7-10(疑惑).
初回クリアの後も俺達はサイクロプスを周回した。一度も帰還の腕輪を使うとこなくクリアできている。その結果、サイクロプスではレベルを上げることが難しくなってきた。
そして、その成果がこれだ!
【レオニード・メナシス 16才】
<レベル> 46
<職業> 最上級重剣士3
<スキル> スラッシュ、二段斬り、ダッシュ、回避、回転斬り、集中(B+2)、雷剣、死線、ガード、挑発
<魔法スキル> 雷弾、天雷
<称号> 雷神の守護者
<武器> 魔剣ソウルイーター(伝説級、特殊効果:HP吸収、補助効果:攻撃速度+5%、攻撃速度+3%)
ガーゴイルの盾(レア級、補助効果:状態異常時間+10%)
<装備アイテム> 力の指輪(一般級)、知恵の指輪(一般級)
【アデレード・アルメッサー 16才】
<レベル> 29
<職業> クレリック5
<スキル> 瞑想、後方回避
<魔法スキル> 炎弾(A+1)、炎槍(A+1)、回復、解毒、大範囲回復
<武器> キマイラの杖(レア級、補助効果:魔法攻撃力+5%、魔法攻撃力+3%、魔法攻撃力+1%)
<アイテム> 知恵の指輪(レア級)、精神の指輪(一般級)
【アルス 16才】
<レベル> 26
<職業> 上級剣士3
<スキル> スラッシュ、回避、回転斬り(A+1)、跳躍斬り、集中、3連撃
<魔法スキル> 風刃(C+1)
<称号> 光の守護者
<武器> サイクロプスの剣(レア級、補助効果:攻撃速度+3%)
<アイテム> 力の指輪(一般級)、光精霊のマント(レア級)
【サラ・フィッシャー 16才】
<レベル> 24
<職業> 上級弓士2
<スキル> 強射、チャージショット(A+1、B+1、C+1)、後方回避
<武器> コカトリスの弓(一般級、補助効果:HP持続回復0.5%)
<アイテム> 必殺の腕輪(一般級)
残念ながら俺とアディのレベルや装備に変化はない。
アルスはレベルが26まで上がった。スキルは『回転斬り』の威力が強化された。威力の高い『3連撃』も持っているのでジギルバルト団長に似たスキル構成じゃないかと思う。できればいろいろと便利な『ダッシュ』が欲しかったが已むを得ない。
それと光精霊のマント(レア級)を装備した。俺はドロップした瞬間、アルスに似合うと思った。俺だけでなくアルス以外の全員が同意見でアルスが着けることになった。魔法防御力を高めるアイテムだが名前は光精霊だろうが闇精霊だろうが効果は同じだ。違いは見た目だけだ。それにしても光精霊のマントを身に着けたアルスはまるで伝説の勇者のようだ。
そして武器がついにレア級になった。補助効果も攻撃速度+3%だからまずまずだ。
サラはレベル24になった。スキルはチャージショットがさらに強化された。『チャージショット』は最大5回まで強化できる主要スキルだが、上級弓士の段階では3回が最高だ。Aはクリティカル率とクリティカル威力を上げる。Bはチャージ時間短縮、CはCT短縮だ。弓士の場合、『迷宮物語』でも主要スキル『チャージショット』を限界まで強化するのが良いとされていた。あとは武器が強化できればいいのだが…。
さて、これからは11階層より下を攻略する予定だ。そしてシルヴィーと挑んで失敗したケルベロスを倒す。これが当面の目標だ!
