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3-12(パーティーメンバー).

 俺とアディは学園に複数ある会議室のような部屋の一つにいる。今は放課後だ。この第二会議室と呼ばれている部屋はアルメッサー辺境伯派専用の部屋のようになっている。今日この部屋には学園に在籍しているアルメッサー辺境拍派生徒20人ほどが集まっている。一年生から三年生までのアルメッサー辺境伯派の生徒全員である。


 テーブルの中央に座るのはアディだ。


 学年は関係ない。なんといってもアディはアルメッサー辺境伯の娘だ。アディの隣には三年生のホレイショ・アッパーヒルが座っている。アッパーヒル伯爵家はアルメッサー辺境伯派の有力貴族で、ホレイショ先輩はアディが入学してくるまで学園のアルメッサー辺境伯派のリーダーを務めていた。職は上級剣士だ。


 俺達はお互いに自己紹介したりホレイショ先輩から今のカイル探索者養成学園内での力関係の説明を受けたりした。それによるとやはり王族派とシュタイン侯爵派が勢いもあるし人数も多いらしい。学園は国の縮図だ。王族派と4大貴族の関係はさらに大きく二つに分けられる。アルメッサー辺境伯派は王族派に近く、シュタイン侯爵派を筆頭としてアマディオ侯爵派、ビットリオ侯爵派の3つは地方貴族の独立性を高めようとする派だ。ちなみに中立派貴族もそれなりにいる。

 『迷宮物語』ではこの大きな二つの派閥の争いが後の戦乱の時代に続き、エンドコンテンツの一つである陣営戦に繋がることになる。できれば俺としてはそれを避けたいのだがさすがにそれを個人でするのは難易度が高過ぎる気がする。トガムゼの呪いの件もある。


「さて2週間後にはカイル探索者養成学園の大きなイベントである迷宮での全学年合同訓練が行われる」


 全員ホレイショ先輩の言葉に真剣に耳を傾けている。少なくとも表面上は…。この全学年合同訓練は、訓練というより恒例行事といったほうがぴったりくるイベントだ。このイベントが終われば春休が近い。


「そこで合同訓練でのアデレード様のパーティーメンバーを決めておこうと思う」とホレイショ先輩が言った。

「全学年合同訓練は派閥間の競争のようになっているのよね」とアディが確認した。

「はい。全学年合同訓練は訓練と名はついていますが、本来は生徒間の親睦の場です。それが、近年では派閥の力を誇示する場にもなっています。特に各派閥を代表するパーティーの活躍度合いは注目されています」


 全学年合同訓練は本来訓練であると同時に学年を越えた親睦の場だ。それが、最近では、派閥間で勝手に、こんなに深い階層まで行ったとか、こんなに多くの魔物を討伐したとか、こんなに凄い魔物を討伐したとか、自慢し合う場になっている。まるで貴族の権力争いの縮図だ。馬鹿馬鹿しいようにも思うが、貴族にとってはそれだけプライドというのは大事なのだ。


「各パーティーの人数は当然4人だが、この訓練では一つのパーティーに必ず全学年の生徒が含まれている必要がある。そして、当然アデレード様が参加するパーティーが我がアルメッサー辺境伯派を代表するパーティーということになる」

「去年はどんな感じだったの?」


 アディが質問した。


「誰が見ても一番活躍したのは王族派のパーティーです。なんせラインハルトがいましたから。今年も王族派が一番のライバルとなるでしょう。三年になったラインハルトがいる上に、メインパーティーの一年はクリスティナ王女になるでしょうから」

「それで、去年ラインハルト達は何階層までいったのかしら?」

「10階層です」


 それは…。


 10階層は『迷宮物語』ではレベルが20前後になってから行く場所だ。この世界なら安全マージンを考えてもう少し高いレベルが必要だろう。


「まさか10階層のボスも…」

「いや、一年生と二年生を加えたパーティーでそこまでは…。ですが今年は10階層のボスを攻略してその先まで行く可能性もあります。実際、ラインハルトは既に10階層ボスを三年生のパーティーでクリアしています。合同訓練では一年生と二年生を加える必要がありますが、一年から参加するのはクリスティナ王女でしょうから、返って強化されるまであります。10階層のボスをクリアする可能性は高いでしょう」


 ラインハルトの三年生パーティーは10階層のボスをクリアしているのか…。さすがカイル探索者養成学園の生徒は優秀だ。クリアしたパーティーの平均レベルは25くらいはあるだろう。ということは俺とほぼ同等だ。中でもラインハルトは三年生の中でも最優秀と言われている。卒業も近いこの時期ならレベル30を越えていても不思議ではないか…。


 ん? なんだか頭が痛い…。 


「もちろん俺は諦めているわけじゃない。多くの魔物を倒して目立つとかいろいろやりようはあるだろう。とにかくアルメッサー辺境伯派として恥ずかしくない活躍をしなければならない」


