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3-18(黒獅子王2).

 黒獅子王は魔剣ソウルイーターを見ると「グルルゥー!」と低く唸って俺に飛び掛かってきた。俺は転がるように移動してそれを避けた。


 ドン!


 今度は踏み付け攻撃だ。あ、危なかった…。 


 さらに黒獅子王は頭を振って暴れるようにして攻撃してくる。


 ゴン、ゴン、ゴン、ゴン!


 今度は俺はそれを盾でスラすようにして受ける。レベル差から考えてまともに受けたらただでは済まない。上手く受け流しているつもりなのに俺はかなりのダメージを受けている。絶望的なレベル差を実感した瞬間だ。


 俺は円を描くように移動するが黒獅子王は速い。素早く向きを変えて攻撃してくる。


 俺は盾を操りながらギリギリでそれを躱す。それでも何度か黒獅子王の勢いに押されて地面をゴロゴロと転がった。その度にすぐ立ち上がって盾を構える。攻撃するチャンスが全くない。日頃の訓練とクリスティナ王女のバフのおかげでこれだけレベル差があっても瞬殺されずに済んでいるが、とても反撃などできない。


 そんなことが何度か繰り返される。一方的に俺のHPは削られている。


 俺が本当の盾職でスキル『ガード』を持っていれば『ガード』を発動した最初の2秒間は無敵だ。残りの時間は盾の性能と自身のステータスに応じて防御能力が決まる。盾を構えていられる時間は盾職専用のスタミナによる。この世界ではスタミナゲージは表示されないので残量はわからない。まして俺は専門の盾職ではない。ただ、俺はこれまで盾を構える力がなくなって困ったことはない。


 何度目かの黒獅子王の攻撃を躱したとき黒獅子王の口元が少し光っていることに気がついた。


 まずい…。


「ガアーッ!」


 黒獅子王は口を大きく開けると黒い炎を吐いた。黒獅子王の必殺技だ! というか召喚獣の必殺技だ。召喚獣の能力はどれも基本的には変わらない。ガチャ産であっても外見が少しカッコいいだけだ。


 俺は盾で黒い炎を防ぐ。盾を持つ手が熱い。一般級のキマイラの盾ではこの黒い炎を完全には防ぐことはできない。俺のダメージはどんどん蓄積する。HPがどんどん削られている。体に力が入らない。これは瀕死ってことじゃないのか…。


 そのときやっと黒い炎が終わった。


「『死線』!」


 HPが20%切ったことにより俺は『死線』発動した。『死線』を発動できても全く安心感はない。むしろもうHP20%を切ったことに俺は愕然としていた。


「『集中』!」


 さらに『集中』を発動する。


 『死線』により筋力、耐久、器用、俊敏、知力、精神、6つのステータスが2倍になった。さらに『集中』により筋力、俊敏が1.2倍になり、さらに物理攻撃スキルのCT時間が短縮された。まだ、ぎりぎりクリスティナ王女のバフも残っているはずだ。瀕死のはずの俺に力が漲る感覚が襲ってきた。


「『天雷』!」


 俺は、あのときと同じように声に出して叫ぶと『天雷』を発動させた。『天雷』はレベル41でなれる最上級職の魔導士が覚える魔法だから黒獅子王にだって多少は通用するだろう。


 バリバリと無数の稲妻が黒獅子王に降り注ぐ。黒獅子王は体をくねらして咆哮する。さすがに10階層のボスと違って黒獅子王は『天雷』だけで倒せるような魔物ではない。だがダメージは与えている。『天雷』には相手を硬直させる効果があるがレベル差のためにその効果はほとんどレジストされている。


 だが、『天雷』を耐えている黒獅子王を俺は冷静に観察する。


 今だ!


「『二段斬り』!」


 俺は一瞬硬直した黒獅子王に『二段斬り』を放った。『天雷』の硬直効果はほとんどレジストされているが、これだけ稲妻が降り注げば1回くらいは硬直する。ステータス差から計算された確率の問題だ。


 さらに俺は攻撃を続けた。


「『ダッシュ』、『スラッシュ』!」


 『二段斬り』の後の硬直を『ダッシュ』でキャンセルして、そのまま『スラッシュ』に繋げた。得意のコンボだ。


「『雷剣』!」


 すぐに『雷剣』を使う。


「通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃!」


 上がっているステータスで攻撃しまくる。魔剣ソウルイーターの効果で少しずつHPが回復する。一方で黒獅子王も前足や頭で攻撃してくる。俺は盾でスラして対応しているが当然のようにダメージを受けている。HPの回復と受けるダメージが拮抗している感じだ。


 よし! 硬直が発生した。『雷剣』の効果だ!