★★★
「それにしても、私なんかがここまでこれるなんて思わなかったよ」
俺達はいつものメンバーで昼食のテーブルを囲んで雑談をしていた。
「なに言ってんだ。サラは頑張ってるよ」
「レオの言う通りね」
アルスもうんうんと頷いている。
「でも、アルス達のパーティーが10階層をクリアしたって聞くと、なんか差がついたなーって感じるよね」
ステラがふーっと溜息を吐きながら言った。でもステラ達も5階層のボスをクリアして上を目指しているって聞いている。帰還の腕輪がないステラ達は、5階層のボス攻略は教師達に手伝ってもらった。これはステラ達が実力不足なせいではない。実力がない者には教師も手助けしない。死んだらやり直しできないこの世界では当然のことなのだ。だが、このやり方ができるのは5階層のボスまでだ。非常に優秀なパーティーなら学園が帰還の腕輪を貸し出す制度もあるらしい。これは、使わないだろうことを前提とした制度だ。
とにかく特待生でもないステラ達にとっては順調な成長度合いと言っていい。カイル探索者養成学園卒業時点でのレベルは人によってばらつきがある。上は30を越える者から下は10に到達できない者もいる。二年生になったばかりで5階層を突破していれば一般生徒としては優秀な部類だ。
「これが才能の差ってやつデスかね。ちょっとモズ、聞いてるの?」
「うごうぐ……」
デラメアとモーズリーは相変わらずだ。これでも春休みの間にデラメアとモーズリーはお互いの実家を訪問したらしい。俺は二人の幸せを祈っている。そういえば、アルスも春休みはフィッシャー家を訪問していたはずだ。まあ、俺もアルメッサー辺境伯家にお世話になっていた。でも、俺の場合は戦争で大変だったのだが…。
「確かに才能もあるかもしれないけど、アルスとレオニードは今日も朝練してたじゃないか。僕達ももう少し見習ったほうがいいかもしれないね」
イケメンのロジャーが歯をキラリと光らせて言った。ロジャーは下級貴族の息子だが家を継ぐ立場でもなく平民だが可愛らしくて貴重な回復魔法スキルが使えるステラを狙っているみたいだが今のところ功を奏していない。
その時、俺達のテーブルのそばをアルベルトと金魚のフンの二人が通りかかった。
「お前ら、10階層をクリアしたなんて、ほらを吹いてるらしいな」
金魚のフンのうちヒョッロっとしたほうのウィルコックスが絡んできた。いつものことだ。
「嘘じゃないよ」
「お前らがサイクロプスを倒せるわけないだろう。嘘を言うな」
「あなた、誰にものを言っているの?」
ガタっと音を立てて椅子から立ち上がったアディがウィルコックスを睨みつけた。俺は二年生になる時に学園にはレベル15と報告している。俺のレベルはあの時点で45だったわけだが、アディが4大貴族の力でなんとかしてくれた。4大貴族ってやっぱり凄い。
まあ、10階層のボスの攻略適正レベルは20前後、この世界なら25くらいだからウィルコックスが信用しないのもわかる。
「ウィル、止めとけ」
思ったより冷静にアルベルトがウィルコックスを止めた。黒獅子王の時のことが頭にあるのかもしれない。それより俺はもう一人の金魚のフンが気になった。なんだか俺を方をじっと見ていたような気がしたからだ。
その時、俺の頭の片隅に光が差した。俺は重要なことを思い出した。
★★★
俺は授業が終わると「話がある」とシルヴィーに告げた。シルヴィーは頷くと「ついて来て」と言って図書室に向かった。
「放課後はほとんど人がいないんだよ。でも、アデレード様の顔がちょっと怖かったよ」
確かに俺がシルヴィーを誘うとアディの機嫌が悪い。でもちょっと怒ったアディも可愛い。気がついたらシルヴィーが呆れたような顔で俺を見ていた。
「なんか前世と性格が違い過ぎるよね」
「そうかな。俺は前世の自分のことはあまり覚えてないんだ」
「まあ、いいわ。それで話って?」
