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7-6(アースドラゴン1).

 俺のレベルはジギルバルト団長と並んで4人の中では高い。その俺を基準にボスの強さが決定されたとすれば、俺達4人パーティーにとってアースドラゴンは格上ということだ。


 特に、レベル19の魔法使いのアディが少しでも攻撃を食らったらまずい。


「アディ、常にアースドラゴンから距離を取るんだ。アースドラゴンは見かけと違って素早いから絶対に目を離しちゃだめだ」


 アースドラゴンはファイアードラゴンやアイスドラゴンと違ってブレス攻撃がない。空も飛べない。この部屋にも特別なギミックがないとすれば距離を取っていれば安全だ。とはいえ、ブレスがなく飛べない代わりにアースドラゴンが地上を移動する速度は凄く速い。


「わかったわ」


 アディは俺の言葉に落ち着いて返事をした。


「本物のドラゴンを見られるなんて運が良いわね」


 アディはアースドラゴンを睨みつけながら言った。この中で一番レベルが低いアディだが、俺を心配させないように強気な態度を保っている。


 その時、ジギルバルト団長が前に出た。団長はこの中で自分が一番レベルが高く自分がなんとかしないといけないと思っているのだろう。


 グワシャ!!


 「がはっ!」 


 ぶーん、風が吹いたと思ったら、鈍い音がしてジギルバルト団長が床を転がって5メートルくらい飛ばされた。


 もの凄い速さでアースドラゴンが身体全体を一回転させて攻撃してきたのだ。いきなりこれが来たか…。これは全体攻撃の一種だ。多くのボスが似たような攻撃をしてくる。ジギルバルト団長以外は、まだボスに近づいていなかったので難を免れた。


 俺の目にはジギルバルト団長がとっさに剣で防ごうとしたのが見えた。だが、ジギルバルト団長は剣を持ったままアースドラゴンの尻尾に弾き飛ばされた。当然だ。ジギルバルト団長は最上級剣士であって盾職ではない。今のは盾職が受け止めるべき全体攻撃だった。


「ううぅぅー!」

「ジギルバルト団長!!」


 レナードさんが叫ぶ。その声には恐怖の色が混じっている。当たり前だ。世界最強と信じているジギルバルト団長があっという間にダメージを負ったのだ。


「『大回復』!」


 レネードさんはジギルバルト団長に駆け寄って『大回復』を使った。レナードさんは『大回復』を持っているようだ。『回復』は強化されるたびに『大回復』、『超回復』と名前を変える。クリスティナ王女が持っている『超回復』は最上級回復魔法スキルであり、かなりの大怪我にも効果がある。ちなみに伝説級は『神回復』で四肢の欠損すら治せると言われている。


「『挑発』!」


 俺は、ジギルバルト団長に代わって前に出るとすぐに『挑発』を使った。『挑発』はヘイト(憎しみ、敵対心)を稼いでタゲ(目標となる)を取るスキルだ。実は回復魔法スキルを使うとかなりヘイトを稼いでしまうのだ。盾役が慣れていないと回復役がターゲットになって大惨事になるのはゲームでもありがちなことだ。


 『挑発』の効果で俺を目標に定めたアースドラゴンが頭を振り下ろすようにして攻撃してきた。


「『ガード』!」


 ガシッ!!


 俺は『ガード』でアースドラゴンの巨大な顎を受け止めた。もの凄い衝撃だが両足を踏ん張って耐えた。それでも少し後ろに下がっている。『ガード』は最初の2秒間は無敵効果があるのでダメージは受けていない。すぐに『シールドバッシュ』で反撃したいところだが俺は持っていない。


 その代わり…。


「『雷弾』!」


 バリッ!


