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7-7(アースドラゴン2).

「グウオオォォォーーーン!!!」


 アースドラゴンがひときわ大きくそして長く咆哮した。アースドラゴンがまさに狂ったように暴れ回って攻撃してきた。


「『ガード』!」


 俺は盾を構えて攻撃を受ける。しかし『ガード』の無敵効果は2秒しかない。そこからは盾を構えていても一定のダメージは受ける。


 俺は歯を食いしばってアースドラゴンの攻撃に耐える。アースドラゴンが突然大きくジャンプした。


 ランダム攻撃だ!


 予備動作が速すぎてさっきのように事前に防ぐことはできなかった。俺は「回避スキルだ!」と叫んだ。


 なんと狂乱状態時のランダム攻撃は1回だけじゃなかった。ジギルバルト団長が『回避』で避けた後も次々とパーティーメンバーに攻撃を仕掛けてくる。 


「『後方回避』!」


 レナードさんがジギルバルト団長に続いてランダム攻撃を回避した。だけど…アディはまだ『後方回避』を取得していない。


「アディィィィーーー!!!」


 くそー! 間に合ってくれー!! レベル19のアディがこれを食らったら…。俺は盾を投げ捨ててアディの前に滑りこんだ。


 ドーン!


 大きな音を立てて俺とアースドラゴンが激突した。


「レオー!!」


 俺は頭から血を流しながら魔剣ソウルイーターでアースドラゴンを押すようにして立ち上がった。背後にいるアディは無事だ。


 よかった…。


「『大回復』!」


 レナードさんがすかさず『大回復』を使ってくれた。しかし、完全には回復しない。『大回復』でも完全に回復しないとは、かなりのダメージを受けたようだ。


「レオ、大丈夫なの?」

「このくらい全然平気さ」

「レオ…」


 アディが心配そうな声を出した。


 くそー! こんなところでやられてたまるか! 俺はアディの普段の通りの元気な声を聞きたいんだ!


「『雷弾』、『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』、!」


 ここまでタゲを維持することを重点において戦ってきた俺だが、『雷弾』から得意のコンボ攻撃を使った。幸い今は『集中』の効果が継続中だ。それに盾を持っていないのでスピードも増している。


 いけるか? ギリギリだが…。


「『回転斬り』!」


 俺は思わず大声で叫んでいた!


 よし! 繋がった!


 『回転斬り』までいけるかはギリギリだった。『回転斬り』は始動モーションが大きいからだ。『回転斬り』は一度発動すると発動中はスーパーアーマー効果があるので中断されない。『回転斬り』は3回ヒットする。ここまでコンボが繋がれば『回転斬り』は相当な威力になっている。


「グギギギィィィィーーー!!!」


 俺のコンボ攻撃でアースドラゴンが苦しそうな悲鳴を上げた。狂乱状態の時は防御力が低下しているのだ。


「ぐうああぁぁーー!!」


 一方、俺のほうも悲鳴を上げた。い、痛い…。


 めちゃくちゃに暴れているアースドラゴンの尻尾だの顎だの前足などが俺に激突する。俺は『回転斬り』を打ち終わるまでひたすら耐える。スーパーアーマーは状態異常への耐性があるだけで無敵ではない。


 もう『死線』が使えるほどHPが減っている。


「ううぅぅ……」


 『回転斬り』も終わり、俺はなんとか魔剣ソウルイータで防御しようとするが、盾も持っておらず、暴れ回るアースドラゴンに対してほぼ滅多打ちの状態だ。い、意識が…。


「レオー!!!」


 アディの悲鳴が、ずいぶん遠くから聞こえる…。耳をやられたのか?


