだが…
シルキーは高所恐怖症が理由で去年この試験に合格することが出来なかった…
本来なら調合が合格すれば良いのだが…
「外の世界がみたいんです!!」とシルキーが言った為、もう一度学校に通うことになったわけです
シルキーは下を見ながら震えていた
(高い場所に慣れる為、いつも高い所で寝ていたのに…)
シルキーは高い場所で寝ていても高所恐怖症が治るわけではないことに気がついていなかった…
シルキーの背後に人影が忍び寄る…
気配に気付き後ろを振り返ると…
(…?!)
「お姉さまっ?!なんでこんなところにいるんですか?!」
そこにいたのはシルキーよりも背が小さい女の子…
姉はお城から出ることが出来ないので魔法で自分の分身を作ることで色々なところに行けるようにしていた
小さい頃は良く両親には内緒でシルキーと外に遊びに行っていたのでした
姉は笑顔で手を振っている
シルキーは今にも泣きそうな顔をして姉をみた
「シルキーそんなに怖がらなくても大丈夫よ」
「やっぱり高いところは怖いです・・・」
シルキーは涙を浮かべながら言った
「シルキーあの子をみて・・・」
姉に言われた方向を見てみると
シルキーよりも小さな女の子が震えながら魔法を唱え、なんとか自分の大きさよりも小さな花びらを出して着地していた
先生からは安堵笑みが生徒からは盛大の拍手が響き渡った・・・
そしてシルキーの番になり枝の先に立つ
姉はシルキーの背中を見つめ・・・
脳裏にある言葉が浮かんだ
(シルキーがこの試験に失敗すれば・・・また一緒にいられる・・・)
姉はシルキーの背中に手を伸ばした・・・
そして…
姉には大切な宝物がありました・・・
それはどんなことをしても傍においておきたい宝物でした
彼女の為なら自分がどんなに辛くても頑張れたのです…
彼女の笑顔があれば、どんなことでも乗り越えられる・・・
その彼女が自分の傍からいなくなってしまうことは姉にとっては耐え難い苦痛だったのです
あの言葉に囚われてしまった姉をあなたは責めることが出来ますか?
彼女には夢がありました
多くの世界を見たいと言う夢が・・・
だから彼女は諦めず試練を乗り越えて来たのです
そしてこれからも彼女は前に進んで行く・・・
ふと我に返った姉は自分がやろうとしたことが怖くなり後ずさりした・・・
その弾みでバランスを崩し枝から落ちた・・・
それに気がついたシルキーは高所恐怖症のことなど忘れ魔法で二人余裕で乗れるくらいの花びらを出した・・・
それを見た姉は・・・
(何をやっているのかしら・・・こんなにも大きな存在の彼女を私の傍においておくなんて出来るわけないのに・・・)
そう思った瞬間一粒の涙が頬をつたっていた
シルキーと姉は無事着地した
姉は震えが止まらず俯いていると・・・
シルキーが心配そうに言った
「お姉さまっ・・・大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」
「ええ・・・大丈夫よ・・・少し疲れたみたいだから魔法やめるわ・・・」
そう言って姉は魔法を解き自分の部屋へ戻った・・・
姉は部屋に戻り・・・
まだ治まらない振るえを抱き声を凝らして泣くことしか出来なかった・・・
シルキーは部屋に戻った姉のことが心配になったが・・・
(応援してくれるお姉さまの為にも試験のことを考えなくちゃ・・・)
満開の桜を見上げ・・・
(合格したら・・・きっとお姉さまは喜んでくれる・・・)
『・・・飛行の試験が終わった方は次は調合ですので移動してください・・・』
シルキーは調合の試験へ向かう・・・
調合の試験は調合室で行われる・・・
調合室に入ると
課題の用紙が渡され・・・
これから作る薬の名前が書かれており、これに必要な材料を調合室から探して出して作り出す・・・
