5-6(シルヴィーとのレベル上げ~15階層のボス戦1).
俺とシルヴィーがボス部屋の扉に近づくと自動的に扉が開いた。奥には3つの頭を持つ4つ足の魔物がいる。ケルベロスだ。
大きい…。
だが俺に恐怖心はない。なんせ俺はこいつの首を咥えていた黒獅子王を倒したのだ。
「がおぉぉぉーーー!!」
「ぐぎゃぉーー!!」
「ごおぉぉーー!!」
ケルベロスは3つの口で咆哮すると俺達に向かって来た。
「『挑発』!」
まずは『挑発』で俺にヘイトを集める。ケルべロスが俺に向かって突進してくる。
「『ガード』!」
俺はケルベロスの突進を『ガード』で受け止めた。俺は『ガード』で受け止めた後、すぐにケルベロスを盾で思いっきり弾いた。突進を止められた上、後退させられたケルベロスは俺を睨んでいる。スキル『シールドバッシュ』に似た動きで俺は割とこれを得意にしている。もちろん本物の『シールドバッシュ』と違って硬直効果はない。
「『集中』!」
「『雷弾』!」
俺は、『集中』を使った後、すかさず『雷弾』を使う。ケルベロスを硬直させるためだ。実は15階層ボスのケルベロスは状態異常耐性の高い魔物で…というかここから先のボスはほとんどそうなのだが…あまり硬直したり移動不能になったりしない。だけど、俺のレベルは45であり15階層のボスはレベル30程度だ。これだけレベル差があればさすがのケルベロズもレジストできずに硬直している。
「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」
俺は、ケルベロスが硬直した隙にいつものコンボで攻撃した。
「『氷弾』、『氷槍』!」
シルヴィーも背後から魔法スキルで攻撃する。氷龍の杖の効果でシルヴィーの魔法スキルの威力はレベル以上に高い。それに『瞑想』も使っているようだ。
「ぐおうぅーー!!」
氷の弾と氷の槍が次々とケルベロスの左側の頭部を捉えた。ナイスだ。左側の頭部は氷属性の攻撃に弱く右側の頭部は炎属性に弱い。ちなみに真ん中の頭は普通だ。
怒ったケルベロスが頭を振って噛みつき攻撃をしてきた。
ガシッ! ガシッ!
俺は盾でケルベロスの噛みつき攻撃を防ぐ。スキル『ガード』を使わなくても盾での防御自体はできる。ステータス差で計算されたダメージは受けるが、俺のほうが圧倒的にレベルが高いのでそれほど大きなダメージは受けていない。それでも、スキル『ガード』を使うと最初の2秒間無敵だし自分で構えるよりも素早くガードの態勢に移れるので『ガード』が有用なスキルであることは間違いない。
俺はCTが空け次第『挑発』を使ってタゲを維持する。シルヴィーの攻撃はレベル以上に威力が高いのでタゲの維持には神経を使う。
似たような攻防が繰り返される。
俺のほうがレベルが高いとはいえ、相手も迷宮のボスだ。しかも、こっちは二人しかいない。俺もノーダメージというわけにはいかない。だが、シルヴィーが攻撃されるよりはいい。
「『氷弾』!」
シルヴィーがCTの短い基本スキルである何度目かの『氷弾』を使った時だった、ケルベロスが右の頭(俺達から見たらみたら左側だ)を小さく左右に振っている。よく観察しなければ見逃してしまうような動きだ。
「シルヴィー、右に避けるぞ!」
俺とシルヴィーはケルベロスの右の頭から離れるように俺達から見て右側に移動する。ケルベロスの右の口から大きな氷の塊が発射された。シルヴィの使う『氷弾』の何倍も大きな氷の塊だ。しかもスピードが速い。この攻撃は盾での防御が不可能だ。『ガード』の無敵時間でもダメージを受ける。ボスにはこの手の理不尽な攻撃が多い。知らなければレベルが高くても簡単にやられてしまう。
俺達の目の前に巨大な氷の塊が迫っている。本当は狙われた者が離れた場所に逃げたほうがいいのだが…。そんな余裕はなかった。
「『回避』!」
「『後方回避』!」
俺はスキル『回避』をシルヴィーは『後方回避』を使った。これら回避系スキルは素早く移動して攻撃を避けるだけでなくスキル発動中は無敵になってダメージを受け付けない。この世界ではスキルがなくても『回避』と同じような回避行動を取ることは可能だ。ただ、この無敵効果はスキルだけのものだ。ただし、回避系スキルの無敵時間は1秒もないくら短い。氷の塊は巨大なのでタイミングよく回避系スキルを使わないと完全には避けられない。
多くのボス魔物は盾での防御が不可能な攻撃や、反対に回避スキルの無敵効果が通用しない理不尽な攻撃を持っている。そのため、攻撃に応じて適切な対応をすることが必要だ。そのため『ガード』や『回避』のCT管理はかかせない。
ケルベロスの氷の塊をタイミングよく回避した俺はそのままケルベロスに接近した。この攻撃をした後、ケルベロスはしばらく攻撃してこない。こっちが攻撃するチャンスなのだ。
「『集中』、『雷剣』!」
今だとばかりに俺は『集中』と『雷剣』を発動した。
「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃!」
俺はケルベロスが攻撃してこないチャンスを逃さず『二段斬り』からのコンボを使った。最後はケルべロスが再び攻撃に移るまで通常攻撃をした。『雷剣』の効果で硬直したらさらに追撃するつもりだ。コンボは繋がれば繋がるほど威力が増す!
