5-8(いつものパーティー)
「サラ、大丈夫」
「ごめん、また食らっちゃった」
この辺りは蛇の魔物であるジャイアントバイパーやサソリの魔物デススコーピオンなど毒攻撃をしてくる魔物が多い。サラがデススコーピオンのお尻から発射される毒針攻撃を食らったのだ。掠っただけだが毒状態になってしまった。
俺はすぐにレベル差の暴力で3体のデススコーピオンを倒した。
「サラ、これを」
アディが駆け寄ってサラに解毒ポーションを渡す。解毒ポーションは他のポーション類とCTが共通してる。おまけにポーション類はボス戦では3回までしか使用できないという制限がある。
「今日は、この辺にしようか」
俺の言葉に全員が頷いた。
俺達はついに10階層まで到達したが、10階層のボスであるサイクロプスはまだ倒していない。この辺りから毒攻撃をしてくる魔物が出現する。10階層を越えるとさらに増える。一度に5体とかで現われたりする。15階層のボスである例のケルベロスも毒攻撃を持っている。とにかくシルヴィーとの経験でも痛感したが、この先のことを考えると俺のレベルが突出して高いだけではダメだ。やはりパーティーはバランスが大事なのだ。
「レオに頼って全員レオの盾に後ろにいて、レオに倒してもらえばサイクロプスだってクリアできるかもしれない。だけど、それじゃあ…」
アルスは途中で言葉を濁した。
「そうね。それじゃあ、私達がいる意味がないわ」
アディが腕組みをして言った。
「みんなごめんね」
「サラのせいじゃないわ。私やアルスだって毒攻撃を受けてしまったもの」
確かにアルスが言ったような方法なら可能かもしれない。なんせ、俺のレベルは45なのだ。みんなにも俺のレベルは教えている。シルヴィーにしたようにパワーレベリングでみんなを連れて行くべきだろうか? みんなの実力が確実に上がっているのは間違いないのだが…。
「確かに俺のレベルが高いから、かなり安全に探索できているのは事実だ。だけど、みんなも十分役目を果たしてるよ」
サラはずいぶん落ち着いて弓を放てるようになった。アルスはもともと落ち着いている。アディの魔法攻撃スキルはレベルの割には威力が高い。
それでも…回復役がいないの痛い…。
「大丈夫だ! みんな迷宮でのレベル上げ以外の訓練も頑張っている。地道な努力は必ず役に立つんだ」
俺とシルヴィーが迷宮でレベル上げをしていた時、3人は地上で体力作りも含めた基礎的な訓練に励んでいた。俺が幼い頃から父さんやシグルド様に剣を習い努力してきたことは無駄ではなかった。俺はそれをよく知っている。
ちなみに、今のみんなのステータスはこんな感じだ。
【アデレード・アルメッサー 16才】
<レベル> 18
<職業> 魔法使い9
<スキル> 瞑想
<魔法スキル> 炎弾(A+1)、炎槍(A+1)
<武器> キマイラの杖(レア級、補助効果:魔法攻撃力+5%、魔法攻撃力+3%、魔法攻撃力+1%)
<アイテム> 知恵の指輪(レア級)、精神の指輪(一般級)
【アルス 16才】
<レベル> 20
<職業> 剣士10
<スキル> スラッシュ、回避、回転斬り、跳躍斬り、集中
<魔法スキル> 風刃(A+1)
<称号> 光の守護者
<武器> キングオーガの剣(一般級、補助効果:攻撃速度+1%)
<アイテム> 力の指輪(一般級)
【サラ・フィッシャー 16才】
<レベル> 18
<職業> 弓士9
<スキル> 強射、チャージショット(A+1、C+1)、後方回避
<武器> コカトリスの弓(一般級、補助効果:HP持続回復0.5%)
<アイテム> 必殺の腕輪(一般級)
アディはついに『瞑想』を覚えた。あとは『後方回避』を覚えられるといいんだが…。この世界の人はスキルを選択できないので運まかせだ。ただ、『瞑想』を覚えたし、『炎弾』と『炎槍』の威力が強化されている。おまけにキマイラの杖の補助効果もあるので、こと魔法攻撃力に関してはレベルを超えた能力を持っている。アディらしいといえばアディらしい。
