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4-3(レベル上げ).

「はあーっ! 『刺突』、『3連突き』!」


 プリマドンナが気合をいれて、グレアムの固有魔法ともいうべき『黒炎爆陣』で黒炎に包まれたガーゴイルの首を槍で攻撃した。するとガーゴイルは魔石になって消えた。『3連突き』はプリマドンナのスキルの中でも今のところ一番威力の高いスキルの上、一段階攻撃速度が強化されている。攻撃速度は攻撃威力以上に重要だ。いかにコンボを繋げるかに影響するからだ。実際、今のは『刺突』で仰け反らせてからの『3連突き』のコンボで『3連突き』を最後まで命中させていた。


「セルゲイ様、レベルが上がったようです」


 グレアムが顔を輝かせて報告してきた。あれからグレアムは忠犬のように僕を慕い仕えてくれている。それにグレアムは上級魔法使いなのだが特殊な魔法スキルをいくつか覚えている。それらはだいたいにおいて通常の魔法スキルより威力が高い。おそらく、これらが強化されて伝説職の魔王で使える魔法スキルになるんだと僕は考えている。プレイヤーの場合は伝説職の魔王になって初めて魔王特有の魔法が使えるようになる。それに対してグレアムはその前段階のような魔法スキルを既に持っているのだ。やっぱり、グレアムを仲間にしてよかった。


「これでグレアムもレベル23で私と同じね」

「はい。プリマドンナ様、光栄です」


 僕、プリマドンナ、マエストロ、そしてグレアムの4人はダゴン迷宮でレベル上げをしている。たった今、10階層のボスであるガーゴイルを倒したことによりグレアムがレベル23になったようだ。僕はレベル26でマエストロは25だ。これだけレベルが高ければ10階層のボスなどクリアできるのが当たり前だ。僕がクレリック、プリマドンナが上級槍士、マエストロが上級重剣士、グレアムが上級魔法使いとパーティーとしてのバランスもいい。


「この調子で当面はできるだけ4人でダゴン迷宮でレベル上げをしよう」


 通常の2倍の経験値を得られるダゴン迷宮は『迷宮物語』のサービス終了間際にやけくそのように付け加えられた迷宮だ。このためボスはすべて使い回しだ。5階層のボスはシュタイン侯爵領のバセスカ迷宮と同じデュラハン(僕は倒した経験がある)、10階層のボスはアルメッサー辺境伯領にあるネイハム迷宮とおなじガーゴイル(さっき倒したやつだ)、15階層のボスはヒューロン迷宮とおなじメデューサ、そしてラスボスである20階層のボスはザルバ大迷宮と同じヒュドラ(こいつはかなり強い)だ。


「インプレサリオとマエストロは10階層程度じゃあ、もうレベルは上がらないでしょうけどね」

「まあ、それは仕方がないよ」

「俺が学園を抜けてこれるのがほぼ週末だけなのが痛いっスね。まあ、長期の休みのときに集中してやるしかないっスね」


 実際にはマエストロは週末以外にも授業をかなり欠席している。マエストロは『迷宮物語』の舞台であるカイル探索者養成学園に通っている。既に入学から半年近くが経過している。


「それに思った以上にボス戦の難易度が高いのが問題ね」


 プリマドンナの言う通りだ。


 今倒したガーゴイルは盾防御不可の空中からの突撃、レーザービームのような範囲攻撃、HP20%を切ってからの仲間を召喚する攻撃など、複数の特殊攻撃やギミックを持っていた。これらは知っていても完全に防ぐのは難しかった。僕達は安全を見て一番レベルの低いグレアムも含めて全員がレベル21越えて上級職になってから挑戦した。かなり余裕を見たつもりだったのが、最初は僕の回復だけでは間に合わず持っていた中級ポーションを限界の回数まで使ってクリアした。


 まあ、一度クリアしたらレベルも上がったし慣れてきて徐々に簡単になったのだが…。


 それにしてもラングレー達とバセスカ迷宮の10階層をクリアした時にも思ったんだけど、この先のボス戦では帰還の腕輪を用意したほうが良さそうだ。この世界でのボス戦は思った以上に危険だ。特に15階層のボスからは『迷宮物語』の経験でも急速に難易度が上がる。


「それとグレアム、前にも言った通りグレアムは地上の魔物を含めて弱いやつでもいいからできるだけたくさんの魔物を討伐しておくんだ」

「はい。セルゲイ様。それもできるだけ違う種類の魔物をですよね」

「そうだ」


 グレアムにはゲーム通り最終的には魔王を目指してもらう。魔王になる条件は魔物を倒した数とその種類だ。これは魔物の種類に違いがあるだけで勇者も同じだ。マエストロは勇者を目指すと言っていたが…。


