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62/65

5-15(45対45).

「はあー! 『ダッシュ』!」


 俺は気合を入れると、スキル『ダッシュ』でエルロンに突進した。


「『シールドバッシュ』!」

「レオ!」


 ぐわん!!


 エルロンはスキル『シールドバッシュ』で俺を弾いた。だが、俺は硬直はしていない。スキル『ダッシュ』で突進している間はスーパーアーマー状態だから状態異常は受け付けない。『ダッシュ』にはこのほかにも他のスキルの打ち終わりの隙をキャンセルできる効果もある。CTも短く間合いを詰めることもできるのでとても便利なスキルだ。


 俺は決して油断はしない。


 同じ上級重剣士でもこいつのほうが盾系のスキルを多く持っているし強化もされている。俺は魔剣士を経由して最上級重剣士になったからだ。だが、その分、俺は魔法スキルを持っている。


「『雷弾』、『雷剣』!」


 弾き飛ばされた俺は魔法スキル『雷弾』を放った。同時に『雷剣』も発動させる。上空からバリバリと音がして稲妻がエルロンを襲う。エルロンは素早く後ろの飛び退いて避けた。稲妻が落ちた地面が抉れている。


 避けられた…。だが、『雷弾』は近くの敵を硬直させる効果がある。


「『挑発』!」


 『挑発』は対人戦で使うと相手を引き寄せた上、移動不能にする。エルロンと俺のレベルは同じだから状態異常がレジストされる確率はそれほど高くない。エルロンが『雷弾』で硬直している隙に、俺は『挑発』でエルロンを引き寄せた。案の定、エルロンは移動不能になっている。


 俺は間髪をいれずにエルロンに斬り掛かる。


「『スラッシュ』、『二段斬り』、『ダッシュ』、通常攻撃、『回転斬り』!」

「ぐわあぁぁー!!」


 移動不能になっているエルロンに俺の『スラッシュ』からのコンボ攻撃が決まった。威力の高い『二段斬り』からの得意のコンボから、さらに『雷剣』の効果で再び硬直させてからの『回転斬り』まで繋げた。『回転斬り』は多段ヒットする。しかも攻撃中はスーパーアーマー状態だ!


 我ながら綺麗にコンボが決まった。コンボは繋がれば繋がるほど攻撃威力が増す仕様だ。最後の『回転斬り』は相当な威力で多段ヒットしたはずだ。エルロンは自分の方が圧倒的にレベルが上で硬直などの状態異常はすべてレジストされると勘違いしていたようだ。エルロンが耐久力が高い最上級重剣士とはいえ相当なダメージを受けたはずだ。そもそも人は魔物よりもHPが少ない。


 エルロンは盾を持ったまま、片膝をついている。こいつはアディを殺そうとした。


 俺に躊躇はない。まだ『雷剣』の効果は続いている。俺は雷属性をソウルイーターに纏わせたまま攻撃を続ける。硬直効果は30秒に1回しか発動しない。


 バーン!

 バーン!


 エルロンは俺の攻撃を盾で受け止めているが、ここぞとばかりに俺は斬り掛かる。盾の上からでも一定のダメージは与えられる。


「『シールドバッシュ』!」

「うっ!」


 俺は、エルロンの『シールドバッシュ』で弾き飛ばされた上、硬直させられてしまった。もう『シールドバッシュ』のCTが空けていたか…。CT短縮の強化がされているのかもしれない。ちょっと、焦り過ぎたか…。


「レオー!」


 アディが叫ぶ。


「心配ない、アディ!」


 俺が偶々黒獅子王を倒してレベル45になったのに対して、おそらくエルロンは20階層ボスをクリアしているのだろう。それでも、俺は全く負ける気がしない。


「『集中』!」


 エルロンは俺が硬直している隙に『集中』を使った。だが、今のは硬直している俺にすぐ追撃するべきだった。未だにエルロンには油断がある。自分が負けるはずがないと思っているのだ。


「『雷弾』!」

「『跳躍斬り』!」


 硬直が解けた俺は、すぐにCTの空けた『雷弾』を使った。しかし、エルロンは既にスキル『跳躍斬り』でジャンプしていた。『雷弾』は最初に見せたから警戒していたんだろう。少しはできるようだ。エルロンはもう俺の目の前だ。


「『ガード』!」


 ガシーン!!!


 俺は『跳躍斬り』を『ガード』で受け止めた上、エルロンを弾き飛ばそうと盾を持つ手に力を込めた。俺はエルロンと違って『シールドバッシュ』を持っていない。しかもエルロンは『集中』を使っているので筋力が上がっている。『集中』は1分間、筋力と俊敏をアップさせ物理攻撃スキルのCTを短縮するスキルだ。その結果、俺のほうが押されて後ずさった。だが、タイミングよく『ガード』を使ったのでダメージも無いし『跳躍斬り』の硬直効果も受けていない。


 仕切り直しだ。


「『集中』!」


 俺のほうもここで『集中』を使った。俺の『集中』は持続時間か二段階強化されて1分30秒になっている。


 エルロンは、さっきの綺麗に決まった俺のコンボで既に残HPの半分近くが削られているはずだ。対して俺は魔剣ソウルイーターの効果もあってHPはほとんど減っていない。


 その後も俺達は互いに死力を尽くして戦った。だがすべてにおいて俺のほうが少しだけ上だった。いや、筋力や耐久力はエルロンのほうが上だ。俺は魔剣士経由で最上級重剣士になっているからだ。こいつは、俺と同じようにコンボなどの知識だって持っている。それでも…それぞれのスキルを繋げるタイミングも、スキルを発動する速さも俺のほうがほんの少し上だ。このほんの少しがPVPでは勝負をわける。もちろん、一番は『雷神の守護者』のおかげだ。それに俺は『雷弾』や『雷剣』など硬直効果のある雷系のスキルを多く持っている。


 だけど、それだけじゃない!


