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7-8(アディ、クレリックになる).

 しばらくの間、アースドラゴンを討伐した安堵で全員がその場にへたり込んで休憩していた。隣のアディを見るとアディも俺を見ていたのか目が会った。今回は俺のせいで危険な目に合わせてしまった。アースドラゴンが俺のレベルを基準に出現した魔物だとするとレベル45の4人パーティーでちょうどいい強さだったはずだ。


「それでアディ、レベルは?」


 俺は小声で尋ねた。


 アディはよくぞ訊いてくれましたといった満面の笑みで「なんと11も上がって29になったわ」と言った。


 レベル29か…。思ったより上がっている。


 アースドラゴンは俺とシルヴィーが失敗したケルベロスよりもレベルは上だったはずだ。ただ、特殊攻撃の種類は少なかった。必ずしもケルベロスのほうが難易度が低いとはいえない気がする。

 それはそうと、ボス戦では一定の経験値がパーティー全員に配分される。したがって、レベルアップに必要な経験値が少ない低レベルの者ほどレベルが上がりやすい。しかし、この世界では人によって才能に違いがある。誰でも同じようにレベルが上がるわけではない。そして、おそらく俺やシルヴィーのような前世がプレイヤーだった者はレベルが上がりやすい。たぶん主人公と同じ扱いだ。


 アディはどうなんだろう…。


 本来死んでいるはずのアディだが、これまでのところ順調にレベルアップしている。まあ、考えても仕方がないか…。『迷宮物語』の中でさえ、厳しい条件でクリアすると経験値にボーナスがつくとか、いろいろ言われていて取得経験値の正確な計算方法は判明していなかった。


「ねえ、レオも上がったんじゃないの? 私たちドラゴンを倒したのよ」

「うん。一つだけど上がってた」

「一つか…。でもよかったわ」


 『迷宮物語』ではレベルを上げるために迷宮を何度も周回したものだ。いくらアースドラゴンを討伐したからといって1回でどんどん上がるもんじゃない。一つでも上がってよかったのだ。


「それでアディ、肝心のスキルは?」


 この迷宮のボスは普通のボスと違って魔石以外何もドロップしない。その代わりスキルを授けてくれる。要するに御遣様なのだ。ただし、普通の御遣様と違って貰えるスキルを選択できる。


「ええ、それなんだけど、ずいぶんたくさんスキルが並んでるの。見て」

「ちょっと待って、アディ。一旦迷宮を出てからゆっくり見せてもらうよ」


 そろそろ行くかとジギルバルト団長が立ち上がったのを合図に俺達はガガス迷宮を出た。1階層しかないガガス迷宮だが他の迷宮と同じように転移魔法陣はある。入り口付近の安全地帯に戻った俺とアディは、ジギルバルト団長とレナードさんに改めてお礼を言うとがっちりと握手をして別れた。





★★★





 俺とアディはガガス迷宮から王都カイルに戻ってきた。今いるのは王都カイルにあるアルメッサー辺境伯の屋敷の一室だ。4大貴族だけあってカイルの屋敷も城のように大きい。この辺りは上位貴族の屋敷ばかりある辺りで普段の俺には縁のない地区だ。


「アディ、それじゃあ、選択できるスキルを見せてもらえる」

「いいわよ」


 ステータスは本人が許可すればホログラムのように浮かび上がって他人にも見せることができる。




 …… 『スラッシュ』、『ガード』、『強射』、『氷弾』、『岩弾』、『風刃』、『回復』、『浄化』、『解毒』、『炎弾強化A』、『岩壁』、『攻撃威力上昇』、『クリティカル率上昇』、『岩石錐』、『大炎爆陣』、『大範囲回復』……



 16個ものスキルが並んでいる。剣や盾、それに弓を使うスキルまである。クリスティナ王女が言った通り、ほとんどが初級スキルだ。だが、『大炎爆陣』と『大範囲回復』の2つは上級だ。ちなみに『大炎爆陣』はジギルバルト団長が使った最上級炎属性魔法スキル『超炎爆陣』の下位スキルだ。残念ながら、クリスティナ王女の時のような最上級スキルは表示されていない。それでも2つ初級じゃないスキルが表示されたのは倒したのがアースドラゴンだからだろう。そう考えるとクリスティナ王女はめちゃくちゃ運がいい。まあ、『迷宮物語』での設定なんだろうけど…。