この調合室は桜のお城の中にあり・・・部屋のあちらこちらに調合に必要な材料が生えている・・・
その何万種類の中から材料を探し出すのだが・・・
果てしなく続く天井にも生えている為、課題の薬によっては飛行力がなければ材料が採りにいけないこともある・・・
去年は飛行を使わなくても材料を採ることが出来たのだか・・・今年はどんな薬を作るのだろう・・・
(えーと、用紙に書かれている薬は・・・)
用紙の真ん中に『体力回復薬2個』と『魔法回復薬2個』と書いてあった・・・
(はぁ〜やっぱり去年試験受けているだけあって、そんなに甘くないよね・・・)
薬自体はいつも作っているので大丈夫なのだが・・・
材料集めが大変なこと・・・
場所は姉から教えて貰っていて知っていたが実際に行ったことはない
材料はいつも姉から貰っていて作っていた・・・
今になって思う・・・
(私ってなんて楽していたのだろうか・・・)
気分を変えて魔法を唱える・・・
魔法はその時の気持ちにも左右されることもあるのでなるべく楽しいことを考えながら唱えるとシルキーの場合は成功するのだ・・・
(最初は体力回復薬の材料から集めよう・・・)
そこは日の光が入り温かく草花が子孫を残そうとたくさんの胞子を飛ばしている
その胞子が日の光に照らされて・・・キラキラと輝いていた
自分よりも少し大きい花びらを出して、それに乗り天井の上を目指す・・・
途中色んなところに激突しながら上だけを見つめ進んでいく・・・
なぜ激突しているかと言えば・・・左右に気をつければ下を見てしまう恐れがあるから・・・
材料のある場所まで辿り着き・・・必要な材料を袋に入れる
シルキーは目を閉じ勢い良く下へ降りていく・・・
地面付近で目を開けるつもりでいたのだが・・・上手くタイミングが合わずに地面に落ちる花びらは消え、埃が舞う・・・
「ゴホッゴホッ・・・痛いっ・・・腰打ったかな・・・」
腰を摩りながら立ち上がると・・・
周りの視線がシルキーに集まる・・・
恥ずかしくなり苦笑いしながら、その場を急いで後にした・・・
恥ずかしさのあまり体の中が熱くなる・・・
(///えっと・・・まずは体力回復薬を作ってしまおう・・・)
シルキーは慣れた手付きで材料を調合していく〜♪
丸い形に整え体力回復薬の完成〜♪
(・・・可愛くない・・・でも試験だから仕方ないかぁ・・・)
作った体力回復薬一つ食べる・・・
(苦い・・・)
シルキーはこの苦い味が嫌いで、自分で作る時は他に材料を加え甘くしたり形も変えて桜の花びらの形に整えていた・・・
課題の用紙には下の方に『薬を多めに作り、それを自分で使用しても良いものとする・・・』と書いてある
シルキーは体力に自信がなかったので先に『体力回復薬』を調合したのである・・・
次はいよいよ魔法回復薬の材料を採る・・・
調合室の奥まで行くと・・・
そこは暗く周りは湿っていて生暖かい・・・
先ほどの場所とは違い空気もどんよりしている・・・
シルキーの目の前には大きなツルが幾重にも生えて絡まりながら上に伸びている
この場所では魔法を使うことが出来ないので自力で材料を集めなくてはいけない・・・
シルキーはツルに手をかけ登っていく・・・
果てしなく続く暗闇の中・・・
どこまで行けば材料があるのか分からない
途中何度もすべり落ちそうになりながら進んで行くと・・・
遠くの方で小さな白いものが見えたような気がした・・・
この暗闇の中見つけた小さな希望・・・
シルキーは登る速度を速めた・・・
小さな白いものだと思っていたそれは・・・
小さな星の形をした白い花だった
「こんな暗闇の中で育ったんだね・・・」
闇は光を隠すものだと思っていたけれど・・・
闇がなければ
それが光だなんてわからないよね・・・
シルキーの髪がふわっと揺れた・・・
(・・・?!・・・風・・・?)
