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6-3(帰還の腕輪).

 僕達はダゴン迷宮の探索を終えて領都リュスにある僕の屋敷に寛いでいた。僕達というのは、クレリックの僕、上級槍士のプリマドンナ、上級重剣士のマエストロ、上級魔法使いのグレアムの4人だ。僕達はダゴン迷宮の15階層のボスにチャレンジしたが失敗した。しかも3回もだ。帰還の腕輪も尽きてしまったので、今は15階層の一般魔物でレベル上げをしている。僕達のレベルは既に全員35を越えた。ここまで来ると15階層のボスをクリアして、さらに下層に行かないとダゴン迷宮を利用してもレベルを上げるのが難しい。実際今日も誰のレベルも上がらなかった。 


「やっぱり、メデューサを倒せなかったのは痛かったっスね」

「今ならクリアできると思うんだけど、やっぱり帰還の腕輪がないと挑戦する気にはなれないわね」


 プリマドンナの言う通りで帰還の腕輪なしにはチャレンジできない。リスクが高すぎる。


「セルゲイ様!」


 僕達が寛いでいた広間にアランが少し慌てた様子で入って来た。


「アラン、どうした?」

「はい。以前から調査しておりました帰還の腕輪の件でちょっとした情報が…」


 アランには最近は帰還の腕輪について探らせている。もちろん金や人材をずいぶん投入してだ。


「元、王国騎士団の中隊長をしていた男からの情報なんですが…。これが帰還の腕輪のことになると口が堅くて…」

「いいから早く報告しろ」

「どうも王家が管理している迷宮が関係しているようで…。その男も直接関わっていたわけではない様子で…」

「それで」

「すみません。それだけなんですが…」


 なんだ、それだけか…。帰還の腕輪は迷宮のボスドロップ品だから、迷宮が関わっているのは当たり前だ。だが、滅多にドロップしないから困っているのだ。


「それだけなら、もう下がっていいぞ」


 アランは僕の機嫌がよくないのを察したのか僕の言葉に「はっ!」と返事をすると逃げるように部屋を辞した。


「ねえ、インプレサリオ」

「ん?」

「今、アランが王家が管理している迷宮って言ってたわよね」


 そういえば、ただの迷宮ではなく王家が管理している迷宮と言っていた。


「それって、王家が金に飽かして各地の迷宮でドロップした帰還の腕輪を集めてるんじゃなくて王家が管理している迷宮に何か秘密があるってことじゃないの?」

「王家が管理してるって迷宮ってザルバ大迷宮を除くとガガス迷宮とベングラウ迷宮の二つっスね」


 ガガス迷宮は1階層しかない迷宮だ。僕も『迷宮物語』でよく知っている。1階層しかなく、その1階層の奥にボス部屋がある。このボスはちょっと特殊だ。


「ガガス迷宮のボスは御遣様っスよね」


 ガガス迷宮のボスはマエストロの言う通りで御遣様だ。倒すとスキルを授けてくれる。プレイヤー一人につき1回しか利用できない。この世界では王家が管理していることになっている。確か序盤のクエストでプレイヤー一人につき1回だけ利用できる。まあ、あのクエストはやってもやらなくてもいいクエストだ。


「あれは、初級スキルしか授けてくれない御遣様よ」

「プリマドンナの言う通りだ。僕は利用しなかった」

「俺は利用したっスよ。とりあえず初期の段階で確実にスキルを一つ貰えるっスからね。しかも、あの御遣様はスキルを選択できる特別な奴っスから」


 マエストロは意外と慎重なプレイスタイルだったから利用していてもおかしくない。確かにあの御遣様は普通の奴と違って、初級とはいえ、いくつかのスキルの中から貰うスキルを選ぶことができた。僕はそれよりも本編のストーリーをさっさと進める派だった。どうせ長くプレイしていれば御遣様に会うこともある。御遣様からは最大3つのスキルを貰うことができる。どうせ最後はその3つすべてを最上級とか伝説級にしていくことになるのだから、先を急いだほうがいいというのが僕の判断だった。


「マエストロ、私が気になるのはガガス迷宮じゃなくてベングラウ迷宮のほうよ」

「ベングラウ迷宮? あれはもっと関係ないっスよね」


 ベングラウ迷宮は王家が独占して王国騎士団のレベル上げ専用に利用されている迷宮だ。王族派のダウスゴー伯爵家が管理している。少なくとも、この世界ではそういうことになっている。


 そして『迷宮物語』では…。


「プリマドンナ、あれはガチャチケットを手にれるための迷宮っスよ。この世界にはガチャなんてないんっスから…」


 ベングラウ迷宮は15階層までの迷宮だが、ボスドロップ品として武器とアクセサリー以外にガチャチケットが落ちる。もちろん『迷宮物語』での仕様だ。毎日最初にボスを倒したときにガチャチケットが手に入るのだ。何階層のボスでもいい。デイリーミッションだ。ログインボーナスのようなものといってもいいだろう。ログインボーナスで毎日ガチャチケットが手に入るのはゲームではよくある仕様だ。