「この中だと『大範囲回復』だな」

「これって上級回復魔法スキルよね?」

「ああ、でも普通の上級魔法スキルより価値がある。ちょっと特殊なんだ」

「それって、どういう意味なの?」

「まず『範囲回復』自体上級なんだ。上級職の神官で取得できる。そして、運が良ければ神官の間に一回強化できる。それが『大範囲回復』だ」

「そうなんだ。言われてみれば僧侶で範囲回復魔法スキルを使ってる人は見たことがないわ。『範囲回復』自体が上級ってことなのね」

「ああ、それで『大範囲回復』も上級職である神官の間に手に入れることが可能だから上級といえる。でも同じ上級職でもクレリックは『範囲回復』自体取得できない。クレリック系だと最上級職の賢者になって始めて『範囲回復』を取得できるんだ。ちなみに『範囲回復』を2段階強化した『超範囲回復』は最上級職でも回復専門職である聖者や聖女にならないと手に入らない」

「なるほど。『大範囲回復』は上級だけど、その中でも価値があるってことね」


 アディは腕を組んでうんうんと頷いている。本当に分かったのだろか…。


「『範囲回復』って中に入ると一定時間持続的に回復するサークルを出現させるんだったわよね」

「ああ。通常の回復魔法スキルと違って一度に回復するわけじゃない代わりにサークルの中に入りさえすれば何人でも回復できる」


 サークル内に入りさえすれば恩恵を受けることができるので大規模PVPでも非常に役に立った回復魔法スキルだ。


 ちなみに、スキルは強化できるものとできないものがある。強化できるものも強化できる回数に違いがある。さらに強化すると『炎弾A+1』のように表示されるスキルもあれば『範囲回復』から『大範囲回復』みたいに名称が変わるスキルもある。 


「『回復』よりこっちだよね」

「ああ、『回復』は回復系の職になれば一番に覚えると思う。だから『大範囲回復』一択だ。それにさっき言ったように、そもそもクレリックでは範囲回復系の魔法スキルは覚えられないしな」

「わかったわ」


 魔法使いのアディにとっては『大炎爆陣』も魅力的だった思う。アディは『炎爆陣』を持っていないから範囲攻撃魔法は魅力的だったはずだ。だけどアディはクレリックになると決めている。そのためには回復系の魔法スキルを覚える必要がある。アディは俺の言葉に即決すると、あっという間に『大範囲回復』を選択した。


「えっと、あとは職の選択ね。レオ、やったわ!」


 アディが満面の笑みを浮かべて俺を見た。


「『大範囲回復』を覚えたら上級職の選択肢に上級魔法使いのほかにクレリックが表示されたわ。レオの言う通りだったわね。これを選べばいいのよね。よしっと」


 アディは決断が早い。


「レオ、見て!」




【アデレード・アルメッサー 16才】


 <レベル>   29

 <職業>    クレリック5

 <スキル>   瞑想、後方回避

 <魔法スキル> 炎弾(A+1)、炎槍(A+1)、回復、解毒、大範囲回復

 <武器>    キマイラの杖(レア級、補助効果:魔法攻撃力+5%、魔法攻撃力+3%、魔法攻撃力+1%)

 <アイテム>  知恵の指輪(レア級)、精神の指輪(一般級)



 予想通り基本的な『回復』は覚えている。それにやっと『後方回避』を覚えた。後衛職の基本的なスキルだから、いつかは覚えると思っていたが…よかった。アルスやサラ達とこれから15階層を目指すと考えると『解毒』を覚えたのも運が良い。クレリックなのに『大範囲回復』を持っているので回復役としての能力もかなり高い。あとは『回復』を『大回復』にしておきたいのと『浄化』が欲しいくらいだ。ちなみに選択肢に出ていた『攻撃威力上昇』とか『クリティカル率上昇』とかは一時的に他人の能力を上げるバフスキルだ。バフをかけるのも回復役の役目だ。バフスキルはレナードさんも使っていたし黒獅子王との戦闘前にクリスティナ王女が俺にかけてくれた。アディはバフスキルは覚えていない。その代わり攻撃魔法が使えるんだから十分だ。


「これで私たちのパーティーも完璧ね」

「ああ、凄くいいスキル構成だと思うよ」

「さすが私だわ」


 アディの元気な顔を見ると俺も嬉しくなる。


「レオ、どうしたの?」

「い、いや、元気なアディは可愛いなと思って…」

「まあ、レオったら、そんな当たり前のことをいまさら…」


 そういいながらアディの顔は少し赤い。


 アディはそれを誤魔化すように「それより、アルスやサラ達と早く迷宮に入りたいわ」と話題を変えた。


 これで、アルスやサラと一緒にザルバ大迷宮の攻略を進めることができる。とはいえ、油断は禁物だ。それに帰還の腕輪を揃えなければ。


「とりあえず、お父様にレオとサラの分の帰還の腕輪を頼んでいるの」


 アディが俺を心を読んだように言った。4人で迷宮攻略を再開するのが待ち遠しい。とてもバランスのいいパーティーになると思う。帰還の腕輪が手に入ったら10階層のボスだけでなく、シルヴィーと一緒に攻略しようとして失敗した15階層のケルベロスをクリアしたい。


 楽しみだ!

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