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執着を操る俺、冷徹な300年エルフを壊してしまった  作者: のくと・ふぇいん


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第1話:氷のエルフと執着の始まり

人は、執着でできている。


 金に執着する者。

 名誉に執着する者。

 そして——誰か一人に、異常なまでに執着する者。


 俺は、それに触れられる。


 強めることも、歪めることもできる。


 だから人は、簡単に壊れる。



「ひ、ひぃ……!」


 目の前の盗賊は、剣を握っているくせに腰が引けていた。

 足は震え、呼吸は浅く、目は完全に焦点が合っていない。


 理由は簡単だ。


 俺が、ほんの少しだけ“いじった”からだ。


 ——恐怖への執着。


 それを、ほんのわずかに強めただけ。


「お前、逃げたいんだろ」


「や、やめろ……近づくな……!」


 男は剣を取り落とし、そのまま背を向けて走り出した。

 仲間もいない森の奥へ、ただ一目散に。


 追う必要はない。


 執着は、人の行動を決める。


 恐怖に囚われた人間は、二度と戻ってこない。


「……便利な力だ」


 小さく呟く。


 誰かの心に触れて、ほんの少し傾けるだけでいい。

 それだけで、人は簡単に崩れる。


 ——だからこそ。


 これは、まともな力じゃない。



 その時だった。


 空気が、変わった。


 風が止まる。

 森が、静まり返る。


「……なんだ?」


 次の瞬間。


 ——閃光。


 視界が白に染まり、遅れて轟音が響く。

 盗賊たちがいた方向で、光が弾けた。


「……は?」


 思わず目を細める。


 そして、その中心にいたのは——


 一人の女だった。


 長い銀髪。

 透き通るような白い肌。

 そして、感情というものを削ぎ落としたような、冷たい瞳。


 エルフだ。


 だが——普通じゃない。


 足元には、焼け焦げた盗賊たち。

 さっきまで複数いた連中が、一瞬で消えていた。


「……今の、魔法か?」


 思わず声が漏れる。


 女は答えない。

 ただゆっくりと、こちらを見た。


 その視線だけで理解する。


 ——格が違う。


 こいつは、俺が今まで見てきたどの戦士よりも強い。



「……生存者か」


 淡々とした声だった。


 感情がない。

 ただ事実だけを処理しているような口調。


「まあな」


 俺は肩をすくめる。


「助けに来てくれたのか?」


「違う」


 即答だった。


「任務の途中で、敵性反応があっただけだ」


「盗賊だぞ、あいつら」


「同じだ」


 バッサリだな。



 女は一歩近づく。


「お前、何をした」


「何って?」


「先ほどの盗賊だ」


 見られていたらしい。


「逃げただけだろ」


「違う」


 その瞳が、わずかに細められる。


「恐怖に支配されていた」


「……よく見てるな」


「300年、生きている」


 さらっと、とんでもないことを言った。


 300年。


 なるほど。

 この“圧”も納得だ。



「……で?」


 俺は笑う。


「それで、どうする?」


 エルフは一瞬だけ考え、


「監視する」


 と言った。


「お前は異常だ」


「ひどい言い方だな」


「事実だ」


 即答。


「精神に干渉する能力」


「……」


「危険だ」


 全部バレてるじゃねえか。



「安心しろ」


 俺は手を上げる。


「敵には使うが、味方には——」


 そこで、言葉が止まる。


 ほんの一瞬の迷い。


 エルフは見逃さなかった。


「……今、躊躇したな」


「気のせいだ」


「違う」


 断言。



 面白い。


 300年の経験ってやつか。

 誤魔化しが効かない。


 だから——


 試してみることにした。



「なあ、エルフ」


「名前で呼べ」


「じゃあ教えろ」


「必要ない」


「じゃあエルフでいいな」


「……好きにしろ」



 その瞬間。


 俺は、ほんの少しだけ触れる。


 ——“執着”に。



 対象:このエルフ。

 項目:任務への執着。


 それを、ほんのわずかに——


 強める。



 変化は、ほとんどない。


 外から見れば。


 だが分かる。


 こいつの中で何かが、ほんの少しだけズレた。



 エルフは俺を見る。


 じっと。


 数秒。



「……決めた」


 静かに言う。


「お前を同行させる」


「は?」


「監視のためだ」


「急すぎるだろ」


「必要だ」



 そして一歩近づく。


 距離が、近い。


「お前は危険だ」


「さっきも聞いた」


「だから」


 一瞬、言葉が止まる。


 ほんのわずかな違和感。



「……私が見ていなければならない」



 その言葉に、俺は内心で笑った。


 ——効いてる。


 ほんの少しのはずなのに。



「……どうした」


 エルフが言う。


「いや」


 俺は肩をすくめる。


「なんでもない」



 だがその時。


 エルフが、わずかに眉をひそめた。



「……妙だな」


「何が?」


「今」


 胸元に手を当てる。



「執着が、強い」



 その視線が、俺に向けられる。


 真っ直ぐに。



「……お前」



 空気が張り詰める。



「私に、何をした?」


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