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遺跡道中

大戦の影響で砂漠地帯となってしまった前線跡地。

その地下には広大な空間が存在していた。


トレジャーハンターであるハルカの話では、この場所は古代遺跡に該当するらしい。

古代文字やら謎の力場やら、俺にはさっぱり分からないことばかりだ。


「この遺跡は大戦の起きる遥か昔から、この地下に存在していたのか?」


この古代遺跡がどのくらい貴重なものなのかは分からないが、

なにもそんな場所で戦争しなくてもよかろう。


「それがそうとも限らないのよ。」


「と言いますと?」


まさか最近つくられたものなんて言わないよな。

それでは古代遺跡とは言わないだろう。


「古代遺跡はずっと同じ場所にあるとは限らないのよ。

 ある日突然地上に現れることもあれば、長い時間同じ場所に留まっていることもあるの。」


「遺跡が動いて移動しているって言うのか?」


「そうじゃないわ。空間そのものが現れたり消えたりするのよ。」


ハルカの口から放たれる言葉の意味は分かるが、

俺の脳みそは理解を拒んでいた。


空間が現れたり消えたりする?


自分が田舎者の世間知らずだという自覚はあるが、

それにしたってそんな話は聞いたことがない。


まさか外の世界にそんな不思議空間が存在しているとは。


「そもそも古代遺跡なんて呼んでるけど、本当に古代に作られたのかさえ分からないの。

 宇宙人が持ち込んだテクノロジーだなんて言う人もいるわ。」


そう言ってハルカは横でそびえ立つ石柱を指さした。

石柱は今も半透明な謎の力場を発生させて、天井の砂を上に押さえつけている。


確かに同じ人間が作り出したものとは考えられないほど、凄まじく意味不明な技術だ。

もしもUFOが実在するなら、この力場で空を飛んでいるのかもしれないな。


「で、その古代遺跡から脱出するにはどうすればいいんだ?」


色々と興味深い話ではあったが、今重要なのはそこじゃない。

どうすれば生きて地上に戻ることが出来るかだ。


「基本的にはどこからでも出入り自由よ。

 普通は入ってきた場所から外に出るけど・・・」


そこまで言ってハルカは口を噤んだ。


俺たちは遺跡に入って来たのではなく落ちてきたのだ。

砂に流され、地下深くの古代遺跡に。


スタン・ブラスターの明かりで俺とハルカが眠っていた付近の真上を照らしてみる。

案の定、天井は砂で覆われており、俺たちの通った痕跡すら見当たらない。


「他に脱出用の仕掛けとかあったりしないか?」


「古代遺跡の内部に行けば、緊急脱出用の転送装置があるかもしれないわ。

 それなら地上まで一気に出られるかもしれない。」


「緊急脱出用の転送装置?」


「原理は分からないけれど、遺跡の外に一瞬で出れる装置がたまに置いてあるのよ。」


それは原理が分からないで済ましてよいのだろうか。

遺跡自体が神出鬼没という話を聞いた後では、ツッコミを入れる気にもならないが。


とにかく今はトレジャーハンターであるハルカに従った方が賢明だ。

古代遺跡というのは、俺の想像を遥かに超えているらしい。


「とりあえず探検しましょうか。」


こんな状況だというのに、ハルカはどことなく楽しそうな笑顔を浮かべていた。

未知の古代遺跡を前にして、トレジャーハンターの血が騒いでいるのだろうか。


そんな姿を見ていると、俺の中の不安も少し薄らいでいくような気がした。

今はハルカの肝っ玉のデカさに、便乗させてもらうとしよう。


______________________________________________________________________________________



力場を発生させている石柱は等間隔に建てられているようで、

俺たちはそれに沿って暗闇の中を歩くことにした。


この暗闇の中では自分たちのいる場所さえ見失いかねない。

方向感覚を失わないためにも、石柱を目印にすることにしたのだ。


スタン・ブラスターの明かりで周りの様子を確認しながら歩を進める。

相変わらずのだだっ広い空間だが、辺りに何もないわけではない。


スクラップになったアンマンド・ストーカーのような小型の兵器や、

金属や木材の破片のようなものが点々としている。


俺たちと同じように、砂漠から落ちてきたものだろう。


おそらく石柱の発する力場は砂のみを押し上げるもので、

それ以外のものは通り抜ける仕組みになっているのだ。


ふと、砂漠に引きずり込まれたときのことを思い出す。

あの場で砂に呑み込まれたのは俺達だけじゃなかったはずだ。


地上で戦ったアンマンド・リーパーも砂に沈んでいくのをこの目で見た。

まさかこの近くに落ちてきているのだろうか。


いや、それだけではない。

もっと重要なことを忘れていた。


「ハルカ、イグニードは探さなくていいのか?」


俺達が落下した場所に、イグニードの姿はなかった。

重量差の影響で、俺達とは離れた場所に流されてしまったのだろう。


しかし、この地下空間のどこかに落ちてきている可能性は高い。

それなのに、ハルカがいの一番にイグニードを探さないのはどうしてだ。


質問を投げかけられたハルカはキョトンとした顔でこちらを見ていた。


そのまま数秒見つめ合った後、ハルカはハッとした顔になり、

自身の右腕に巻かれている赤いブレスレッドを指さして言った。


「イグニードならここにいるわよ。」


今度はこちらがキョトン顔になる番だった。


「どういうことだ?」


「ごめんなさい、説明してなかったわね。

 ソウル・パンツァーはブレスレッドの形で携帯出来るのよ。」


言っている意味は分からなかったが、先ほどの古代遺跡の説明を聞いた後だ。

そういうものなんだなと、とりあえず納得することにした。


「せっかくだから見せてあげる。」


そう言うとハルカは右腕を天井に向けて高く突き上げた。