それと同時にシルキーはあることに気付いた・・・
「え・・・ここ魔法が使えるの?」
自分の中に魔力を感じることができた
シルキーは魔法を唱え手のひらサイズの花びらを出す
それを重ね合わせ、その真ん中に魔法で作った丸い光を入れる・・・
それを手から離すと上へと進んでいく・・・
ある程度いったところでそれは止まり花びらが開き、周りを照らし出す・・・
「成功した〜♪」
シルキーは満面の笑みを浮かべている
桜の妖精が使う魔法の力は心の安定と想像力でなりたっている
花びらの形から想像力次第で何通りもの魔法が生まれる・・・
魔法を使用する者の個性が出てくる
魔力が強くなるにつれ想像通りの魔法が出来るようになる
魔法のお陰で周りが見えるようになった
周りを見てみると必要な材料がたくさん生えていたので必要な分だけ採り袋に入れる
この暗闇の中
育まれている命
いつ消えてしまうかわからない
だからこそ・・・その数少ない命を分けてくれたことへの感謝
「ありがとう・・・大切に使わせて貰うね・・・」
シルキーはそう言って深く頭を下げた
その場を去ろうとした時・・・
風が吹いている方向が気になった・・・
この先に何があるのか分からない
危険かもしれない・・・
でも・・・
シルキーは先に進むことにした・・・
その先に何があろうとも前を向いて歩いて行くと決めた・・・
風の方向に歩いていくと・・・
だんだん風が強くなってきました
少し進むと道がなくなってしまいました
(あれ?・・・風は吹いているから・・・どこかに道があるのかな・・・)
周りはシルキーよりも大きな葉っぱが一面に広がっていた
色んなところに手と足を突っ込んでは通れる道はないかと確かめる
しばらく探していたら風が一番強い場所が見つかった
そこは道とはいえない・・・葉っぱが生い茂るだけでした
(う・・・ん魔法で何か葉っぱを切れる物だそうかな・・・)
シルキーは一面の葉っぱを眺め・・・
(ここまで伸びるのにどれくらいの時間がかかったんだろう・・・)
少し考え・・・葉っぱを掻き分けて進んでいく
(・・・切ったら可哀想だもんね)
シルキーには分からなかった・・・
この葉っぱがここまで成長するのにどれくらいの時間が必要なのか・・・
それは・・・この桜がお城になる前の昔からあるのです
掻き分けながら進んでいくと
葉っぱはここを通さないとでも言ってるかのように
シルキーに攻撃してきます
その度に色んなところが切れて傷がたくさん出来ました
それでも諦めず前だけを見て進んでいきます
光が見えたので顔を突っ込んでみました
すると・・・
(・・・?!)
「え・・・?!ここどこぉーー?!」
シルキーの目の前には真っ青な空が広がっていました
シルキーが顔を出したところは調合室よりかなり上にある桜の幹でした
幹にはぽっかりと穴が開いていたのです
幹から伸びる枝の先を見ると桜が密集していて、そこはまるで桜のふかふかベットのようでした
そこに移動して寝そべってみました・・・
頬にあたる柔らかい風
桜の匂いがふんわりとする
桜の花が風に揺れるたびカサカサと心地よく耳に届く
(何もかも忘れて・・・ここでお昼寝が出来たら幸せだろうな〜♪)
そんなことを考えていたら大きな風が吹いてシルキーは下に落ちそうになる
「うわっ?!危ない・・・」
(・・・そうだっ今は試験中だった・・・)
シルキーは下を見てみると調合室があるのが確認出来た・・・
(高っ?!でも・・・戻れないし・・・ここから降りるしかないよね・・・?!)
誰にとも分からない確認をしてみたが、この状況が変わるわけではないので・・・
覚悟を決めた
シルキーは不思議と怖いと言う感情はなく心が落ち着いていました
シルキーはバランスをとりながら立ち目を閉じ集中した・・・
そして・・・思いを込めて魔法を唱える・・・
すると・・・シルキーの足元に小さな桜の花びらが集まり、やがてそれは細くなり下の方まで伸びていく
シルキーが目を開けた時、花びらはなく変わりに下の方まで続く道らしきものが出来ていた・・・
(あれ・・・花びらは?)
大きな花びらを想像していたのに違うもを出してしまったようだ・・・
(失敗しちゃった・・・)
シルキーはその道がどこまで続いているのか確認する為に下を見ると・・・
(・・・調合室付近までは続いているようだけど・・・)
本当に続いているかはわからなかった
シルキーは今の魔法で魔力を全部使ってしまったので諦めて、その道を進むことにした
シルキーは調合室に戻る為、魔法で出した道へ一歩踏み出した・・・
踏み出すと足をおいた振動で道は波をうってゆらゆらと揺れはじめた
とても薄い布の上に足をおいているようだ・・・
(この道・・・本当に歩けるのかな・・・)
恐る恐るもう一方の足を道の上へ
今度は振動が止まり揺れもおさまった
(なんとか歩けるみたいだね・・・)
恐る恐るではあるが確実に一歩ずつ進んでいった
だいぶこの道にも慣れてきたので、少し小走りになった
(いくら試験中に時間制限がないからって、あんまりのんびりしていると怒られてしまう・・・)
慣れてきたとは言っても、この不安定な道を小走りで進むなんて考えるのはシルキーだけだろう・・・
しばらくは順調に進んでいった
ゆるやかな坂道に差しかかった時シルキーは足を滑らして尻餅をついてしまった
(・・・何もない道で転ぶなんて・・・誰も見てなくて良かった///)
立ち上がろうとしていたら違和感を感じた・・・
少しずつではあるが景色が変わっているような気がする・・・
(前に進んでるみたい・・・)
「このまま滑っていけば・・・楽に調合室につけるね〜♪」
と嬉しそうに滑っていった
急な坂道に差しかかるまでは嬉しさでいっぱいだった・・・
「おゎっあああー落ちる〜〜〜ぅぅ〜・・・」
ゆるやかな坂道の時とは違って急な坂道になった途端に物凄い勢いで滑り降りていった・・・
(うわっあああ・・・この道から外れたら下に落ちるってばぁぁぁぁ〜)
目には涙がたくさん溜まっていて前が見えなくなっている
それが追い討ちをかけるように恐怖を誘う
シルキーは果たして無事に調合室に辿り着けるのか?!