「アデレード様、だめだ!」


 微かにレナードさんの声が聞こえる。俺のそばに来ようとしているアディを止めているのか…。二人を庇うように立っているジギルバルト団長の姿も霞んでいる。


 ああ…意識が遠のく…。


 『死線』を使うにしても、一旦、距離を取らなければ…。このままでは、すぐにHPがゼロになりそうだ。


 だ、ダメだ…。


 俺は膝をついて、手で頭を覆った。アースドラゴンの顎から頭を守るためだ…。 


「『超炎爆陣』!!」


 突然、アースドラゴンの下から炎が吹き上がった。そうだった。ジギルバルト団長は御遣様から最上級の炎属性魔法スキルを取得していたんだった。


「ぎゃあぁぁぁぁーーーー!!!!」


 アースドラゴンは俺を叩き潰すのを中断して頭を持ち上げると大きな悲鳴を上げた。


「うおおぉぉぉーーー!!」


 ジギルバルト団長は気合とともにアースドラゴンに突進した。


「『3連撃』、『回転斬り』!」


 ジギルバルト団長はダメージを受けるのも構わず『3連撃』、『回転斬り』と威力の高いスキルを連発した。どれも威力は高いがモーションも大きく隙も多いスキルなので暴れまわるアースドラゴンの攻撃を受けてジギルバルト団長はあっという間に傷だらけだ。それでも攻撃自体が中断されなかったのはジギルバルト団長の技術が高いからだ。なおもジギルバルト団長は攻撃の手を緩めない。鬼気迫るとはこのことだ。


「『攻撃速度上昇』!」


 レナードさんがジギルバルト団長をバフをかける。 


「レナード、CTが空けたらレオニードを回復しろ!」

「『炎弾』、『炎槍』!」


 アディも少し離れたところから魔法攻撃スキルを使う。


(『死線』!)


 俺はアースドラゴンの注意がジギルバルト団長に向いている間に、心の中で『死線』と叫んだ。体の中から力が漲ってきた。だけど、苦痛が収まるわけでも怪我が治るわけでもない。


「『大回復』!」


 CTが空けたのかレナードさんが『大回復』を使ってくれた。ありがとうございます。アディの心配そうな顔が見える。さっきより視界がはっきりしてきた。


 『天雷』を使うべきか…。いや、これはパーティー戦だ。それに、このままではジギルバルト団長が…。


 俺は『死線』で倍になったステータスで素早く移動するとさっき投げ捨てた盾を拾った。


「『挑発』!」


 俺はヘイトを稼ぐため『挑発』を使う。狂乱状態の時には効きずらいのだが、俺のステータスは『死線』のおかげですべて2倍になっている。アースドラゴンがこっちを向いた。


「『跳躍斬り』!」


 ジギルバルト団長はその隙を見逃さず、背後から飛び掛かった。


 グワッシュ!


 『跳躍斬り』が見事のアースドラゴンの脳天を直撃した。


「『3連撃』!」


 上手い!


 『跳躍斬り』で硬直したところへ『3連撃』が決まった。剣が少し光ったような気がしたのでクリティカルが発生したのかもしれない。


「『雷弾』!」


 俺は『雷弾』でジギルバルト団長を援護した。雷弾の効果でアースドラゴンが硬直している間にジギルバルト団長の『3連撃』の打ち終わりの硬直が解けた。


「『剛剣』、『スラッシュ』!」


 ジギルバルト団長はすぐに次の攻撃に移る。『剛剣』も硬直効果のあるスキルでコンボになっている。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 俺も得意とするコンボでジギルバルト団長に続いた。


 タゲは手放さない!


 ジギルバルト団長も俺もボロボロだ、だが、アースドラゴンのほうも瀕死だ。 


「ジギルバルト団長、待ってください!」


 それから間もなく、俺はジギルバルト団長を止めた。俺の声にジギルバルト団長は攻撃を中断して距離を取った。


「アディ、止めを」

「わかったわ。『炎槍』!」


 アディの頭上に現れた魔法陣から巨大な炎の槍が発射されて瀕死のアースドラゴンの眉間を貫いた。


「ぎゃうああぁぁぁーーーーーーー!!」


 アースドラゴンは悲鳴を上げた。そして…それもだんだん小さくなり、やがて魔石に変わった。


「レオ、血だらけよ」

「うん。でも大丈夫だよ。レナードさんが回復魔法スキルをかけてくれたし…。俺よりジギルバルト団長が…」


 見るとレナードさんがジギルバルト団長に『大回復』をかけている。俺もアディが渡してくれた中級ポーションを飲んだ。


「ふーっ」


 俺が大きく溜息を吐いていると、ジギルバルト団長がポンと俺の肩に手を乗せて「ここに来た本来の目的を忘れていたよ」と言った。とてもいい場面なんだろうけどジギルバルト団長も俺もボロボロだ。防具は傷だらけだし頭や腕には血がこびりついている。俺は、なんだかおかしくなった…。


「ん?」


 ジギルバルト団長が不思議そうに首を傾げた。


「それにしても…。レオニードは強すぎですね」

「レナードの言う通りだな。自分が世界最強だなんて自惚れていたようだ。それに見たこともないスキルを使っていた」


 魔剣士の時に取得した『雷剣』のことだろうか?


