プロローグ
夜が来る度に、同じ夢を見る。
金属製の無機質な部屋の中で過ごす退屈な夢。
部屋の中にあるのは無数の発光するパネルと、見たこともない複雑な計器。
外部からの光は一切なく、窓の外にはどこまでも続く暗闇が広がっていた。
夢の中の俺はパネルの前に座り込み、カタカタと操作盤のようなものを指で何度も叩いている。
それを繰り返すだけの退屈な夢。
光るパネルには文字やグラフの様なものがびっしりと並んでいるが、
夢の中のぼんやりとした思考では、その意味を理解することは叶わない。
ただ1つだけ、気になる単語が目に付く。
『ノア』
途端に世界が白い光に包まれていく。
夢の中である程度の時間が経つと、決まってこの世界は薄れ始めていく。
現実世界での目覚めの時がやって来たのだ。
「おやすみ」
夢の世界から離れゆく俺を見送るように、
どこか聞き覚えのある声が脳内に響く。
夢の中の俺、若しくは夢の中に登場する別の誰かの声。
その声色には少し、寂しさのようなものを感じた。
ここにいない誰かに語りかけるような、
自分に言い聞かせるような、
そんな哀愁のようなものを俺は感じた。
きっとこの男は、過去に悲しいことがあったに違いない。
深い悲しみを抱えながら生きているのだろう。
そこまで考えて、俺はつい笑みをこぼした。
そんなことを考察しても仕方なかろう。
何故ならこれは、すべて夢の中のお話なのだから。