「おいで!イグニード!」


呼びかけに応えるように、右腕に巻かれたブレスレッドが赤い光を放つ。


いや、正確には違う。

ブレスレッドそのものが赤い光へと姿を変えていく。


光はハルカの右腕を離れて地面へと降り立つと、

見る見るうちに体積を増して大きな人型になった。


そして次の瞬間には、赤い装甲を身に纏うイグニードがその場に立っていた。


「すげぇ・・・」


思わず感嘆の声を漏らしてしまった。


地下空間の暗闇も相まり、その光景は神秘的なものに感じられた。

パンツァー乗りを夢見る俺にとっては、まさに眩しい光景だ。


再び間近でイグニードを見ることが出来るとは。

ソウル・パンツァーの存在感は、この暗闇の中であっても圧倒的だ。


しばらくの間、俺は茫然とイグニードを見入っていたが、

ソウル・パンツァーの能力に関して重要なことを思い出した。


「というか、初めからイグニードの炎で照らせばよかったんじゃないか?」


次にキョトン顔になるのは、ハルカの番であった。


______________________________________________________________________________________



しばらく歩き続けた俺たちは、大きな建造物の前へと辿り着いた。


「これが古代遺跡の本体ね。」


相変わらずの暗闇で遺跡の全体像を見ることは叶わないが、

それなりに大きな建造物であることは確かなようだ。


建物の壁をスタン・ブラスターで照らしてみる。

一見すると石のような材質だが、手触りは金属のようでもある。


人工的に作られた、金属のように硬い石って感じだ。

これも未知の技術によるものだろうか。


その石が綺麗な直方体に成型され、積み上げることで出来た建造物のようだ。


「中に入ってみましょうか。」


ハルカの後に続いて入り口らしき場所から中に入る。


それにしても大きな入り口だ。

ソウル・パンツァーくらいなら普通に通れる大きさである。


遺跡の中は薄ぼんやりと光で溢れており、

スタン・ブラスターの明かりがなくてもなんとかなりそうだ。


「遺跡の内部にはイセキゴケと呼ばれる発光する苔がよく生えているのよ。」


遺跡に生えているからイセキゴケとは、あまりにそのままなネーミングではなかろうか。


「トレジャーハンターの間で勝手にそう呼んでるだけだけどね。」


何にせよ、バッテリーを消費しないで済むのは助かる。


本日二回も電撃を放ったスタン・ブラスターくんのバッテリー残量はほとんどない。

いざという時に備えて、電力は残しておきたい。


結局イグニードの炎を使わず、スタン・ブラスターの明かりを使っていたのには訳がある。

ハルカ曰く、精神エネルギーをなるべく温存しておきたいとのことだ。


「砂漠での戦いで結構消耗しちゃったから、今の内に回復しておきたいのよ。

 いざというときにイグニードを出せなくなっても困るしね。」


ここに来るまでの間にハルカはそんなことを言っていた。


精神エネルギーっていうのがあまりピンと来ていないが、

気合で動かしているということだろうか。


俺はどうだろう。


ソウル・パンツァーを動かす精神エネルギーってやつを

俺もしっかりと持っているだろうか。


そんなことを考えながら、ハルカの後に続いて遺跡の通路を歩いていく。


危険な罠がないか先を歩くハルカが確認してくれるおかげで、

俺はただのんびりと歩いているだけだ。


「ハルカはトレジャーハンターって言うくらいだから、

 お宝を求めて遺跡探検しているのか?」


邪魔するのは悪いと思いつつ、暇を持て余した俺は世間話を開始した。


「半分当たりで半分はずれね。

 一番の目的は古代遺跡の謎を紐解くことかな。」


そう言ってハルカは無邪気な笑顔を見せた。


「古代遺跡の謎?」


「さっきも言ったけど、古代遺跡に関しては分かってないことの方が多いのよ。

 お宝にも興味はあるけど、この古代遺跡をいつ誰がどんな理由で作ったかの方が興味あるわね。」


砂漠で助けられた時から感じていたが、ハルカは情熱的な性格のようだ。

俺はどちらかと言うとお宝の方が気になってしょうがない。


「ちなみにお宝ってどんなものがあるんだ?

 金とか宝石とかが置いてあったりするのか?」


「古代遺跡のお宝といえば、やっぱりオーパーツかしらね。

 未知の技術で作られた不思議な能力のある道具や物質が見つかることがあるの。」


ハルカの知っているものだと、永遠に燃え続ける石、

弾を入れなくても無限に撃てる銃、見た目以上に荷物の入るカバン、

もの凄い切れ味の剣など、多種多様なオーパーツが発見された例があるとか。


そしてそのどれも、未だに原理の解明が出来ていないらしい。


「もしかして表にあった力場を出す石柱も持って帰ればお金になったりするのか?」


あれだけたくさんの石柱があるのだから、一本ぐらい持って帰っても問題なかろう。


「あの柱は絶対に折れないのよ。

 柱に限らず、遺跡を形作っているものは全て破壊出来ないほど硬い物質で出来てるの。」


絶対に破壊できない物質まで出てきてしまったか。

それでロボットを作ったら強そうだが、破壊出来なければ加工も出来ないか。


「でも、古代遺跡をつくった人たちはその素材を加工出来たんだよな。それも謎ってことか?」


「そういうことになるわね。

 駆け出しのトレジャーハンターだから、まだまだ分からないことの方が多いけれど。」


話がついつい弾んでしまうのは、決して暇だからという理由だけではない。

俺もハルカも心の奥底では不安なのだ。


遺跡の通路は迷路のようになっており、俺たちは手探りで進んでいく。

どこかにあるかもしれない、脱出手段を求めて。


地上に帰れる保証は、まだない。



 

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