くねくねと曲がりくねった道を物凄い勢いで滑っていく
すでに怖さは通り越していて、やけに冷静なことに少し驚いていた
ふと・・・昔、姉から言われたことを思い出していた
『魔力は思いの力で強くなるのよ…』
(思いの力ってなんだろう…)
シルキーにはその意味がわからなかった
しばらくすると調合室が見えてきた
道は調合室の中まで続いているようだ
調合室に入った途端に体がふわっと宙に浮き、そのまま下に落ちた…
どうやら道は床まで続いてはいなかったみたいだ
ドサドサと大きな音を立てて落ちていき埃が舞い辺りは真っ白になる…
(なんか今日はついてないみたい…)
すべてのことがシルキーの好奇心が原因だと言うことに気がついていなかった
遠くの方から足音がして、それがだんだん近付けてきた
シルキーの前で止まり頭の上の方から低い声がした
「シルキーさん・・・今までどこに行っていたのですか?」
見上げると・・・試験委員の先生が立っていた
「魔法回復薬の材料を採りに行ってました・・・」
シルキーは先生に今出来る笑顔を向けた・・・
「そうですか・・・シルキーさんと同じく魔法回復薬を作成した皆さんはすでに試験は終わっていますのよ・・・」
先生は微笑んでシルキーに言ったのだが・・・その笑顔はどこか引きつっているように見える・・・
(やっぱり怒ってますよね・・・)
すぐに立ち上がり服に付いた埃を叩いた
「すみませんでした・・・今すぐ魔法回復薬を作ります・・・」
先生にお辞儀をして急いで魔法回復薬を作成する・・・
(先生の前でやるなんて緊張するよ・・・)
少し緊張しながらも手順は完璧〜♪
「遅れてすみませんでした・・・」
と深く頭を下げて課題の体力・魔法回復薬を手渡す・・・
「はい・・・確かに受け取りました・・・」
先生は笑顔で付け加えた・・・
「後片付け宜しくお願いしますね・・・シルキーさん」
先生は足早に調合室を後にした・・・
取り残されたシルキーは調合室を眺めていた・・・
(仕方ないよね・・・私がしたんだから・・・)
先ほどシルキーが落ちた衝撃で調合の器材が壊れていた・・・
仕方がないので片付けを始めた
魔法でやれば早いのだが魔法回復薬を全部先生に渡してしまったので魔力は回復していなかった
倉庫からホウキとチリトリを持って来て器材の破片を集めてゴミ箱に入れる
このゴミ箱には魔法がかけられていて入れた物は中で元に戻るようになっている
ゴミ箱の蓋を開けると割れた物が元に戻っていたので机の上に綺麗に並べた
(あれ…足りなかったみたい…)
よ〜く見ると容器に穴があいていた
ゴミ箱に入れた物は元に戻るのだか、それはすべての破片を集めると言う条件のもとになりたっていた
破片だけを探すのは困難な為、調合室の中を綺麗に掃除することにした
ホウキで綺麗に掃いてからゴミをゴミ箱へ入れ、水に濡らした布を持ってきて部屋の中を綺麗に拭いていった・・・
調合室は前よりも綺麗になっていた・・・
日に照らせれてキラキラと光っている
「よし♪完璧〜♪」
後は穴のあいた容器をゴミ箱の中へ
しばらく待ってからゴミ箱を開けると・・・
容器の穴は直っていて新品のような輝きをはなっていた
(あのゴミの中に破片があって良かった・・・)
ゴミ箱に入れる物は本当なら壊れた物の破片だけなのだか・・・今回は普通のゴミも一緒に入れてしまった
(・・・埃や木くずとかって何に戻るんだろう・・・)
ゴミ箱の中を除くと埃は砂に木くずは新しい植物の芽に戻っていた・・・
掃除用具を片付けてから・・・
それをゴミ箱の中から出して調合室の植物が生えている場所まで持っていき埋めてあげる
そして水をあげシルキーは声をかけた・・・
「元気に育ってね」
満面の笑みで調合室を後にした・・・
部屋に戻ったシルキーは今日の試験の疲れが出たのか夕飯を食べずに寝てしまった・・・