「ねえ、インプレサリオ、この世界にはガチャなんてないわよね?」

「まあ、そうだね」

「逆に『迷宮物語』の世界には帰還の腕輪なんてなかったわよね?」

「何度死んでもやり直せたからね」


 そうか…。プリマドンナが言いたいことがわかってきた。


「王家が管理しているベングラウ迷宮って、この世界ではガチャチケットの代わりに帰還の腕輪がドロップするってことはないかしら?」


 僕はプリマドンナが言ったことをよく考えてみた。なるほど、ありそうだ…。


「プレイヤーなら誰でも一日1枚ガチャチケットが手に入ったっスよね。でも、さすがにこの世界では、全員にドロップするとは思えないっス」

「まあ、私の想像が当たっていたとしても、毎日最初にクリアしたパーティーに落ちるとか、そんな感じでしょうね」

「でも、プリマドンナ、一日1個でも多すぎる気がするっス。それなら例えばジギルバルト辺りがもう20階層をクリアしていてもおかしくないような…」

「マエストロ、そこは私にもわからない。でも、私…案外帰還の腕輪ってたくさん必要だと思うのよ。私達も経験したでしょう。パーティーのレベルによっては5階層や10階層をクリアする時にだって必要な場合もある。王国中のパーティーが必要としているのよ。15階層以上になれば『迷宮物語』でも何十回も失敗してクリアするなんてことはよくあったのよ。それに1回クリアしたからって必要なくなるわけじゃない。むしろ一日1個でも足りない気がするわ」


 プリマドンナの言うことには一理ある。


 100年ほど前の魔導革命をきっかけに迷宮の価値は高まった。ボスから優秀な武器やアイテムがドロップすることから軍事的にもその価値を増した。


「そういえば、ここ最近で各国の迷宮の攻略が飛躍的に進んだって聞いたことがあるっス」

「ここ最近っていうのは?」

「10年、20年くらいっスかね」


 もしかして僕達が転生した時期と関係があるのか?


「その頃から、各国でそれ以前より帰還の腕輪を多く入手できるようになったのかもしれないわね」

「その秘密の一つが我がファミール王国のベングラウ迷宮にあるというのか?」

「ええ。単にドロップする数が増えただけかもしれないけどね」

「だけど、それじゃあ、結局、僕達が帰還の腕輪を手に入れるのが難しいことには変わりない。ベングラウ迷宮は王家が厳重に管理しているんだからね。正確には王族派のダウスゴー伯爵家だけどね」


 特にそんな秘密があるのなら、金を積んだとしてもまだ男爵にすぎない僕が入るのは無理だろう。それに1回入ったところで…。いや、待てよ…。


「ちょっと落ち着いて考えてみよう。ガチャチケットを入手する方法にはどんなものがあったかな?」

「そうっスね。リアルマネーを使うのが一番っスね」

「この世界でそれは無理だな。他の方法は?」

「ベングラウ迷宮を使ってデイリーでゲットすることっス」

「それは、さっき言った通りで無理ですね。他には」

「……他には…」


 デイリーがあるんだから…。いや、ウィクリーではガチャチケットは落ちなかった。


「マンスリーがあるわね」


 マンスリーミッション、月ごとに達成するミッション。確かにあれでもガチャチケットが手に入った。


「あれって、この世界でも有効なんっスかね?」

「やってみる価値はある」

「そうね」


 この世界には後から追加された迷宮を除くと、王家が管理する迷宮の他に4大貴族が管理する迷宮が5つある。シュタイン侯爵領に2つ、残りの3家にそれぞれ一つの合計5つだ。この合計5つの迷宮のどの階層のボスでもいいので1ケ月ですべての迷宮のボスを3回以上討伐するとマンスリーミッション完了だ。この世界にも週や月はある。


「やってみるか。ダメもとだ」

「あれで手にはいるのは5個だったっスよね」

「何組かのパーティーで同じことをさせてみるか…。ただ、地方貴族派のアマデオ侯爵、ビットリオ侯爵、シュタイン侯爵はともかく、王族派のアルメッサー辺境伯が問題だな。まあ、ここでもアルバート殿下が役に立ってくれるか…」

「この方法が有効だとして一般に知られたら大変なことになるっスね」

「そうね。でも1ケ月で4大貴族が管理しているすべての迷宮を回ろうなんて考える者が普通いるとは思えないわ」


 プリマドンナの言う通りだ。ゲームと違って、この世界では移動するだけでも大変だ。普通そんなことをする者はいないだろう。とにかく、秘密を守れる者で…当面は僕達とラングレー達の2パーティーでやってみよう。もしかしたら、月に1パーティーにしかドロップしないかもしれない。その辺の仕様はわからない。


 試してみる価値はある…。

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― 新着の感想 ―
試行錯誤良いですね。 それにしても転生はどういう意図で誰が行ったモノなのか明かされる日は来るのかな、と思った今回のお話でした。 以下、前話感想の余談への私見です。 読んでみたいとは思いますけれど受け…
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