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5-7(シルヴィーとのレベル上げ~15階層のボス戦2).

 ケルベロスは真ん中の頭を大きく持ち上げた。そして口を大きく開く。開けた口の中が渦を巻くように黒く淀んでいる。


 ゴゴゴォォォォーーー!!!!


 真ん中の頭にある口から扇形に黒い霧のようなものが噴射された。


 毒の霧だ!


 その黒い霧は、かなりの速さで扇形に広がっている。見た目以上に広がるスピードが速い。俺とシルヴィーは急いで扇形の範囲外に脱出しようとしたが、二人とも毒霧に触れてしまった。


 わかっていたのに…。


「シルヴィー、使って!」


 俺の声にシルヴィーは「『解毒』!」と叫び自らの毒状態を解除した。一方、毒状態になった俺のHPはどんどん減っていく。減っていくのは割合なので俺のレベルが高くてもあまり関係ない。俺は中級ポーションを飲む。だが俺のレベルが高いため中級の回復量でも大した効果はない。ポーションの回復量は割合ではなく固定なのだ。しかもCTが1分もある…。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 くそー!


「通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃」!」


 俺はやけくそで魔剣ソウルイータで攻撃した。魔剣ソウルイータの特殊効果でHPを回復させるためだ。だが、ケルベロスは毒霧を吐きながら時計回りに回転しているので俺達も逃げ続けなければならない。


 しかも、魔剣ソウルイーターの回復効果より毒状態でHPが減るスピードのほうが速い。


 それでも…。


「『スラッシュ』、『雷弾』、『回転斬り』、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃!」


 とにかくHPを回復させようと攻撃し続ける。HPが減ってきて動きが鈍くなる。頭も体も痛い。毒霧攻撃のほうはやっと終わったみたいだが、俺の毒状態は続いている…。


 く、苦しい…。


 これは、本当にまずい…。帰還の腕輪を使うべきか?


「レオ! 『解毒』!」

「助かった!」


 シルヴィーの『解毒』のCTがやっと空けたらしく、俺の毒状態は解除された。本当に危なかった。『解毒』や『浄化』などの異常を解除するスキルは1回に一人にしか使えない。『迷宮物語』ではケルベロスをよく観察して一度に全員が毒霧を喰らわないように立ち回っていた。だけど、実際に経験してみると毒霧の範囲は広いし広がるスピードが思った以上に速い。しかも時計周りに追いかけて来る。ゲームのように何度も失敗して慣れるなんてことができないこの世界では相当な難易度だと改めて認識した。


 だけど…怪我の功名で今なら必殺の『死線』が使える。


「シルヴィー、そろそろだ!」


 毒霧攻撃をしてきたんだから、そろそろあれが来るはずだ。


 ケルベロスのHPが20%を切るとケルベロスは狂乱状態となって攻撃力と攻撃速度が大幅に上昇する。これは多くのボスで同様なことが起こる。『迷宮物語』ではこの狂乱状態を凌げなくて何度も失敗したものだ。


 だが、これはチャンスでもある!

 

 ケルベロスの体全体が薄く発光している。


「きたよ!」

「任せろ!『死線』、『天雷』!」


 俺は『死線』を発動させると、すぐに『天雷』を使った。


 バリバリバリバリ!!!


 上空から無数の稲妻がケルベロスに降り注いだ。狂乱状態のボスは強力だが、その反面、物理防御力と魔法防御力が大幅に下がる。おまけに俺は『死線』を使っている。


 ケルベロスは『天雷』で大きなダメージを受けている。いっきにHPの10%近くは削ったと思う。それに『天雷』の補助効果で硬直している。


 よし! 残り10%だ!


 今だ!


「『集中』、『雷剣』!」


 俺は『集中』と『雷剣』も使ってケルベロスに斬り掛かった。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」

「『氷槍』、『氷弾』、『氷矢雨』!」 


 俺が得意のコンボを使うと、シルヴィーもここぞとばかりに魔法スキルを集中させる。俺もシルヴィーもここが決め所だと理解している。


「ぎゃあぁぁぁーーー!!!」


 ケルベロスは悲鳴を上げて苦しんでいる。


「『雷弾』、通常攻撃、通常攻撃、通常常攻撃、通常攻撃!」


 『天雷』と共通している硬直効果のCTが空けた瞬間、俺はすぐに『雷弾』を使った。ケルベロスは硬直している。よし! レジストされなかった!


