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9-3(20階層ヒュドラ1).

 俺達4人の背後でボス部屋の扉が閉まった。そして俺達の前にいるのはザルバ大迷宮20階層のボスであるヒュドラだ。


「ケルベロスも大きかったけど、これは…」


 アディは途中で喋るのを止めて口を大きく開けてヒュドラを眺めている。


 俺達は15階層のケルベロスを倒してからレベル上げに励んできた。シルヴィーも入れて時にはメンバーを入れ替えながらだ。俺達は既に3年生だ。俺達5人は全員最上級職になっている。俺が最上級重剣士なのは前からだが、アディは賢者に、アルスは最上級剣士に、サラは最上級弓士に、シルヴィーは魔導士になった。バランスもいいと思う。


 今日は、俺、アディ、アルス、サラの4人でヒュドラに挑戦するためにここに来た。今回の挑戦が上手く行けばサラとシルヴィーを入れ替えて挑戦するつもりだ。全員帰還の腕輪を着けている。アディとシルヴィー、それにクリスティナ王女の伝手で手に入れたものだ。


「帰還の腕輪は一つずつしかない。1回で成功させるぞ」


 魔獣狩りの時に、俺達はストレイド王太子やその親衛隊の強さを目の当たりにした。インプレサリオ達もあの時点で最上級職になっていた。俺はともかくアディ達よりはレベルが上だった。あれからもレベルを上げているだろう。ダゴン迷宮を確保しているんだから当然だ。  


 俺達にはダゴン迷宮も潤沢な帰還の腕輪もない。


 そんな俺達がストレイド王太子やインプレサリオ達に追いつこうと思えばやることは一つだ。20階層のヒュドラを1回でクリアすればいい。


 それだけだ!


 『迷宮物語』の時、俺は20階層のヒュドラをクリアするのに20回以上は費やした。正確な回数は覚えていないが、一日ではクリアできなかったからそのくらいは掛かったと思う。それを1回でクリアしようというのだ。


「こいつを倒せば、最後なのよね」とアディが確認する。

「ああ、25階層に最終ボスがいる。だが、そいつを倒さなくても限界までレベルアップすることは可能だ」


 20階層より下へ行くことができれば時間は掛かるが59までレベルアップすることは不可能ではない。25階層のボスは属性ドラゴンだ。炎、氷、雷、と属性を変化させながら攻撃してくる厄介この上ないやつだ。レベルキャップが解放されていないと思われる現状で、無理に挑む相手ではないと俺は思っている。


 まあ、レベルキャップが解放されたら、それはその時のことだ。


「ギャアアアァァァァーーー!!!」


 ヒュドラは俺達を確認したのか鋭い声で長く咆哮した。9つの首がうねうねと動いている。


「赤が炎、青が氷、紫が雷、黒が毒、白が回復だ!」

「残りの4つの頭は物理攻撃しかしてこないのよね」

「そうだ!」


 こいつの攻撃で最も注意しないといけないのは、HPが70%、40%、10%の時に使う『天雷』に似た全体攻撃だ。最後の10%の時は狂乱状態と重なっているので特に危険だ。


「俺がタゲを取ったら、すぐにアディは『瞑想』、アルスは『集中』を発動させるんだ」


 二人は俺の言葉に頷く。


「その後も基本『瞑想』と『集中』はCT毎に使う。ただし…」

「狂乱状態の前は温存ね」

「そうだ!」と叫ぶと俺はヒュドラに接近した。


「『ダッシュ』、『挑発』!」


 俺は『ダッシュ』で一気に間合いを詰めると『挑発』を使った。ヒュドラが9つの頭を振り回して俺を攻撃してくる。


 ガーン!

 ガーン!

 ガーン!


 ガーゴイルの盾とヒュドラの頭が次々と激突する。早くも俺のHPは削られている。


「『大範囲回復』!」


 アディが俺の足元に回復エリアを出現させてくれた。俺は白い頭の近くに陣取っている。


「『雷弾』!」

「ぎゃう!」


 俺は『雷弾』を放つがヒュドラは小さく悲鳴を上げただけで硬直はしていない。


「アルス!」


 俺の声にアルスが背後から俺の背中をかけ上げるようにジャンプした。『跳躍斬り』だ!


 ガシッ!


 アルスはヒュドラの白い頭に剣を叩きつける。


「『3連撃』!」


 アルスは『跳躍斬り』に続いて威力の高い『3連撃』を放つとクルリと回転して地面に着地した。


「ぎゃあーーー!!!」


 ゴゴゴォォォーー!!


 ヒュドラの赤い頭がアルスに向かって炎のブレスを吐いた。だが、もうアルスはそこにいない。アルスは既にヒュドラから距離を取っている。ブレスの範囲は広いが俺達はアルスが囮になったおかげ予備動作を見逃さず安全な位置に移動できている。ブレスが終わると、俺はすかさずヒュドラを攻撃してタゲを取り返す。CTが空け次第、また『挑発』を使う。


「『呪いの矢』、『チャージショット』!」

「『炎槍』!」


 サラとアディが遠距離から白い頭に攻撃した。アディには攻撃はできる時だけでいいと言ってある。賢者のアディには主に回復役を務めてもらう必要がある。サラの『チャージショット』がクリティカルになったようでヒュドラは白い頭をクネクネさせて苦しんでいる。


