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7-9(10階層サイクロプス).

 俺達のパーティーはアディが上級職のクレリックになったことでついに回復役も揃ってバランスの良いパーティーになった。アディは神官より回復力が劣るクレリックではあるがレベルが29もある上に、ガガス迷宮のボスから得た『大範囲回復』を持っている。


「いよいよボス戦ね!」


 アディが力強く宣言した。アルスとサラも既に上級職になっている。アルスがレベル23の上級剣士で、サラはレベル21の上級弓士だ。アディがレベル29で俺が46だ。ザルバ大迷宮の10階層のボスはサイクロプスだ。『迷宮物語』での攻略適正レベルは20前後、この世界では25くらいだ。俺はシルヴィーと二人でクリア済みだ。


 まず、大丈夫だと思う。


 さらにアディがサイモン様に頼み込んで帰還の腕輪を2つ用意した。これで、もともとアディとアルスが持っていた分もいれて4人分の帰還の腕輪が揃ったことになる。


「帰還の腕輪は4つしかない。これは保険だ。実際に使ってしまったら次はない。チャンスは一回だ」


 俺の言葉に全員が大きく頷いた。帰還の腕輪が一個ずつしかない以上、一回で成功させる!


 俺達はゆっくりとボス部屋の扉に近づいた。扉は低い音を立てて両側に開いた。この光景を見るのは何度目だろうか?


 俺はボス部屋に飛び込む。


「『ダッシュ』!」


 ダッシュで間合いを詰める。さらに…。


 ドン!!


「『回避』!」


 両腕を床に叩きつけるサイクロプスの攻撃を『回避』で避けながらサイクロプスの背後に回り込んだ。


「『挑発』!」


 サイクロプスは俺の方に振り向いた。そしてアルスを先頭にサラ、アディと3人がサイクロプスの背後から近づく。


「『跳躍切り』!」


 アルスが背後から『跳躍斬り』で大きくジャンプして3メートルはあろうかというサイクロプスを上段から斬りつけた。どうやら『集中』も使っているようだ。


「グガアァァ!!」


 ぶーん!!


 サイクロプスはアルスの『跳躍斬り』の硬直効果をレジストしたようで両手を大きく振り回して攻撃してきた。


 ガシュ!


「うぐっ!」


 アルスは『跳躍切り』から『回転斬り』のコンボを狙っていたようだが、硬直しなかったのを見て素早くサイクロプスの背中を蹴って距離を取ろうとした。だが、サイクロプスが振り回した腕がアルスに掠ってしまった。


 ゴロゴロと床を転がったアルスに、アディがすぐに近寄るとすぐに『回復』を使った。アルスは「ありがとう」と言いながらすぐに立ち上がる。


「『集中』、『雷剣』!」


 俺は『集中』と『雷剣』を発動すると、すぐに『スラッシュ』でサイクロプスに攻撃した。サイクロプスも反撃してきたが、魔剣ソウルイーターで何度か撃ち合っているうちに『雷剣』の効果で硬直した。ボスは状態異常耐性が高いが俺のレベルも高い。


「『チャージショット』!」


 硬直したサイクロプスにサラが『チャージショット』を放つ。俺も盾で防御しながらも雷属性を纏った魔剣ソウルイーターで攻撃してタゲを維持する。


「『3連撃』!」

「『炎槍』!」

「『強射』!」


 俺がタゲを維持し続けているので残りの3人が背後から次々に攻撃する。アルスはさっきの反省を活かして両手振り回し攻撃を警戒しながら足を狙って戦っている。


 ただ、それでも、サイクロプスが腕を振り回したり足で踏みつけたりする度にアルスはある程度のダメージを受けている。これはアルスの技術が劣っているからではない。例え盾職がタゲを維持していてもボスに張り付いて戦う近接職というのはある程度のダメージを受けるのが普通なのだ。盾を持ちアルスより遥かにレベルの高い俺でさえ全くダメージを受けていないわけではない。


 しばらくそんな攻防が続いた後、アディが「『大範囲回復』!」と俺とアルスの足元に持続回復エリアを出現させた。『大範囲回復』は『範囲回復』の強化版だ。本来は『範囲回復』自体専門職の神官かクレリックの上位である賢者でないと覚えられない。アディはこれをガガス迷宮のボスから授けられた。


 ちなみに迷宮の魔物がこの回復エリアに入っても回復はしない。


 俺とアルスのHPは徐々に回復する。俺のほうはもともと魔剣ソウルイーターの効果もあり大して減っていなかったので、すぐに全回復した。


 これまでのところ順調だ。


「『雷弾』!」

「グガアァァ!!」


 今度は『雷弾』でサイクロプスを硬直させる。


「『チャージショット』!」

「『炎槍』!」

「『回転斬り』!」


 俺がタゲを取り時々硬直させながら3人が側面や背後から攻撃するというパターンが続く。俺のレベルが高いのでほぼ硬直は成功している。それでも、これだけレベル差があっても偶にレジストされるんだから迷宮ボスの状態異常耐性は高い。


「『挑発』!」


 俺はCTの度に『挑発』を使う。攻撃も挟んでタゲを手放さない。ガガス迷宮での経験もあり自分でも盾職として様になってきたと思う。


「来るぞ!」


 サイクロプスの一つ目が怪しく光る。


 ゴオオオオオォォォーーー!!!