「ぐぐぎゃおぉーーー!!!」
ケルベロスは体をくねらせて叫ぶ!
「『氷槍』、『氷弾』!」
シルヴィーも魔法スキルで俺に続く。その時、ケルベロスの左前足と右後ろ脚が僅かに後ろに引かれた。
「シルヴィー!!」
俺は叫ぶ。
「80%だ!」
シルヴィーは慌てて俺の背後に移動する。ケルベロスが体を大きく右回転させた。
「『ガード』!」
「きゃあーー!!」
俺の後ろに移動しようとしたシルヴィーにケルベロスの回転攻撃が掠った。ケルべロスはHPが80%、60%、40%になった時に体を大きく回転させての全体攻撃をしてくる。そしてこの攻撃は回避の無敵効果では防げない理不尽な攻撃だ。そのため、予備動作を見逃さず大きく距離を取るか盾役の背後に移動する必要がある。盾役にも技術が求められる。ガードするタイミングがジャストでないとかなりのダメージを受けるからだ。今のはシルヴィーが俺の背後に移動するのが僅かに遅れ攻撃が掠ってしまった。
「シルヴィー!」
俺は弾き飛ばされたシルヴィーのそばに移動して盾を構えた。
「だ、大丈夫。掠っただけだから…。中級ポーションを飲むよ」
ポーションは飲むことにより効果が発動する。ポーションには最上級まであるのだがこの世界では上級までしか知られていない上、上級はもの凄く効果で一般には出回っていない。
「ふーっ」とため息を吐いたシルヴィーが「わかってたのに食らっちゃたよ」と言った。わかっていてもいきなり実行するのは難しい。死んだら終わりのこの世界でのボス戦がいかに危険かがわかる。ボス戦でポーションが使えるのは3回まで、さらにポーションのCTは1分だ。
その後も俺達は慎重に戦った。
「レオ、左の頭!」
ケルベロスの左の口から炎の塊が放たれた。
「『回避』!」
「『後方回避』!」
俺達は炎の塊を十分引き付けてから落ち着いて回避スキルを使った。かなり慣れてきた。
だが、炎の塊と氷の塊の攻撃には慣れてきたものの、ケルべロスのHPが60%の時の全体攻撃では、二人ともダメージを負ってまた中級ポーションを使った。『ガード』のタイミングが難しい。考えてみればゲームの時だって何回も失敗してクリアしたのだ。1回で成功したボス戦なんて最初の頃の5階層のボスとかくらいだ。
「『挑発』!」
俺は、俺からタゲは剥がれないように慎重に行動する。俺よりかなりレベルも低い後衛のシルヴィーが攻撃をまともに食らったら、それこそ帰還の腕輪を使う間もなく瀕死になってもおかしくない。
「『集中』、『雷剣』!」
俺はCTの空けた『集中』と『雷剣』を使う。
「通常攻撃、『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」
雷属性を纏った通常攻撃で硬直させてからのコンボ攻撃だ。レベル差のおかげで状態異常になりにくいボスに対して、そこそこの頻度で硬直が発生するのはありがたい。
「『瞑想』、『氷弾』、『氷槍』!」
シルヴィーも魔法スキルで俺に続く。
しばらく攻撃しているとHP40%の全体攻撃が来た。
「『ガード』!」
今度はジャストなタイミングでガードできた。もともと慎重に距離を取って攻撃していたシルヴィは予備動作を見逃さず攻撃範囲外まで退避していた。3度目の正直で完璧に避けることができた。
再び俺がタゲを取って背後からシルヴィーが魔法スキルで攻撃する。さらには『雷弾』と『雷剣』の効果で硬直したら、すかさずコンボを使うというパターンに戻った。
「思ったよりレジストされるね」
確かに、俺のほうがかなりレベルが高いのに時々レジストされる。だが、もともとボスの状態異常耐性はかなり高く設定されている。俺はむしろまあまあ、硬直するなと感じていたのだが、シルヴィーは逆で結構大変だと感じている様子だ。
「シルヴィーくるぞ!」
HPが20%を切る前に来る特殊攻撃だ!