 『集中』と『雷剣』を発動した俺は、9本の首がうねうね動くのを慎重に観察する。


 今だ! 俺に一番近い白い頭がこちらに向かって下がっている。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 俺は得意のコンボを使う。ヒュドラの頭が次々を俺を襲う。俺は盾でヒュドラの攻撃を捌きながらも攻撃を続ける。魔剣ソウルイーターの効果でなんとかヒュドラの攻撃に耐える。


「『大範囲回復』!」


 アディがCTが空けた『大範囲回復』を使ってくれた。ここで白い頭を斬り落としたい。


「『回転斬り』!」


 俺は強引に回転斬りを使った。


「アルス!」

「『剛剣』、『回転斬り』!」 


 俺の呼び掛けに応えたアルスが俺の隣で『剛剣』から『回転斬り』のコンボを使った。『剛剣』の硬直効果はレジストされなかったようだ。だが、その硬直もすぐに解けて、俺もアルスも『回転斬り』で攻撃しながらも次々と襲ってくるヒュドラの頭による叩きつけ攻撃でダメージを受けている。アディが出現させた回復エリアの中にいるのだが、それ以上にダメージが大きい。


 俺には魔剣ソウルイーターの効果もあるが…。


「アディ! アルスを!」

「わかったわ。『大回復』!」


 アディはアルスに回復魔法スキルを使った。アディの『回復』は強化されて『大回復』になっている。


「『強射』、『チャージショット』!」

「ギャァァァァーーー!!!!」


 またサラのチャーショットがクリティカルになった! サラのクリティカル率は高い。


「アルス、今だ! 白い首を落とせ!」


 アルスは俺の盾を蹴ってジャンプした。


「『跳躍斬り』!」


 ズサッ!


 アルスの上段からの『跳躍斬り』が決まってヒュドラの白い頭はドーンと音を立ててボス部屋の床に転がった。アルスの『跳躍斬り』は威力とCT短縮の強化がされている。


「大きい…」


 床に転がった白い頭を見てアディが思わず呟いている。一つの頭だけでこの大きさだ。


「これでやつは自己再生できない! 第一段階は成功だ」


 ヒュドラはまず白い頭を始末しないと何度でも再生魔法を使ってくる。なので最初に白い頭を斬り落とすのがヒュドラ戦の定石だ。


「そろそろ全体攻撃だ。アディとサラは距離を取るんだ」

「わかったわ」

「了解」


 アディとサラがヒュドラから離れる。


「もっとだ。もっと離れるんだ。アルスは俺の後ろ…」


 ぶーん!!!!!


「『ガード』!」


 ガシン!


 俺がすべてを言い終わる前に巨大なヒュドラが、その巨体からは想像できないほど素早く一回転して攻撃してきた。俺はそれを『ガード』で受けた。ジャストではなかったようで、俺は多少のダメージを受けた。だがこのくらいなら上出来だ。これは回避系スキルで防げない攻撃だ。多くのボスが似たような攻撃を持っているので俺も多少慣れてきた。


「みんな大丈夫か!」

「僕は大丈夫」


 俺の後ろからアルスの声がした。アルスは俺の盾の背後で攻撃を防いだようだ。アディとサラは?


「だ、大丈夫よ…」


 アディの声がした。見るとアディがサラに『大回復』を使っている。


「私は中級ポーションを飲んだわ。レオ、そんなに心配そうな顔をしないで,思った以上に範囲が広かったから掠っちゃったけど二人とも致命傷は受けていないわ。範囲は把握したから次は大丈夫よ」


 アディの回復魔法スキルで回復したサラも頷いている。大回転しての全体攻撃はHPが80%、60%、40%、20%の時にやってくる。ケルベロスとほぼ同じだが、こいつは20%の時にもこの攻撃をしてくる。炎と氷のブレスには特に規則性はない。そっちにも注意しなければならないから大変だ。


「『挑発』!」


 俺がタゲを取って、俺達は態勢を立て直した。俺は、ガシ、ガシと盾で防御しながら時々攻撃する。


「『呪いの矢』、『チャージショット』!」

「『スラッシュ』、『3連撃』!」


 攻撃は主にアルスとサラに任せている。だが、タゲを維持するためには俺も攻撃しなければならない。


 さっきの全体攻撃が80%だとすると、そろそろだ…。


「黒い頭に注意だ!」


 予想通り、すぐに黒い頭が波打つような動きを見せた。毒攻撃の予備動作だ。


「がああっーー!!」


 黒い頭は突然口を大きく開くと凄い勢いで黒く淀んだ塊を吐き出した。黒い塊は次々と吐き出される。俺達はそれを避ける。


「『回避』!」


 危なかった。黒い塊の一つがちょうど俺目掛けて飛んできたので思わず『回避』を使った。黒い頭は口を閉じている。毒攻撃は終わったようだ。


「みんな、大丈夫か?」


 俺の呼びかけに次々と「大丈夫」、「問題ないわ」、「ちゃんと避けたよ」と返事があった。 


 黒い塊が当たった床が黒くなっている。黒くなった床に触れると毒状態になってしまうので注意が必要だ。俺は黒くなっている床をよく観察する。3か所だけ薄く光っている。あれだ…。俺はその中で一番近い場所を記憶した。


「『ガード』!」


 俺は『ガード』した後、盾で弾くように攻撃した。得意のシールドバッシュもどきだ。みんなも黒い床を避けて攻撃をしている。


「みんな、こっちだ!」


 俺はジリジリとさっき記憶した場所に近づく。それにしても、注意することが多すぎて神経を使う。早くも疲れが溜まっているのを感じる。まだケルベロスのHPを3割も削っていない…。


 もう少しで最も危険な攻撃が来る…。

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