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6-5(気になる噂).

 ついにメデューサをクリアした僕たちは、16階層より下に降りてレベル上げができるようになった。しかし、メデューサをクリアする前に既に全員レベル35を越えていた僕達は、あれからそれほどレベルが上がっていない。次の20階層ボスの攻略は全員がレベル41を越え最上級職に就いてからでいいだろう。いや、この世界なら45か…。


 先は長いが、15階層を突破したこと、帰還の腕輪の入手方法を確保したことにより見通しは明るい。もともとゲームのように一日でレベルがどんどん上がるという世界ではないのだ。これでダゴン迷宮の利点がまた生かせる。焦らず前に進むしかない。僕達はまだ16才なのだ。


 そんなことを考えていると、アランが報告があると言って執務室にやってきた。執務室に入ってきたアランに「何かわかりましたか?」と僕は早々に質問した。


 たぶんの例の件に関する報告だろう…。


 王国の北東部のアルメッサー辺境伯の領地でリアブルク連合国との戦争があったと聞いてアランに調査を命じていたのだ。あの辺りはリアブルク連合国のウラニア公国と国境を接しているので小競り合いが絶えない地域だ。だが僕には気になる点が二つあった。

 一つはなんと1000人の規模の戦いになったという噂だ。この世界は前世の世界と比べて軍や騎士団の人数が少ない。その理由はまず第一に人口が少ないこと。もう一つはレベルとか職がある世界で兵士や騎士に向いている人材が限られるからだ。レベルのせいでこの世界では個人の能力の差が大きい。役に立たない者をいくら兵士や騎士にしても仕方がない。ファミール王国の王国騎士団には1500人規模の師団が4つある。それに加えて4大貴族の騎士団がせいぜい2000ずつといったところだ。あとは、僕も含めてそのほかも貴族も従者という名目で実質的な騎士を保有しているが人数は多くない。

 ファミール王国の北東にはリアブルク連合国、東にはオルデン聖国、北西にギグス王国、そして北にミタリ帝国がある。それぞれの国境を守るために4大貴族がいる。王国も各国境に騎士団を派遣している。ちなみに南は海に面している。

 そんな中で1000人同士の戦闘といえば、もはや小競り合いとは言えない。『迷宮物語』の中でそんな話は聞いたことがない。ただし、聞いたことがないからといってなかったとは限らない。『迷宮物語』ではストーリの最後に、王家のいざこざに4大貴族が関わる形で、王国は戦乱の時代になる。それがエンドコンテンツの陣営戦に繋がっている。背後にリアブルク連合国がいたとかなんとかの話があった気もする。だが、この段階で戦争があったという記憶がないのだ。

 そして、もう一つ気になるのは、あの地域にはミスリル鉱山があるということだ。それは、まだ知られていない。ミスリルだけでなくアダマンタイトも産出する鉱山だ。制作職にとっては採取でお馴染みの場所だ。


「戦争は実質的に我が国の負けの様です。マランヤ山脈の北の麓であるスランヤ地域の大半をウラニア公国が支配したようです」


 鉱山がある辺りだ。


「確かにあの地域は魔物の狩場になっていましたが、そこまでの価値があるのでしょうか?」

「アラン、あそこには鉱山があるんだ」


 僕はアランの疑問に即答した。


「なんと、そうですか。セルゲイ様が仰るのなら間違いないのでしょうな。しかし、ウラニア公国は、いえリアブルク連合国はそれを知っていたのでしょうか?」

「僕と同じような存在がいるのかもしれない」

「セルゲイ様と同じ…。ということはマリア様やピエール様と同じ…ということですな」


 マリアとはプリマドンナことマリア・リブラマン、ピエールとはマエストロことピエール・ノウムテックスのことだ。僕の前世からの仲間だ。


「そうだな」


 アランにはある程度僕達の秘密を話している。もちろんこの世界がゲームの世界だとは言っていない。未来を知る能力があるとか、そんな感じで説明している。

 それにしてもウラニア公国に『TROF』のメンバーがいるのだろうか? 僕、プリマドンナ、マエストロはいずれもファミール王国に生まれた。エトワールとヴィルトゥオーゾには会った。どちらかがリアブルク連合国に生まれたのだろうか? いや、そんな感じはしなかった。それなら、あのコレオグラファーが…。


 いや、なんとなく『TROF』のメンバーがリアブルク連合国にいるというのはしっくりこない。だとすると他のプレイヤーが…。僕はいくつかのクランの名前を思い浮かべた。


 わからない…。


 アランは僕が頭を振って考えているのを黙って見つめていた。こんな時、余計なことを言わないのがアランのいいところだ。


 頃合いを見計らってアランが口を開いた。


「それと、気になる噂があります」

「気になる噂?」

「はい。確かなものではありません」

「いいから、話せ」

「それでは。敵に王国騎士団でいえば大隊長クラスばかりの強者50人以上で構成されている部隊があったと、そんな噂です」


 僕は一瞬言葉を失った。それは、まさに僕が作りたかったものだからだ。


「大隊長クラス…50人以上…だと?」

「あくまで、噂です。ただ、アルメッサー辺境伯騎士団の団長が亡くなったようなのです。それに北東部に派遣されていた王国騎士団の大隊長も負傷したという噂です。それに…」

