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8-7(魔獣狩り4~セルゲイ).

「ストレイド王太子陣営の騎士達です!」と従者団の一人が叫んだ!


 見ると左側からストレイド王太子陣営の親衛隊や騎士達が大挙して近づいてきた。ほとんど無傷のように見える。


 そして僕達を囲もうとしていた魔獣達を討伐し始めた。


 何だあの強さは…。特に先頭に立っているストレド王太子と100人ほどの親衛隊の強さは異常なほどだ。親衛隊員一人一人が魔獣に対応できている。ストレイド王太子は剣士系らしい。盾は持っていないから最上級剣士か…もしかすると聖剣士かもしれない。


 僕はそれを呆気に取られて眺めていた。 


「あいつら魔獣達よりレベルが高いっスね。何人かは最上級職になっている者もいるみたいっス」


 ストレイド王太子がずば抜けて強いが、それ以外にも盾と槍を持った男、魔法使いの女も相当だ。回復役のレベルも高そうだ。まさか、あれは聖女なのか…。


「レオ、よくわからないけど、もう大丈夫みたいだわ」とアデレードが主人公に話し掛けている。アデレードの声にも安堵の色がある。

「ストレイド王太子の親衛隊って凄く強いね」

「うん。でもアルスも凄かったよ」


 僕はぼんやりと主人公とその仲間達の会話を聞いていた。


 それにしても…。


 やっぱり、あの親衛隊の強さは異常だ。


「私の見たところ、魔獣のレベルは35くらいみたいだったわ」とプリマドンナが言った。

「ああ、僕達なら十分倒せるが王国騎士達にはきついレベルだ。従者団ならラングレー達上位の者なら対応できるが、それ以外は複数で対応する必要がある。そんな感じだ」

「インプレサリオ、だとしたら、あれは…」


 ストレイド王太子とその親衛隊の強さは…。眼前では次々と魔獣が倒されている。


「ありえない…」


 僕がダゴン迷宮で育て上げた従者団よりレベルの高い親衛隊…。いや、従者団どころか一部の親衛隊員は僕達と同じく最上級職になっているように見える。これは…コレオグラファーの仕業なのか?


 それとも…別の…。 


「とりあえず助かったみたいっスね」


 ストレイド王太子の陣営が戦場に現れて余裕の出たマエストロが僕に近づいてきた。確かにもう大丈夫そうだ。魔獣の数が多いため、もう少し時間は掛かかるだろうが…。


「俺達以外にも転生者って結構いるんっスかね?」


 ストレイド王太子は転生者で間違いない。ストレイド王太子が剣を一振りする度に魔獣が吹き飛ばされている。スキルを使っているとしても相当なレベル差がないとありえない光景だ。僕達と比べても10近くレベルが上なんじゃないだろうか?


「いや、ストレイド王太子以外は転生者とは思えない。ストレイド王太子とはだいぶ差がある…」

「でも、あの3人は私達と変わらないか、むしろ強い気もするけどね」


 プリマドンナが言ったのは最上級重槍士の男、魔導士の女、そして今も『大範囲回復』を使って戦線を立て直している聖女と思われる女だ。聖女だとするともっとレベルを上げれば『超範囲回復』や『超回復』だって覚えられはずだ…。


 グレアムを含めて僕達4人は固まって魔獣と戦いながら会話する。グレアムが放った『黒炎爆陣』に歓声が上がる。『黒炎爆陣』は魔導士になったグレアムが最初に覚えた強力な範囲魔法だ。


「うおー! 『シールドバッシュ』! 」


 マエストロは襲ってきた魔獣を弾き飛ばすと「この世界の人間が、ダゴン迷宮を使ってレベルを上げた俺達より強いなんってあり得るんっスかね?」と疑問を口にした。


 僕はダメージを受けた騎士を回復しながらマエストロの口にした疑問について考える。


「『カウンター』!」


 見事な『カウンター』が決まって、プリマドンナが一体の魔獣を葬った。ストレイド王太子達の合流により魔獣達は徐々に数を減らしている。


「それはそうと、ジギルバルト団長も思った以上に強いわよね」


 この世界最強と謳われるジギルバルト団長は少し離れたところで戦っている。クリスティナ王女を守るような位置だ。確かにこの世界の人達はスキルを選択できないはずなのにジギルバルト団長は強い。ただ、世界最強はどうやらジギルバルト団長でも僕達でも、さらに言えば主人公でもなく、ストレイド王太子らしいが…。


