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灰色

掲載日:2025/10/19




この空は、今日も灰色だ。

息をしても、何も感じない。

人混みの中で、笑う声だけがやけに遠い。


駅のベンチに座って、缶コーヒーを手にしていた。

ぬるくて、甘くて、やけに人間くさい味がした。


―――もう、いいか。

そんな言葉が喉の奥まで上がってくる。


そのとき、横に腰を下ろした中年の男が、ぼそりと呟いた。


「天気、悪くなると思って傘持ってきたのに、降らねえんだよな」


見上げると、雲の切れ間から少しだけ青が覗いていた。


「……降ってほしかったんですか」

「うん。雨が降ると、なんとなく自分が許される気がすんだよ」


意味がわからなくて、少し笑ってしまった。

男も、口の端をわずかに上げた。


「まあ、天気も人生も、思った通りにはいかねえな。でもさ」

彼は立ち上がって、空を見上げた。


「灰色ってさ、白と黒の“途中”だろ?

 途中でやめたら、もったいないじゃん。」


そう言って、改札のほうへ歩いていった。

足元に落ちたひと雫。

いつの間にか、本当に雨が降り始めていた。


傘を持っていなかった私は、立ち上がる。

冷たい雨が頬を打つ。

でも、さっきよりは少しだけ、生きている感じがした。


―――途中でいい。

終わらせるのは、いつだってできる。

だからもう少しだけ、見届けてみよう。


この灰色の空が、

どんな色に変わるのかを。






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― 新着の感想 ―
灰色の先にある、自身が落としたインクで出来た色の道を歩いて行きたいですね その男性、もしかしますと神様……?
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