「今、この迷宮でレベル上げしているのは私達も入れて3パーティーだけなのよね」

「うん。信用できるものに絞っているからね。まあ、徐々に増やしていくよ」


 僕達のほかはラングレー達ともう一パーティーだけだ。


 ラングレー達のパーティーは僕の代わりに初期から『B・リュス』の護衛隊に加わっていた回復役を加えて攻略に励んでいる。今のところ、僕たちと並んで強力なパーティーだ。本当はもっと大人数で強力なヴィガディール男爵騎士団…正確には自前の騎士団を持つことを認められているのは4大貴族だけなので従者団だ…を創設したいところだが…。今のところは信用できる者ということでこの人数に留めている。


「それはいいっスけど、もし、俺達より強くなったらどうするんスか」

「それもあって、信用できるものだけにしているんだ。でもマエストロ、たぶん心配する必要はない。この世界の人達はスキルを自分で選択できない。だから最強のビルドを構築することができないんだ。それとコンボもあまり知られていない。スキルを選べないんだから当然だ。さらに、多くの上級職や最上級職の取得条件が知られていない。だから一番なりやすい職がほとんどなんだ」


 それはこの世界の人が馬鹿だからでも工夫をしてないからでもない。『迷宮物語』では最盛期には10万単位のプレーヤーが攻略を競い、ネット上に情報が溢れていた。しかもプレーヤーは何度死んでもやり直せる。それと同じ情報が死んだら終わりの現実世界で手に入るはずもない。


 それに…。僕はちょっと気になる事実に気がついていた。もう少し確認してからみんなに報告するつもりだ。


「ちょうどグレアムのレベルも上がったから今日はここまでにしよう」


 僕の言葉に全員が頷き10階層ボス部屋の先にある転移魔法陣で1階層の安全地帯に帰還した。


「それで、マエストロ、学園のほうはどうだ?」

「ああ、相変わらずゲームよりは皆成長が遅いっスね。あれじゃあ、卒業までに最上級職になるのは無理っスよ」

「ラインハルトでさえ、レベル30前後らしいって言ってたものね」

「そうなんだ」

「そもそもこの世界最強っていう設定のジギルバルト王国騎士団長がカンストしてないんだから無理もない」


 ジギルバルトはアップデート前のストーリーでラスボスとして登場する。それには王妃の件とトガムゼの呪いが関わっている。ちなみに追加されたストーリーでのラスボスはグレアムだ。


「それで、主人公が誰かは分かったの?」


 僕はマエストロに尋ねた。


「おそらくレオニードとかいう剣士っスね」

「なぜ、そう思う?」

「最初の実践授業で教師相手に一番善戦したのがレオニードなんっス」

「ふむ。平民で特待生でもないのにそれは…確かに怪しいね」

「それに、チュートリアルが発生したようっス」

「チュートリアル…。真神が出るやつか?」

「そうっス。俺は、レオニードはチュートリアルをクリアして『光の守護者』を獲得したんじゃないかと睨んでるっス」

「なるほど」

「で、インプレサリオ、どうするの? 予定通り排除するの? そもそも、マエストロにできるの?」


 プリマドンナがマエストロを挑発するように言った。一応この世界はゲームではない。だから、『迷宮物語』の時と同じくこの世界の覇権を握りたいのなら人殺しを避けることはできない。僕にはもともとその覚悟はある。他の3人はどうだろうか?


「俺だってやる時はやるっス」


 マエストロはそんなことはなんでもないと言うように胸を張った。今のマエストロのレベルは25だ。一年生の中ではクリスティナ王女と並んで最強だと思う。今の主人公を排除するには十分なレベルだ。しかし学園には上級生や教師などマエストロより強い者はいる。


「とりあえず、もう少し様子を見よう。ゲームよりこの世界の人たちは全体的にレベルが低い。主人公がゲームと同じように成長して僕たちの障害になるかどうかも不明だ」


 『迷宮物語』ではストーリーが終わる頃、つまりカイル探索者養成学園を卒業する頃には主人公はカンストする。だが、現実世界であるこの世界ではいくら主人公が成長が早まる加護を持っていたとしてもそこまでは難しそうである。一方、僕の計画では、あと2年くらいの間には僕達はレベル59に到達する。僕たちの知識とダゴン迷宮の効果で十分可能だと思っている。ただ、僕達とて死んだら終わりなのだから、焦ってはいけない。


「分かった。もうしばらく様子を見るっス。やるとしたら、あれかな。例の全学年合同訓練のときっスかね」

「そうだね。チャンスではありそうだ。あのイベントで主人公の友人が何人か死ぬはずだから、どさくさに紛れて主人公も始末してしまうっていう手もある」


 全学年合同訓練はまだ数ヶ月先の話だ。それまでは主人公がどのくらい強くなりそうかマエストロに見張らせておけばいいだろう。

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