姉のことが少し気になってはいたが疲れには勝てなかった・・・
明日には試験結果が出るだろう・・・
今日の天気は快晴〜♪
仕事始めにはとても良い天気となりました
シルキーは手のひらサイズの卒業証書をバックに入れた
(これがないと仕事が出来ないもんね♪)
そして仕事場から支給されたブレスレットをつける・・・
ブレスレットには桜の国の刻印がされていて、これを見せればどんなところだって通れるのです
「えっと最初の荷物運びの場所は・・・」
仕事場から貰った配達先の地図を確認する
試験当日からすでに2日が経っていた
昨日、試験結果がシルキーの元へ届いた
飛行/調合ともに合格していた
両方合格している場合はどちらか就きたい仕事を選ぶことが出来る
シルキーはもちろん配達する仕事を選んでいた
そして今日が初仕事になります
荷物が置いてある部屋に行き自分が配達する荷物を探す
配達先の人数と荷物を照らし合わせ集めていく
「よし♪チャック完了♪」
集めた荷物は山のようにあり、これを何日かに分けて配達していく
(・・・いけないっ忘れるところだった・・・)
何日かの食料も用意しておく
シルキーはパックの中にある物があるかを確認する
「ちゃんと持って来たよね・・・」
バックの中に手を入れ取り出したのは自分で作った桜の花びらの形をした体力・魔法回復薬を取り出す
「これがないと仕事にならないし・・・これくらいあれば当分の間は大丈夫だよね・・・」
袋は二つあり体力・魔法とそれぞれ回復薬が袋いっぱいに入れてあった・・・
この袋は昨日、姉から渡されたもので伸縮自在になるように魔法がかけられていた
ちなみにパックも見た目よりたくさん入るように魔法がかけられている
これは母からのプレゼント〜♪
シルキーは魔法を唱えた・・・
すると荷物のまわりに円が描かれ魔法が唱え終わった途端に荷物がブレスレットの中に吸い込まれていった・・・
このブレスレットには荷物を収納する魔法がかけられている
仕事によってブレスレットにかけられている魔法が違う
物に魔法がかけられている場合は使用するものが魔力がなくても使用できる
付けている本人にしか使用が出来ないが、とても便利なものなのです
両親と姉に挨拶に行く為にお城の中央に向かう
「準備が出来たので、そろそろ出発します」
これからどんなことが起きるのか考えるだけでワクワクする♪
シルキーは嬉しくてたまらなかった
父は微妙な微笑みをシルキーにむける・・・眉間にしわがよっているのですが・・・
父なりに心配をしているようだ
「気をつけるんだぞ・・・」
「はい♪大丈夫です♪」
母はと言うと手にハンカチを持って泣いている・・・
「シルキー忘れ物はない?地図見て反対方向に行っては駄目よ・・・」
「うん…今まで道に迷ったことないから大丈夫だよ…」
母に笑顔で言った
実際は迷ったことはあるのだがシルキーは気が付いていなかった…
しかも迷っても今までは勘でなんとかなっていた
国の外に出たら、そうはいかない
「お母様シルキーなら大丈夫よ…」
姉は母に笑顔で言いシルキーを見て言った
「気を付けて…いってらっしゃい…」
姉は微笑んでいたが…深い悲しみが溢れていた
「いってきます…」
シルキーは両親と姉に手をふり、お城を後にした…
桜の花びらに乗り…国の境まで来た
ここから先は外の世界…
桜の国は外から見えないようになっていて、国全体が魔法の壁で覆われている
外に出るにはブレスレットが必要で魔法の壁に近付けると一人通れるくらいの穴があいた
後ろを振り返り満開の桜を眺めた
(この桜とも当分の間お別れなんだね…いってきます…)
大きく手をふり、穴の中へと入っていった…
シルキーの旅がこころから始める
たくさんの出会いの中で何かが変わっていくことでしょう…