アルスは3人の中では一番レベルが高い。『光の守護者』の称号のおかげだ。スキルについては以前から変更はない。アルスは次にレベルが上がれば上級職になれる。このままいけば上級剣士になるだろう。
アルスの今のスキル構成だと『跳躍斬り』りで硬直させて『回転斬り』に繋げるコンボが一番威力の高い攻撃になる。『跳躍斬り』自体も威力が高いし『回転斬り』は3回ヒットするので繋がればかなりの威力になる。ただ、始動モーションが大きい『跳躍斬り』をまず当てなければならない。その辺はアルスに伝えている。アルスは俺の言うことを聞いて熱心に練習しているようだ。アルスは俺と同じで小さい頃から剣を訓練をしている。アルスならコンボもすぐに使えるようになるだろう。大体アルスは主人公だ。
サラのレベルは18でアディと同じだ。弓士の特徴は二つある。一つは相手に毒や鈍足などのデバフを与える攻撃ができること。二つ目はクリティカル率やクリティカル威力が高く上手くいけば一撃必殺の攻撃を繰り出せることだ。サラはデバフ関係の攻撃を一つも覚えていない。その代わりメインのチャージショットが2回も強化されている。チャージショットは最高5回まで強化できる弓系の職のメインスキルだ。『チャージショット』の強化Aはクリティカル率とクリティカル威力の両方を上げる。強化CはCT短縮だ。サラのスキル構成は一撃必殺に振り切ったような構成で『迷宮物語』でもPVP勢には特に好まれたスキル構成だ。必殺の腕輪(一般)と合わせてサラのチャージショットにはかなり期待できる。
3人とも頑張っている。地上での訓練だって怠っていない。だが、この世界の迷宮探索は命懸けだ。俺は、シルヴィーとの経験から、ボス戦には帰還の腕輪を揃えてから挑むべきだと感じている。これまでの俺は、この世界での迷宮探索を少し甘く見過ぎていた。しかも、みんなにはシルヴィーのような『迷宮物語』の経験もない。
「とりあえず、今日で一年生としての迷宮探索は最後ね。二年生になっても頑張りましょう」
アディが前向きにみんなに声を掛ると全員が力強く頷いた。
そうだ、とにかくアディは死なずに一年生を乗り越えられた。俺の最大の目的は達成された!
終業式の後は春休みだ。『迷宮物語』が日本製のゲームのせいかこの辺りのスケジュールは日本の学校と同じだ。ただし休みはかなり長い。馬車で帰省したりするためだろう。
「アディとレオは、一緒にアルヘイムに帰省するの?」
「その予定よ」
「ああ」
アルヘイムに両親はいないがシグルド様に学園の様子を報告したい。サイモン様に挨拶をする必要もある。
「サラも帰省するんでしょう?」
「ええ、それで…」
どうしたんだろう?
俺が不思議がっていると「もう、レオは鈍いわね。サラはアルスも連れて帰省するんでしょう?」とアディが言った。
そう言うことか…。
「いや、サラが是非にって言うんで…。僕もいろんなところを見てみたいし…」
なんだかアルスも照れている。でも、サラは子爵令嬢だけど、平民のアルスを連れて帰っても大丈夫なのだろうか?
「うちは子爵っていっても領地は辺境だし、あんまり格式を気にするような家じゃないの。それに私は三女だしね」
俺の心配を察したのかサラが言った。
「私も三女よ」
アディがそう言って俺の顔を覗き込んだ。言ったアディの顔が赤い。アディの姉二人はアディとは少し年が離れていて既に嫁いでいる。
「ま、まあ、アディは三女といっても4大貴族の娘だし…」
アディがプイと横を向いた。
しばらくして、気を取り直したアディが「まあ、とにかく春休み明けには元気で再会しましょう。そうそう、春休み中にも日頃の訓練を欠かさないようにね」と言った。
俺の言いたかったことをアディに言われてしまった。