「いえ、団長の魔法スキルも凄かったです」


 実際同じ最上級魔法スキルでも、こと威力に関しては結局使わなかった俺の『天雷』より『超炎爆陣』のほうが上だ。


「うーん、それよりも剣技を褒めてもらったほうが嬉しいのだがな」

「いえ、そういう意味では…」


 実際最後の鬼気迫る剣での攻撃もさすがだった。『迷宮物語』の知識があるとかレベルが上がったからといって、まだまだ見習うべきものはある。この世界の人達だって必死で訓練しているのだ。


「ハハ、冗談だ。なんにせよレオニードのおかげで命拾いしたな。レオニードが盾役を見事にこなしてくれたから討伐できた」


 ジギルバルト団長は人の良さそうな笑顔を見せた。やっぱりパーティーでの連携は大切だ。俺もそのことを改めて実感した。


「それでジギルバルト団長、今日のことは…」

「わかっている。秘密にする。ただ、クリスティナ王女にだけは報告したい」


 クリスティナ王女は俺達がガガス迷宮に入れるように手配してくれた。


「それで結構です」


 ジギルバルト団長は頷くと「レナードもいいな」と言った。


「もちろんです。みなさんは命の恩人です。普通なら俺なんか簡単に死んでましたよ。それにね」


 そこでレナードさんは声を潜めると「俺、結構レベルが上がったんですよ」と言った。


 なるほど、レナードさんのレベルが30前後だとするとアースドラゴンを討伐したらレベルが上がるだろう。ただ、この世界の人は『迷宮物語』のプレイヤーのようにいくらでもレベルが上がるわけじゃない。まあ、レナードさんも喜んでいるようなのでよかった。


「レオニード、俺は世界最強だなんて言われてまんざらでもなかったんだが…。ザルバ大迷宮の20階層を最初にクリアするのはお前達かもしれないな」


 この世界では20代半ばをすぎるとレベルがどんどん上がりづらくなる。もう30代のジギルバルト団長がこれ以上レベルを上げるのは難しいだろう。


「ジギルバルト団長、俺が言うのもおこがましいんですが、強さとはレベルだけじゃありません。スキルを組み合わせる技術、発動するタイミング、それに身体能力だってレベルだけで決まるわけじゃあありません」

「レオニード…。そうだな。今日のお前の戦い方を見て俺もそう思ったよ。お前のような若者に励まされるとは…。まあ、なんだ、俺もまだまだ成長できるってことだ」


 ジギルバルト団長は『迷宮物語』のストーリーでは主人公の前にラスボスとして現れて命を落とす。それにはジギルバルト団長の想い人であった王妃の暗殺とトガムゼの呪いが関係している。


 トガムゼの呪いとはこんな話だ。


 ファミール王国はもともとリアブルク連合国よりさらに北の地からこの地へ進出してきた民族によって作られた国だ。ファミール王国建国にあたって、もともとこの地に住んでいた民族は酷く残虐な方法で根絶やしにされたと伝えられている。その先住民の王がトガムゼである。以来トガムゼはファミール王国を呪っている。その呪いは数百年に一度、ファミール王国に大きな災厄をもたらす。前回は賢王ウルザルが気のふれた側近に殺された事件がそうだと言われている。


「男同士っていうのもいいわね…」とアディが呟いた。


 とりあえずアディと二人きりになってアディのレベルや取得できるスキルなんかを相談しなくては…。特殊な御遣様でもあるアースドラゴンに止めを刺したアディはレベルが上がっているのはもちろん、スキルを取得できるはずだ。


 こうして俺達のガガス迷宮攻略は完了した。

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