 エルロンが持っている剣や盾だって伝説級に見える。いろいろと能力を上げるアイテムらしきものも身に着けている。全体的にはエルロンの装備のほうが上だろう。


「『雷弾』!」

「『ガード』!」


 俺は『雷弾』を放つと同時に間合い詰めて攻撃に移る。エルロンの『ガード』で硬直効果は無効化された。こいつだって学習はしている。だが、俺は既にエルロンの目の前だ。俺は『雷剣』の効果で雷属性を纏った魔剣ソウルイーターでエルロンを攻撃した。エルロンは『ガード』に続けて『挑発』を使おうとしていたが俺の攻撃のほうが僅かに速かった。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 硬直したエルロンに俺の何度目かのコンボ攻撃が決まった。しかもお互いに『集中』でステータスが強化されている状態だ。エルロンは呻き声を上げて仰け反るように後退した。一応盾を構えてはいたが『二段斬り』の初撃で盾を跳ね上げた後はすべての攻撃がエルロンにダメージを与えた。


「な、なぜ、俺がお前なんかに…」

「俺のレベルは45だ」

「な…なんだって…。だが、それなら…」

「そうだ。エルロン、職もレベルも俺とお前は同じだ」


 エルロンは既に息も絶え絶えだ。片膝をついて俯いている。 


「お、同じなら…俺が…」

「負けるはずがないってか? お前、『迷宮物語』の元プレイヤーだな。それにPVPでは結構有名なプレーヤーだったのかもしれないな」

「……」


 エルロンは無言だ。


「わからないのか? ふん、お前、どうせ『迷宮物語』の知識だけでレベルを上げたんだろう。俺は小さい頃から父さんやシグルド様に剣を習っていた。俺には努力してこの世界で身に付けた技術がある。お前は『迷宮物語』の知識だけでレベルを上げ、『迷宮物語』の知識だけで戦っている。なんで、それで俺に勝てるなんて思ったんだ」


 『迷宮物語』の知識は確かに役に立つ。だがそれだけでは不足なのだ。『迷宮物語』の中でも同じ職、同じレベルでもプレイヤーの技術によってPVPの強さには驚くほどの差があった。そして、この世界でのPSプレイヤースキルとは、この世界で努力して得るものだ。PCの前で培った技術がそのまま通用するはずがないだろうに…。


 必殺の『天雷』を使う必要すらなかった…。


「エルロン、お前の、いや、お前達の目的はなんだ?」


 エルロンは俺と同じレベル45だった。そして50人に上る高レベルの集団を連れていた。


「決まっているだろう。この世界の覇権を握ることだ。どこの誰か知らないが、俺を倒しただけでいい気になるなよ」

「他に仲間がいるのか?」

「……」


 俺はしばらく待ったが、エルロンは無言だった。


「言いたくないのか? じゃあ、お前には用がない」


 俺はエルロンと目線を合わせるように屈むと「死ね!」と言ってエルロンの胸を魔剣ソウルイーターでズブリと一突きした。


「ぐわあぁーーーー!!!」


 片膝をついていたエルロンは俺が一突きした勢いで、ガクンと首が上を向いて天を見上げるような恰好になった。俺が魔剣ソウルイーターを引き抜くと胸から血が噴き出した。エルロンはそのままへなへなと地面に崩れ落ちると、すぐに動かなくなった。


 俺はエルロンの死体をしばらく見つめていた。


「レオ…」

「アディ、無事でよかった」

「それは、こっちのセリフよ。それに、ごめんなさい…」

「アディが気にする必要はない」


 アディは自分の作戦で俺とエルロンの1対1の勝負に持ち込んだことを気にしているのだ。


「でも…」

「アディの作戦は正しかった。それに、俺があんな奴に負けるはずがないだろう」


 俺は、アディを安心させようとできるだけ格好をつけて笑ってみた。


「レオ…。ふふ、そうね、レオがあんな奴に負けるわけがないわね。でも、ちょっと顔色が悪いけど…大丈夫なの?」


 俺は、元プレイヤーらしき男を殺した。


 後悔はない。エルロンは俺の質問に、目的はこの世界の覇権を握ることだと答えた。『迷宮物語』でのクラン『TROF』のように…。ここにもこの世界をゲームと勘違いしている馬鹿がいた。そういう馬鹿を排除するのに後悔などない。何より、こいつはアディを殺そうとした。そして多くの部下を引き連れてハイゼルフ団長を始めとした多くの騎士達を殺したのだ。


 俺は心の中でエルロンの死体に問い掛けた。お前が殺した人達はゲームと違って決して生き返ることはない。お前、それをわかっているのか?


 当然、エルロンからの答えはない。この世界ではエルロン自身も決して生き返ることはないのだから…。


 俺の目的は俺が育ったこの世界を、そしてアディを守ることだ!


「大丈夫だよ、アディ」

 

 そう、俺は大丈夫だ…。

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