「まだ、あるのか?」

「はい。その部隊を率いていたのはジギルバルト団長のような強者だったと…。どうもアルメッサー辺境伯や王国騎士団はその辺の情報を隠しているようなのです」


 ジギルバルト、この世界最強と言われている王国騎士団長だ。おそらくレベル45くらいだ。


 ジギルバルトと同じくらいの強者…。


 プレイヤーだとしても成長が速すぎる。ダゴン迷宮を確保している僕達ですら、こないだやっと15階層をクリアしたばかりだ。この世界では『迷宮物語』のようにはいかないはずだ。


 いや、方法はあるのか?


 多くのサブキャラやサブアカウントを持っているプレイヤーの中にはキャラクターを育てるのが尋常じゃなく速い奴らもいた。おそらく、経験値の多い魔物が大量に湧く場所だの、特別に経験値が多い魔物の存在など特別な情報を持っているんだろうと思う。僕はサブキャラは使ってなかったので詳しくは知らない。それに、早くから迷宮を自由に使えるような立場に転生すれば、僕達よりレベルが高くてもおかしくないのかもしれない…。


「アラン、その噂についてもう少し調べてくれ」

「わかりました」


 誰かが、僕と同じように、いや、僕以上の知識を使って、この世界で僕がやろうとしていたことを僕以上のスピードで進めている。


 予定外だ。だが、負けるわけにはいかない。





★★★





 その後の調査でアルメッサー辺境伯騎士団の団長が死亡したことが事実だと確かめられた。僕は早速アランからの情報をパーティーメンバー3人に伝えた。グレアムとは僕達と同じ情報を共有している。ゲームとかは理解していないと思うが…。


「ふーん、リアブルク連合国に転生したクランがあるのかもね」

「『流浪の傭兵団』辺りか…。もしかすると『レティシアと愉快な仲間たち』かもっスね。だけど、『迷宮物語』の舞台はファミール王国っス。なんかリアブルク連合国ってのがピンとこないっスね」

「それもそうね」


 プリマドンナとマエストロは考え込んだ。


「それは、今考えてもしかたがない。それよりダゴン迷宮を使っている僕達以上に速いレベルアップの方法を知っているとすれば『流浪の傭兵団』が一番怪しいと思う」

「確かに。あいつらサブ垢(サブアカウント)とか使って卑怯なことをしてたっスもんね」


 まあ、コレオグラファーの戦略で勝っていた僕達も人のことは言えない。『流浪の傭兵団』のクランマスターはコレオグラファーと並んでゲームの仕様を利用した戦略に詳しかった。まあ、それでもコレオグラファーのほうが上だったのだが…。


「で、どうするの?」

「今まで通りだ。ただし、今まで以上に注意する必要がある」

「インプレサリオの言う通りね。ここにレベルアップに適した迷宮があることは『迷宮物語』のプレイヤーなら誰でも知っているわ」

「ああ、そいつらだけじゃなく、ここにいない『TROF』のメンバーだって知っている」


 僕を訪ねてきたエトワールとヴィルトゥオーゾはもちろん、行方のわからないコレオグラファーだって知っているだろう。


「他の『TROF』のメンバーが関わっている可能性はないかしら?」

「ないとは言えない。ただ、エトワールとヴィルトゥオーゾには会ったがそんな感じじゃなかったと思う」


 とにかく僕達と同じようなことをしようとしている奴らがいる。しかも、どうやら僕達より先を行っている。だが、負ける気はない。こっちにはグレアムだっている。この世界の者は誰もが限界までレベルアップできるとは限らない。それどころか、ほとんどの者がレベル5にもなれないのだ。強者の集まりである王国騎士団ですら平均レベルは15程度だろう。だからこそ、元プレイヤーとグレアム、それに主人公は特別なのだ。


「とにかく、リアブルク連合国にいる奴らに関して可能な限り情報収集しようと思う。それに主人公をどうするかだ。主人公もこの世界で限界までレベルアップできる貴重な存在だ。グレアムと同じだよ」


 僕の言葉にグレアムは黙って頭を下げた。一方、マエストロは考え込んだ。

 ここまで読んで頂きありがとうございます。これで第6章は終わりです。明日からレオニード視点の第7章に入ります。


 もし本作に少しでも興味を持って頂けたらブックマークと『★★★★★』での評価をお願いします。また、忌憚のないご意見や感想をお待ちしています。読者の反応が一番の励みです。


 拙作「ありふれたクラス転移~幼馴染と一緒にクラス転移に巻き込まれた僕は、王国、魔族、帝国など様々な陣営の思惑に翻弄される…謎解き要素多めの僕と仲間たちの成長物語」と「乙女ゲームの断罪の場に転生した俺は悪役令嬢に一目惚れしたので、シナリオをぶち壊してみました!【連載版】」も読んで頂けると嬉しいです。

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