表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/66

5-3(この世界の現状).

 俺とシルヴィーは午前の授業の後、学園の食堂というかカフェテリアみたいなところに来ている。いつもならアディやステラ達と一緒だが今日はアディ達に断ってシルヴィーと昼食を取った。情報交換の続きをするためだ。


 昼食の前にアディに今日はシルヴィーと一緒に昼食を取ると言ったら、アディ「ふーん」と疑わしそうな目で俺を見ると「まあ、命の恩人だから仕方がないわね。シルヴィーなんて呼んでるみたいだし…」と言った。俺はそんなアディも可愛いなと思って見ていた。とにかくあのイベントを乗り越えてアディが生き残ったは本当に良かった。未だに元気なアディを見ると嬉しくなる。


「何よ、レオったら、嬉しそうな顔をして」

「アディ、僕にはアディを見て嬉しそうな顔しているように見えたよ」

「私もアルスの言う通りだと思うよ」

「もう…」


 そんな3人の会話を背に俺はシルヴィーの待つテーブルに向かった。


「それじゃあ。今日はこの世界の現状っていうか、王国の現状についてお互いの知識を確認するよ。ゲームとの違いがあればそれもね。まず、レオから説明して」


 シルヴィーが言った。学園の先生のようだ。


「分かった。俺がこの世界で生きてきた中で得た知識で言うと、ファミール王国はガリア大陸における大国の一つだ、ファミール王国には王家以外でその経済力や軍事力において大きな力を持っている貴族家が4つある」

「シュタイン公爵家、アマデオ公爵家、ビットリオ公爵家そしてアルメッサ―辺境伯家の4家ね」

「ああ。この4家は賢王ウルザルの時代に王家の力が強まり地方領主の軍事力が縮小された時も一定の力を保っていた。というのもこの4家は領地を他国と接していて王国としても彼らが一定の騎士団を維持することを認めざる得なかったためだ。おまけにこの4家の領地には迷宮がある」

「うんうん。私の認識と一致してる。この設定が後にプレイヤーが二つの陣営に分かれて戦うエンドコンテンツに繋がっている。そういうことだね。じゃあ、次は4大貴族について知っていることを説明して」

「シルヴィーは4大貴族じゃないけど伯爵家の令嬢だろう? 『迷宮物語』の知識を除いてもシルヴィーのほうが方が詳しいんじゃないのか?」

「まあ、そうかもだけど、いいからレオから説明してよ」


 右手の人差し指を立ててそう言ったシルヴィーはやっぱり先生のようだ。


 俺は「じゃあまずシュタイン侯爵家から説明するよ」と言って最初に4大貴族でも一番力があると言われているシュタイン侯爵家について知っていることをシルヴィーに話した。


 シュタイン侯爵派の領地は王国の南東に位置し南北に縦長だ。そして東のオルデン聖国とは縦長に国境を接している。間には遮る山脈などもない。両国ともその南側は海に面している。ファミール王国とオルデン聖国の関係は良くも悪くもない。オルデン聖国はその名の通り宗教国家であり、シズメア教と呼ばれる宗教が国を束ねていて最高権力者は教皇だ。シズメアとは救世主とされている人物の名であり、国の名前にもなっているオルデンとはその一番弟子の名前である。


「こんなとかなー」

「あとは…シズメア教は比較的新しい宗教で他の宗教を認めないちょっと過激な面を持ってるってことかな」


 その通りだ。そのことが関わってくるイベントもある。


「ただ、今のところはほどほどの対応というか、要は現実路線を選択している」

「うん。それに対して我がファミール王国は宗教や人種には比較的寛容な国家ね。私のように多くの国で嫌われることも多い魔族の血を引いているといわれている者にも比較的寛容だね」


 その通りだ。ファミール王国にとってはやや過激な教義を持つシズメア教はあまり好ましくない。国としてだけでなく国民の間でも好かれてはいない。王国民の多くはガリア大陸でもっとも一般的なリブラト教を信仰している。ただ、オルデン聖国と国境を接しているシュタイン公爵派の領地においては、特にその国境付近ではシズメア教を信仰する者もいる。王国内のシズメア教徒を保護するなどの名目でオルデン聖国が何か仕掛けてくる可能性はゼロではない。そして国境を守っているのがシュタイン公爵家を中心とする王国の南東部のシュタイン侯爵派の貴族達だ。

 