「ああ、今日、突然気がついたんだけど、アルベルトの金魚のフンの一人がおかしい」
「金魚のフン? ああ、ウィルコックスとピエールのことね。金魚のフンとは言い得て妙だね」
そこで俺はもう一度『迷宮物語』の記憶を確認した。
「正直、ストーリーは『迷宮物語』ではそれほど重要じゃなかった」
「そうだね。中にはストーリーモードをやらないでカンストするプレイヤーもいたくらいだからね。でも、私は割とストーリーには詳しいよ」
「その、ストーリーに詳しいシルヴィーに訊くんだけど」
「うん」
「俺の記憶ではアルベルトの金魚のフンの二人は凸凹コンビだった。合ってるかな?」
「確か…そうだったかな…」
「なのにウィルコックスはヒョロっとしているけど、ピエールは太っていない。中肉中背だ。見方によっては良く訓練された体つきをしている」
シルヴィーは無言で俺を見た。
しばらくしてから「レオの言う通りだよね。あれじゃあ凸凹コンビじゃない」
「ああ、ピエールはマエストロなんじゃないかな」
「マエストロか…消去法で行くとそうなるのかな?」
ラノベなら太ったモブに転生した男が痩せて強くなるなんてよくある話だ。
「マエストロは、ダゴン迷宮でインプレサリオやプリマドンナと一緒にレベル上げをしているはずなんだけど…」
「シルヴィー、ピエールはよく授業を欠席しているよな」
「そう言えば…」
「それに、ピエールは例の全学年合同訓練の時に、一年生なのにアルベルトと一緒にメインパーティーに参加していた。確か盾役だった」
「そうか…」
「もちろん、マエストロ以外の転生者の可能性だってある」
俺は春休みに戦った転生者としか思えないエルロンのことをシルヴィーに話している。
「他のクラン、例えばPVP強者の集まりだった『流浪の傭兵団』みたいな奴らかも知れないってことだよね」
「ああ」
「でも、なんかマエストロの可能性が高そうな気がするよね。私がちょっと調べてみるよ」
シルヴィーはこれでも有力な伯爵家の娘だ。それなりの力を持っている。インプレサリオ達のこともシルヴィーから聞いた。シルヴィーは、インプレサリオのところにプリマドンナとマエストロがいるらしいところまで調査していた。そしてダゴン迷宮を確保していることも。そのシルヴィーにしてマエストロとピエールを結び付けてはいなかった。
「ちょっと、盲点だったよね。でも転生した者はみんな同じ年みたいだから私達以外にも学園にいてもおかしくないよね」
「ああ」
とりあえずピエールの調査はシルヴィーに任せよう。平民の俺にできることはない。
「シルヴィー、あいつ俺のことをじっと見ていたんだ。なんでだろう?」
「ああ、それならわかるよ。あいつがマエストロなら、たぶんレオのことを主人公だと思ってるんじゃないかな」
俺が主人公…?
「そうだよ。レオ達は入学してすぐ迷宮で真神に遭遇した。あれってチュートリアルでしょう?」
確かに…。
「それに、そもそも最初のエイクリー先生の実践授業で平民なのにレオが一番善戦したんでしょう? ちょっとした話題になってたよ。『迷宮物語』を知っている者なら誰だってレオが主人公だと思うよ。私も疑ってたもん」
「そういうことか…」
そういえば、ヴィルトゥオーゾも俺を主人公だと勘違いしていた。
「そういうことよ。主人公は私達元プレイヤーと同じで限界までレベルを上げる素質を持っている。もしかしたらインプレサリオ達はそんな主人公が邪魔だと思っているのかもね。気をつけたほうがいいよ」
「まさか、危害を加えるなんて…」
「レオ、甘いわよ。あいつらはこの世界で覇権を握るなんて言ってるんだよ。未だにゲームをやってるつもりなんだよ。だから私はあいつらの仲間にはならなかった。そんな奴らならゲームのNPCを殺すくらいわけないよ」
この世界をゲームだと思っている。主人公やアディ達を未だにNPCだと思っているのか…。
馬鹿な…。