 いける!


 俺は硬直効果のCTが独立している『雷剣』も使っている。ケルベロスは連続して硬直させられて攻撃できない。とにかくここで一気にケルベロスのHPを削り切る。狂乱状態のケルベロスに攻撃されたらシルヴィーが危険だ。もうケルベロスのHPは数パーセントしか残っていないはずだ!


 俺とシルヴィーはここぞとばかりに集中して攻撃する。


 しばらくすると30秒がが過ぎて『死線』の効果が切れた。『死線』の効果が続いている間に倒し切るつもりだったが…。やはりいくら俺のレベルが高くても二人での攻略は難易度が高い。


 だが、『集中』と『雷剣』の効果は続いている。そして、ケルベロスはもう瀕死だ。


 もう少し、もう少しだ! 『雷弾』のCTが空けた!


「『雷弾』!」

「ぎゃあーー!!」


 くそー! レジストされた! 


「うわぁーー!!!!」


 『雷弾』で硬直させてから『回転斬り』に繋ごうと思っていた俺は、狂乱状態のケルベロスの前足での攻撃を受けてしまった。


 油断した…。 


 ケルベロスの攻撃は速い。次々とケルベロスの尻尾が、顎が、そして前足が俺にヒットする。


 ガス! ドス! バギン!


「ぐふっ!」


 俺のほうがレベルは高いが相手は狂乱状態で攻撃力が大幅に上がっている。


 ドシン!


「ぐおおぉぉーー!!!」


 ケルベロスの踏みつけ攻撃を受けた俺は床に転がった。一応盾は構えていたのだが…。ダメだ…俺が…いなければ後衛のシルヴィーが攻撃されたら…。


 力を振り絞るが…俺は立ち上がれない…。


「レオ、撤退しよう! 帰還の腕輪に魔力を!!!」


 シルヴィーの悲鳴のような声が聞こえる。やばい…。頭がぼーっとしてきた。


 また何かを叫んでいるシルヴィーの声が遠くで聞こえた…。


 き、帰還の腕輪を…。それを最後に俺は意識を失った。





★★★





 次に気がついた時、俺はシルヴィーに膝枕をされていた。


「レオ、大丈夫?」

「ああ…。ケルベロスは?」

「ダメだった…」

「そうか…」

「思ったよりずっと強かったね」

「ああ」


 俺は黒獅子王を倒したことで調子に乗っていた。黒獅子王はケルベロスよりずいぶんレベルが高かった。だけど、ボスのようなギミックや特殊攻撃はなかった…。だから倒せたのだ。しかも運も良かった…


 それなのに…。


「私達ちょっと油断してたね」

「全くだ。この世界はリアルだってわかっていたはずなのにな。やっぱりボス戦はパーティーで挑むべきだ」

「そうだよねー。私のためにごめんね」

「いや、いいんだ。帰還の腕輪があったんだから…。勉強になった上、生き残ったんだから結果オーライさ。それに油断していたのは二人ともだ」 


 毒霧の範囲は思った以上に広かった。

 広がるスピードだってゲームで経験した以上に速く感じた。

 毒でHPが削られる速度だってそうだ。


 とにかく、実際に経験するとなかなかゲーム通りにはいかない。そうなると焦りも生まれる。やっぱり、命が掛かっている状況でゲームのように落ち着いて対処するのは難しい。最後はもう少しだと焦って攻め急いだのが敗因だ。この世界の人達のレベルがゲームの時より低いのもなかなか迷宮の攻略が進まないのも当たり前だ。


 いや、それどころか…。


 この世界の人達は一体どうやってこれをクリアしてるのだろう? もちろん4人パーティーでだろう。それでも『迷宮物語』の時でさえ、4人パーティーで挑んでも15階層のボス辺りからは何度も失敗してからクリアするのが当たり前だったのだ。俺がソロでゴレイア迷宮の10階層のボスを倒せたのは運がよかったことが一番だが、まだ10階層だったからだ。この世界では20階層はクリアされていないが、15階層はクリアされている。4大貴族の領地にも15階層まである迷宮はある。それらはすべてクリアされている。


 一体どうやって?


 この世界の人達の努力には頭が下がる。だが、王家や4大貴族には隠していることがありそうだ…。

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