 ホレイショ先輩の言葉は諦めていると言っているようなものだ。王族派のクリスティナ王女やラインハルト達より目立つことはできないと思っているのは明白だ。


「とにかく、アデレード様のパーティーを決めなくてはならない」


 ホレイショ先輩が話題をパーティー編成のことに戻した。


「まずアデレード様と俺は決まりだ。そして二年生からはコーネリアを加えたい」

「特待生でもない私が?」


 コーネリアとは二年の…確かコーネリア・グラスだ。グラス子爵家の次女だ。コーネリア先輩はホレイショ先輩の指名に戸惑っている。


「もちろん特待生を優先しいところだが、必ず全学年から一人は参加する必要がある。何よりもコーネリアは僧侶だ。コーネリア、今のレベルは?」

「…14です」


 二年生とはいえ、特待生でもないコーネリア先輩がレベル14なら優秀だ。


「『浄化』や『解毒』は使えるか?」

「『浄化』は使えますが『解毒』は覚えてません」

「そうか…。まあ、已むを得ない」


 10階層辺りから毒を使う魔物が現れる。


 浄化は硬直や麻痺などの状態異常を解除できる魔法スキルだ。ゲーム時代には、特にPVPでめちゃくちゃ役にたつが、一方でプレーヤースキルが問われるスキルだった。一瞬で硬直を解除するためには事前に予測して発動する必要がある。PVPでこれが上手い回復役と組めば無双できる。もちろん、魔物相手でも役に立つ場面はある。


「バフスキルは?」

「えっと、『攻撃速度上昇』が使えます」

「それはいい」


 レベル14なら僧侶の職レベルは7だ。職スキルは4つ覚えているはずだ。基本スキル『回復』は間違いなく持っている。残り一つが『後方回避』ならいいんだが…。


「回復役は必要だ。我が派閥の三年生に回復役はいない。だからコーネリア頼む。去年は神官の先輩がいたんだが…」


 ホレイショ先輩の言葉にコーネリア先輩は「はい」と頷いた。


「さて、これで既にパーティーに一年と二年が一人ずついる。なので最後の一人は三年のサミュエルにしようと思う」


 三年生のサミュエル・レッドリバーは特待生で上級魔法使いだ。


「ホレイショ、私は魔法使いです。それではパーティーのバランスが悪いのでは?」


 アディは三年のホレイショ先輩に対しても呼び捨てだ。普段はホレイショ先輩とかホレイショ様と呼んでいるが、この場はアルメッサー辺境伯派の集まりであり、アディは派閥のリーダーでアルメッサー辺境伯の娘だからだ。


「確かにバランス的には盾役が欲しいところではありますが、三年生の特待生は私とサミュエルだけですし…。特待生以外にも盾職はいません」

「二年生は?」

「二年生なら『重槍士』のケヴィン・クライがいますが、まだ上級職にはなってません。特待生でもないですし…。サミュエルのほうがレベルがかなり上になりますが…」

「うーん、やっぱり盾役は欲しいわね」

「それじゃあ、ケヴィンにしますか?」

「いえ、4人目のメンバーはレオニードにするわ」

「なんですって! アデレード様、レオニードは平民です。特待生でもありません。しかも重剣士ではなく剣士のはずでは? まあ、なかなか優秀だと噂は聞いていますが…」


 噂というのは、7階層で俺達を見たという噂のことだろう。


「レオニードはいつも私のパーティーで盾役をしてくれています」

「盾役を? それは確かに『剣士』であっても盾を装備することはできますが…」


 『迷宮物語』とは違い、この世界では『剣士』が盾を持ってはいけないという決まりはない。俺は、アディ、アルス、サラと一緒のときは最近ではいつも盾役をやっている。当然『ガード』や『挑発』は持っていないが、俺の高いステータスによる攻撃によってヘイトを集めている。盾を装備するとステータスの俊敏にマイナス補正がかかるらしいのはゲームと同じだが、俺は『雷神の守護者』の称号を持っているのでほぼ相殺されている。もちろん細かいステータスは表示されないので感覚で判断してのことだ。


 改めて『雷神の守護者』はチートだと思う。


 ちなみに盾は武器扱いなのでボスからドロップする。剣と盾を両方装備しても武器に備わっている攻撃力や攻撃速度などの基本性能が二重に計算されるわけではない。それぞれを使った時にはそれぞれの性能が適用され、それ以外の時は高いほうが適用される。確か『迷宮物語』ではそうだった……と思う。


「それにレオニードは私と一緒にすでに5階層のボスをクリアしています」

「そうですか…。あの噂は本当だったんですね」

「ええ、間違いありません。おかげで私のレベルは既に17です。レオニードのレベルは私より上です」

「……1年でレベル17。レオニードはそれより上…」

「わかりました。4人目はレオニードにしましょう。ただし、盾役をやってもらうという条件でだ。いいなレオニード」

「はい」


 これは、アディと事前に打ち合わせていたことだ。俺はアディと一緒に合同訓練に参加する必要がある。絶対にアディの側を離れない。


 全学年合同訓練中にアディが死亡するイベントが発生するからだ!

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