 俺は『ガード』しながら『雷弾』を使った。『雷弾』は初級魔法スキルだ。ドラゴンの中でも特に耐久力のあるアースドラゴンはほとんどダメージを受けていない。それでも、アースドラゴンは硬直している。どうやらレジストはされなかったようだ。正直運がいい。ボスはたいてい状態異常耐性が高く設定されている。それともボスの中では状態異常耐性がそれほどでもないのか…。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 俺は得意のコンボ攻撃をすると、すぐに距離を取った。その間にアディがすかさず『炎弾』と『炎槍』で追撃する。


「うおっ!」


 気がついたら目の前にアースドラゴンの鋭い牙が覗いた顔が迫っている。思った以上に速い。


「『回避』!」


 今度は『回避』を使ってゴロンと転がるようにアースドラゴンの噛みつき攻撃を避けた。ガシッとアースドラゴンが歯を噛みわせた音がした。


 危なかった…。


 息つく暇もなくアースドラゴンは今度は素早い動きでアディの方に移動している。


「『挑発』!」


 CTの空けた『挑発』をすぐに使う。アースドラゴンはアディから俺に目標を変えると、また俺に迫ってきた。


「アディ、『瞑想』を使うんだ!」

「わかったわ。『瞑想』!」


 これでアディの知力と精神は1.2倍になった。


「『雷剣』!」


 俺は『雷剣』を使って剣に雷属性を纏わせた。


 ガキッ!


 あっという間に俺に迫ったアースドラゴンの牙と魔剣ソウルイーターが激突して火花を散らした。この後すぐに体を捻って尻尾で攻撃してくるのがアースドラゴンの攻撃パターンの一つだ。


 だが、アースドラゴンは尻尾攻撃をしてこない。


 魔剣ソウルイーターは『雷剣』の効果で雷属性を纏っていた。そのため硬直が発生してアースドラゴンの攻撃を中断させたのだ。どうやら、こいつはボスにしてはそれほど状態異常耐性が高くないらしい。


「アディ!」


 俺は叫ぶ!


「『炎槍』、『炎弾』!」


 俺の声に反応したアディが魔法スキルを続けて使った。


「グギャオーーー!!!」


 アースドラゴンが咆哮する。アディの攻撃は確実にダメージを与えた。アディのレベルは19だが、レア級のキマイラの杖の補助効果で魔法攻撃力は高い。それにもともと威力の高い魔法スキルである『炎槍』をアディは一段階強化している。おまけに『瞑想』も使っていた。


「『3連撃』!」


 アースドラゴンの背後からジギルバルト団長がスキル『3連撃』を使った。凄まじい速さでジギルバルト団長の剣が3回振られる。レナードさんの回復魔法スキルによって回復したジギルバルト団長が戦線に復帰したのだ。


「ぎゃあぁーーー!!」


 またもアースドラゴンが悲鳴を上げる。


「よくわからんが、盾役はレオニードに任せたほうが良さそうだな」


 ジギルバルト団長はニヤリと笑って俺を見た。さすが団長だ。これまでも多くの修羅場を潜ってきたのであろう凄みを感じる。


「レナードは回復に特化しろ!」

「わかりました」


 レナードさんも少し落ち着きを取り戻している。


「『挑発』!」


 俺はCTが空けるたびに『挑発』を使ってヘイトを稼ぎタゲを維持する。これが本来の盾役の役目だ。


「『集中』!」


 さらに『集中』も使う。


「『スラッシュ』!」


 俺はタゲを維持しながら時折『スラッシュ』で攻撃する。『挑発』のみではタゲを維持できない。『スラッシュ』は『二段斬り』などより威力が低いが隙も少ない使い勝手の良いスキルだ。それに『雷剣』のおかげで雷属性のダメージも与えている。無理な攻撃はしない。俺の役目は『挑発』と合わせてタゲを維持できる程度に攻撃することだ。これはパーティー戦である。


「『雷剣』!」


 CTが空け次第『雷剣』も使う。


 戦線が安定してきた。


「『回転斬り』!」


 ジグルバルト団長がアースドラゴンの斜め後ろから『回転斬り』を使う。『回転斬り』は多段ヒットするスキルで威力が高い。しかも見たところ強化されている。発動のモーションが大きい上に『二段斬り』と同じく打ち終わりにも隙があるので使い所を選ぶスキルだが、今は俺がタゲを維持している。