 シルヴィーは「だいたい私たちの知識に齟齬はないみたいだね」と言うと「次はアマデオ侯爵家ね」と言った。シルヴィーの指示に従い、俺はアマデオ侯爵家について説明した。


 アマデオ侯爵派の領地は王国の南西部に位置し大きな半島のような形をしている。半島に沿って南から西にかけて海に面している。半島の先にある領都チュニは東西の海洋交通の要衝として栄えている。北側はギグス王国だ。ギグス王国は小国で、もともとはファミール王国の一部だった。100年ほど前にファミール王国から独立したのだ。当時、ギグス侯爵家は経済的にも軍事的にも勢いがあったが、まだ賢王ウルザルが没して100年くらいであり、王家の力も今より強かった。しかし大方の予想に反してギグス侯爵は独立を宣言した。そして、それをいち早く認めたのがミタリ帝国だ。その後、当然のように戦争になったが、決着はつかず今の状態で落ちついた。ギグス王国の背後にミタリ帝国がいたからだ。


「それ以来、ファミール王国とギグス王国、ミタリ帝国連合は関係は良くないね」


 シルヴィーは俺の説明に相槌を打ちながら言った。


「ミタリ帝国…大陸最高峰のマナティス山とその地下に広がるマナブリア大迷宮を持つ国だな」

「うん。マナブリア大迷宮はザルバ大迷宮と並んで大陸最大の迷宮と言われている。ザルバ大迷宮と同じで未だに20階層のボスは討伐されていないみたいだね」


 『迷宮物語』は5年でサービス終了になったが、もしかしたらミタリ帝国編なんてストーリーが計画されていたのかもしれない。


「アマデオ侯爵領についてはこれくらいだ。次は…」

「次はビットリオ侯爵家の説明をお願い」


 俺は頷くとビットリオ侯爵家について話し始めた。


 ビットリオ公爵とその派閥の領地はファミール王国の北西部に位置している。そして今や仮想敵国と言っても差し支えないミタリ帝国と北側で国境を接している。領地の西側の半分はアマデオ侯爵派の領地と、もう半分はギグス王国と接している。東はアルメッサ―辺境派の領地だ。ビットリオ侯爵家の主な軍事的な任務はミタリ帝国に対するものだ。ギグス王国のほうは主にアマデオ侯爵家の担当だからだ。幸いファミール王国とミタリ帝国の領土の間には大陸の最高峰であるマナティス山が屹立し、その裾野には魔物が多く生息する広大な森林が広がっている。ミタリ帝国がファミール王国に侵攻しようとすればマナティス山を東西どちらかに迂回しつつ大森林を越えて来るしかない。これが両国の直接の戦闘を困難にしている。ちなみにマナティス山の北側(ミタリ帝国側)にマナブリア大迷宮がある。


「最後に俺の出身地でもあるアルメッサ―辺境伯派の領地について説明するよ」


 アルメッサ―辺境伯とその派閥貴族の領地はファミール王国の北東に位置し菱形をしている。その菱形の東西南北にある4つの頂点のうち西から北に伸びる線はミタリ帝国との国境線だ。ミタリ帝国とは国境を接しているがビットリオ侯爵領と同じで北のマナティス山の存在が天然の防壁となっている。これより西側はビットリオ公爵領だ。次に北から東に延びる線はリアブルク連合国のウラニア公国と接している。ウラニア公国とはマランヤ山脈の裾野辺りで小競り合いが絶えない関係だ。


 その小競り合いの一つで俺の親父はアモスを庇って死んだ…。


 東の半分はガリア大陸最大の山脈であるマランヤ山脈で塞がれている。そして東から南に延びる線はファミール王国の最高峰であるトリアデ山とその裾野である。ゴレイアの森があるノブリス男爵領もその辺りだ。さらには南から西へ延びる線の大半は巨大な湖であるロスノル湖と接している。三つの山脈や山と一つの湖に囲まれた領地は正に辺境と呼ばれるにふさわしい地域だ。

 

「レオありがとう。私の持っている知識と矛盾はないみたいだね」


 シルヴィーは大きく頷いて言った。どうやら俺達二人の持っているファミール王国の現状についての認識に大きな違いはないようだ。『迷宮物語』の知識ともだ。


「だけどね。それを変えようとしている者達がいるんだよ」

「それって…?」

「インプレサリオ達よ」


 かつての『TROF』の仲間達だ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こういう地方ごとの設定大好き。 地図が欲しくなるけれど……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