「『二段斬り』、『ダッシュ』、通常攻撃、『スラッシュ』、通常攻撃!」


 通常攻撃を挟みながらコンボを繋げる。こうしたコンボと呼ばれる連続攻撃は『迷宮物語』では中断せずに繋がれば繋がる程威力が増すという仕様だ。なので最期の通常攻撃は通常の威力ではない。その上、俺のステータスは『死線』と『集中』で上がっている。さらに魔剣ソウルイータの補助効果とクリスティナ王女のバフのおかげで攻撃速度と攻撃威力がかなり上がっている。


 ついでに言えば、『雷の守護者』の効果で俺の俊敏は常時1.1倍だ! 今この瞬間は、俺の攻撃は黒獅子王に通用している!


「グゴォォーー!」


 黒獅子王が叫ぶ! 耳が痛い。


 俺は圧倒的な強者である黒獅子王にダメージを与えた。だが、それでも倒すことはできない。当たり前だ。俺と黒獅子王の間に絶望的なレベル差がある。それでも、ここまで善戦しているのだから俺は誇ってもいいだろう。とにかく手数が大切だ。魔剣ソウルイータの効果は相手にダメージを与える都度HPが回復するというものだ。実際、さっきより体が少し楽になった。受けるダメージを魔剣ソウルイーターの回復効果が少し上回ったみたいだ。


 まだいける! 相手だってダメージを受けた。


 だが既に『死線』の効果は切れている。『死線』の効果は30秒しか続かない。『集中』の効果だってそろそろ切れる。『集中』は効果は1分だ。もう一度使うには『死線』が14分、『集中』は2分待つ必要がある。


 何かないのか? 


 俺は黒獅子王を観察する。黒獅子王も俺を観察している。ジリジリと時間が経過する。


「『雷弾』!」


 ダメだ! 硬直は発生しない。レベル差から考えて普通のことだが、それでもがっかりした。俺は「うおー!!!」と気合を入れると黒獅子王に斬り掛かった。


「『二段斬り』…うわっ!!」


 俺は、強引にさっきと同じコンボを使おうとしたが硬直が発生してないので『二段斬り』の途中で中断され、かなりのダメージを受けた。


 くそー!


 せっかく魔剣ソウルイーターの効果で少しHPが回復していたのに…。焦り過ぎだ。冷静にならなくては…。


 最初と同じように黒獅子王が飛び掛かってきた。今度は俺はスキル『回避』で避けた。『回避』には無敵時間がある。よく考えたら強力な攻撃に対しては最初から無敵のある『回避』を使うべきだった。


 冷静になれ、冷静になれ、俺は自分に言い聞かせる。


 最初と違って『回避』を使ったので今度は黒獅子王の飛び掛かり攻撃でダメージを受けなかった。


 致命的なダメージだけはなんとか『回避』で避け、その後スキルが再使用可能になり次第、俺がコンボで反撃するという攻防が繰り返された。『雷弾』と『雷剣』の効果で少しでも硬直が発生したらコンボで反撃するというパターンだ。俺は魔剣ソウルイーターの効果で攻撃する度にHPが回復している。感覚的には20%前後で増えたり減ったりしている感じだが全体的には徐々に減っている。

 だが、黒獅子王のHPも少しずつではあるが確実に減っている。召喚獣にはHPを回復する機能はない。回復しようと思えば主が回復魔法スキルを使うしかない。だが、この場に黒獅子王を召喚した主はいない。


 それにしても、こんなにレベル差があるのに、なぜ俺はここまで善戦できているのか……。


 もちろん、魔剣ソウルイーターの効果と俺が格上に挑むのに向いてる『死線』を持つ魔剣士であるおかげではある。だけど、それだけじゃない。


 そうか…。


 こいつは迷宮のボスとは違う。一番危険なのは黒い炎のブレスだが、それ以外にはプレイヤーを困らせる特殊攻撃やギミックはない。回避不可とか盾防御無効とかいう理不尽な攻撃も持っていない。HP20%を切っても狂乱状態になったりしない。大体、こいつは魔物を倒すための魔物であってNPCやプレイヤーを相手にする魔物じゃない。攻撃も単調だ。


 そうか…。こいつは人を相手にするのがあまり得意じゃないんだ。それで俺はここまで善戦できている。


 こいつは圧倒的に高いステータスで攻撃してくるだけの魔物だ!


 俺は絶望の中に微かな光を見出した…。

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