「『炎槍』!」


 アディも魔法スキルでジギルバルト団長に続く。


「ギャアアアアーーー」


 アースドラゴンの悲鳴で部屋が振動する。


「アディ、CTが開け次第『瞑想』を使うようにするんだ」


 アディは俺の言葉に頷いた。さらに俺も『二段斬り』を使う。ジギルバルト団長とアディが威力の高い攻撃をしたので気をつけないとタゲを剝がされてしまう。


「レオニードは盾役として優秀だな。タゲの維持が巧みだ。攻撃がしやすい」

「そうでしょう」


 ジギルバルト団長の褒め言葉に、なぜかアディが得意そうに返事をすると「『炎弾』!」と魔法スキルで攻撃した。


 いい感じに連携が取れてきた。だが油断はできない。俺は、僅かにアースドラゴンがしゃがむように態勢を低くしたことに気がついた。


 あれは…。


 タゲに関係なくランダムに目標を定めて大きくジャンプして攻撃してくる前兆だ。


 まずい! 気がつくのが少し遅れた。


 俺は全力で移動するとギリギリでアディとアースドラゴンの間に割り込んだ。


「『ガード』!」


 ガキン!


 俺とアースドラゴンが激突した。『ガード』を使ったがタイミングが完璧ではなかったようで俺はゴロゴロと床を転がる。かなりのダメージを受けてしまった。


「ううぅ…」

「レオ!」

「『大回復』!」


 レナードさんがすぐに『大回復』を使ってくれた。


「『移動速度上昇』!」


 更にレナードさんは俺に『移動速度上昇』のバフをかけてくれた。ありがたい!


「ありがとうございます」


 盾職の欠点は俊敏が低いことだ。俺は『雷神の守護者』の効果で通常の剣士と同じくらいの速度で移動できるが特別速いわけではない。魔剣ソウルイーターの補助効果である攻撃速度アップは移動速度には関係がない。


「『挑発』!」


 俺は立ちあがって盾を構え直すと、タゲを取り返すためにCTの空けた『挑発』を使う。そうしないと回復魔法スキルを使ったレナードさんが攻撃を受けてしまう。続けてCTが空けている『集中』と『雷剣』も使った。


 よし!


 再び、俺がアースドラゴンの正面でヘイト稼いでタゲを取ってジギルバルト団長とアディが背後や側面から攻撃する安定したパターンに戻った。


 確実にアースドラゴンのHPは減っている。しばらくすると、またアースドラゴンが僅かにしゃがむように態勢を低くする動きを見せた。


「『スラッシュ』!」


 ランダム攻撃をする前兆を見逃さなかった俺は、雷属性を纏った魔剣ソウルイーターで『スラッシュ』を使う。硬直効果でアースドラゴンのランダム攻撃は中断された。


 上手くいった!


 ボスにしてはアースドラゴンの状態異常耐性があまり高くないのは、俺のように硬直させるスキルを複数持っている者にはありがたい。こうなると遠距離攻撃のないアースドラゴンは何もできない。


 俺がヘイトを取っている間に再びジギルバルト団長とアディが攻撃する。


 よし、この調子で…。


「全員、レオニードの背後に移動しろ!」


 ジギルバルト団長が叫ぶ! アースドラゴンの体が薄く発光している。


 そうだった。ボスにはこれがある。この部屋に特別なギミックがないとしても、アースドラゴンがボスにしては特殊攻撃が少ないとしても、これはあるようだ。


 アースドラゴンが狂乱状態になったのだ!!!

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― 新着の感想 ―
今更ですけれどちょっと思った事を。 スキルって口に出さないと効果を発揮しないのでしょうか? もしそうなら対人戦とか発声を妨げる方策とか発展してそうだなって。
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