 目からレーザービームのようなものが発射された。これは『ガード』できない攻撃だ。『回避』のほうは有効だ。


 サイクロプスはビームを発射したまま時計周りに回転する。俺達は時計周りに走ってレーザーから逃げる。だが、レーザーの回転するスピードのほうが速い。アディとサラは徐々にサイクロプスに近づく。内側のほうがレーザーの動くスピードが遅いからからだ。だが、内側過ぎても避けにくい。俺達は適当な距離でサイクロプスの周りを回ってレーザーから逃げる。俺達にレーザーが迫る。


「『回避』!」


 俺は『回避』でレーザーを跨ぐように避けた。成功だ!


「『回避』!」


 アルスも成功した!


「『後方回避』!」

「『後方回避』!」


 並んで逃げていたアディとサラが同時に『後方回避』を使った。


 成功だ! いや、レーザーが掠ったのかサラが苦しそうだ。


「油断するな!」


 俺は叫ぶ!


 レーザーはまだ終わっていない。


「『回復』!」


 アディがレーザーから逃げながらサラに『回復』を使う。回避系スキルにも当然CTがある。続けて使えないから逃げ続ける必要がある。しばらくするとやっとレーザーでの攻撃が終わった。2回目の『回避』を使う前に終わって良かった。俺は盾職にしては移動速度が速い。


 レーザーによる特殊攻撃も終わり、俺がタゲを取りみんなが背後や側面から攻撃するパターンに戻る。そして2回目のレーザーを無事乗り切り、順調にサイクロプスのHPを削っていく。


 サイクロプスは10階層のボスだ。10階層までは比較的難易度が低いのだ。こんなところで足踏みをするわけにはいかない。


 そして…ついにそれが来た。


 サイクロプスが足をドンドンと踏み鳴らす。そして「ぐおぉぉぅーー!!!」と叫ぶとまるでゴリラのように胸を反らした。


 狂乱状態だ。


「『天雷』!」


 バリバリバリバリ!!!!


 無数の光の筋がサイクロプスに降り注ぐ。狂乱状態は危険であると同時にチャンスでもある。

 狂乱状態になったサイクロプスにはとても危険な全体攻撃がある。両手を広げて独楽のように回転して襲ってるやつだ。『ガード』も『回避』系スキルも有効だが非常に動くスピードが早くて避けるにはかなりの技術がいる危険な攻撃だ。


 じゃあ、どうするのか? 


 簡単だ。その全体攻撃が来る前に一気に倒す。それだけだ。『迷宮物語』でもほとんどのプレイヤーがそうしていた。ある意味、時間との闘いなのだ。

 そして、俺はそのために『天雷』を温存していた。俺は魔法職ではないのでMPの関係で『天雷』を何度も使えない。だが、レベルの高い俺が放った最上級魔法スキル『天雷』によってサイクロプスのHPは一気に削られたはずだ。


「みんな今だ!」


 俺は叫ぶ!


 天雷の効果で硬直したサイクロプスにアルスが斬り掛かった。


「『3連撃』、『跳躍斬り』、『回転斬り』!」


 アルスは硬直しているサイクロプスに『3連撃』から入って、さらに『跳躍斬り』で硬直させて『回転斬り』に繋げた。アルスの剣技はもともと高かったがさらに上達している。さすが主人公だ。


 今回は『跳躍斬り』の硬直効果も発動した。アルスのレベルからすると狂乱状態のサイクロプスに硬直が発生したのは運がいい。


 さすが主人公だ!


 それでもアルスは『回転斬り』を放ちながら硬直の解けたサイクロプスからダメージを受けている。だが…。


「『回復』!」


 アディがすかさずアルスを回復した。やっぱり回復役がいると違う。シルヴィーと二人の時はかなり危なかった。


 俺は『集中』と『雷剣』を発動すると、すぐに得意のコンボでアルスに続いた。


「ぐおぉぉぅーー!!!」


 サイクロプスは苦しんでいる。


 もう少しだ!


「『跳躍斬り』!」

「『炎槍』!」


 サイクロプスが膝をつく。アルスは『集中』をアディは『瞑想』をCT毎に使っている。


「『チャージショット』!」


 よし! 


 サイクロプスは最後に「ぐぅぅぅーーー!」と上を向いて力なく叫ぶと、ついに、魔石に変わった…。


「やったわね!」


 アディの言葉に「やったね!」とサラが返し、俺とアルスは力強く頷いた。


 上手くいった。


 誰かが瀕死になる場面もなかった。狂乱状態になった後の危険な全体攻撃が来る前にHPを削り切った。


 予定通りだ。


 やはりパーティー構成は大事だ。俺やアディのレベルは適正より高かった。10階層のボスまでは比較的難易度も低い。それでも1回でクリアできたことは少しは誇ってもいいのではないだろうか?

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