「僕達は勘違いしていたのかも知れないな」

「それはどういう意味っスか?」


 後衛の僕やグレアムを守りながらマエストロが訊いた。


「『迷宮物語』の時よりこの世界の人達のレベルは低かった」

「それに職スキルだって選択できないわ」とマエストロの横で槍を振るうプリマドンナが言った。

「その通りだ。だけど、同じレベルなら」

「同じレベルなら『迷宮物語』の知識がある俺達のほうが上っスよね」

「いや、そこが、勘違いかもしれない」


 迷宮攻略の経験からわかる通り、『迷宮物語』での知識があってもすぐに実行できるわけではない。実際に体を使って剣や槍を振るう。自分の目で見て瞬時に判断して魔法スキルを使う。これには慣れが必要だ。慣れるには経験や訓練が必要なのだ。


「この世界の人達の多くが、僕達より多くの経験や訓練を積んでいる」

「そうね。インプレサリオの言う通りかも…」

「言われてみれば、俺だって学園での授業や訓練が役に立ってる気がするっス」

「貴族に生まれたマエストロはまだいい。この世界の貴族なら幼い頃から武術の訓練などをしていただろう。だが、僕やプリマドンナにはそんな経験はない。迷宮に入れるようになってから経験を積み始めただけだ」


 この世界では貴族のほうが個人の武において優れていることが多い。幼い頃から訓練を積んでいたりもする。それに、比べて僕は…。


 考えてみれば、迷宮に入れるようになってからだって主に『迷宮物語』の知識とダゴン迷宮の効果にばかり頼っていたような気がする。王族であるストレイドには幼い頃から武術に関して優秀な指南役がついていただろう。


 幼い頃から騎士や探索者を目指して努力していた者、そんな者達が本当に僕達より弱いだろうか? 少なくともレベルに違いがなければ…。


「インプレサリオ、言いたいことはわかるわ。でも弱気になってはダメよ。『迷宮物語』の知識は無駄じゃない。それにダゴン迷宮でレベルを上げれば…。レベル差っていうのはやっぱり圧倒的なアドヴァンデージなのよ」

「プリマドンナの言う通りっス」

「そうだな」


 『迷宮物語』の知識が全く役に立たないわけじゃない。いや、むしろかなり役に立つのは事実だ。


「正直、この魔獣狩りでは僕達アルバート殿下陣営が一番活躍できていない。それで、少し弱気になっていたみたいだ」


 僕はストレイド王太子とその親衛隊を見る。確かに強い。ストレイド王太子はもちろん、あの3人は少なくとも僕達より弱いってことはなさそうだ。


 それでも…。


「僕達にはダゴン迷宮がある。同じレベルなら、必ずしもこの世界の人達が僕達より弱いと限らないのなら、もっとレベルを上げればいいだけだ!」

「セルゲイ様、その通りです。俺も必ずお役に立ちます」


 これまで黙っていたグレアムが突然口を挟むと「『黒炎槍』!」と叫んで、マエストロが盾で弾き飛ばした魔獣に止めを刺した。


 それから、しばらくして魔獣達は殲滅された。僕、プリマドンナ、マエストロ、それにヴィガディール男爵従者団もそれなりに活躍した。他の騎士達より全然レベルが上なのだから当然だ。僕達を最初に助けてくれた主人公達もなかなかだった。


 でも…。


 なんといっても凄かったのはストレイド王太子とその親衛隊だ。魔獣狩りが終息して僕達が本陣の方に戻ると3人の王の子供達が会話をしていた。


「お兄様のおかげで命拾いしましたわ」

「いや、クリスティナ達も頑張っていたじゃないか」


 ストレイド王太子は優しそうな笑みを浮かべて言った。


「それに比べて」


 ストレイド王太子はアルバート殿下を見た。


「……」


 アルバート殿下は無言だ。どうみても一番活躍できなかったのはアルバート殿下の陣営だ。活躍できなかったどころか多くの騎士を失った。


 だけど、想定外の結果になったと落胆しているのはアルバート殿下だけじゃない。僕もだ。僕達がいればもっとも活躍するのはアルバート殿下の陣営になると思っていた。


 それなのに…。


 ストレイド王太子とその親衛隊の強さは驚いたの一言だが、主人公達の奮闘にも驚いた。僕達は少し自惚れていたようだ。いろいろと考え直す必要がある。

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