3-10(5階層周回の結果).
俺、アディ、アルス、サラの4人は、あれから休日の度に5階層のボスに挑戦した。一日に1回だ。迷宮は広いので最短距離を通っても一日1回が限度なのだ。そして、5階層のボスではレベルを上げるが難しくなってきた。ただ、レベルが上らなくなってからもしばらくは5階層ボスの周回を続けた。アイテムボックスを持っていないアルスのための金策だ。その結果、5階層のボスから手に入れた武器やアイテムを売ってアルスのアイテムボックスを手に入れることができた。
「僕のためにごめんね」
そう言いながらも、とうとうアイテムボックスを手に入れたアルスは嬉しそうだ。それに最近はアルスの実家への仕送り金額も増えた。サラのレベルも上がりパーティーの重要な戦力になっている。『光の守護者』のおかげで相変らずアルスのレベルのほうが高いが大きく差が開くこともない。サラも頑張っている。
それよりも俺の知らなかったアイテムが落ちたのには驚いた。それはなんとそれは帰還の腕輪だ。これを使うと1回だけボス戦から撤退できるんだそうだ。
帰還の腕輪がドロップしたとき「1階層の安全地帯の魔法陣に帰還できるのよ。ボス部屋でしか使えないわ。たぶんクリスティナ王女とかアルベルトは持っていると思うわ」とアディが教えてくれた。帰還の魔法陣の個人版みたいなものだ。ただし、ボス部屋でしか使えない。
あの時の会話を思い出す。
「じゃあ、アディも」
「ええ、お父様から渡されてるわ。アイテムボックスの中よ。そもそも、初めてのボスに挑戦する時は、全員これを着けることが推奨されているわ。もしかしてレオは知らなかったの?」
「ああ」
「レオのレベルが凄く高いから、大丈夫なんだと思ってたわ」
「そ、そうなのか…。俺は平民だし学園に入学するまで迷宮とは縁がなかったから知らなかったよ」
実際、ゴレイア迷宮を発見するまでは迷宮とは縁がなかった。
「レオ」
「なんだよ、アルス」
「授業でも帰還の腕輪のこと…説明があったよ」
「……」
それはともかく、ゲームである『迷宮物語』とは違い死んだら終わりのこの世界で、いくら余裕を持ったレベルで挑戦しているとはいっても、初見のボスをどうやってクリアしているのかと疑問に思っていたが、こんなアイテムが存在していたのだ。これは現実であるこの世界とゲームである『迷宮物語』の辻褄を合わせるために存在するアイテムなんじゃないだろうか?
「アディ、これってどのくらい貴重なアイテムなの?」と尋ねた俺にアディは「そうね。4大貴族や高位貴族はそれなりに持っているけど、その多くは王家から分けてもらっているものだと思うわ」と答えてくれた。
「じゃあ、王家は?」
「ええ、王家はかなりの数を持っているって噂。王家の権力の源の一つと言ってもいいわね。王家が帰還の腕輪をどうやって集めてるのかは私も知らないわ」
王家の権力の源の一つ…。確かにこの世界での迷宮攻略の重要性を考えれば理解できる。それにしても、王家はどうやって手に入れているのか? 4大貴族の娘であるアディでさえ知らない。まだ、この世界には謎が多い…。
もしかしたら、今回は主人公のアルスがいるからドロップしたのではないだろうか…。
そう考えた俺は、あの時、帰還の腕輪をアルスが持つように提案した。アルスは固辞したがアルス以外は俺に賛成した。アルスは渋々「じゃあ、僕が預かっておくってことで」と言って受け取った。アルスは主人公だ。この先、この世界のために必要な男だ。
俺がそんなことを考えているとアディが「私達、いい感じになってきたわよね」と足を肩幅に開いて腕を組む例の悪役令嬢スタイルで言った。今俺たちがいるのは放課後の教室だ。他の生徒が何事かとアディを見ている。
「ああ」
「そうだね」
「アデレードの言う通りね。これからも頑張りましょう!」
アディに言う通り俺たち4人のパーティーは順調だ。アルスとサラも気持ちのいい奴らでゲームの主人公云々は別としても友人になれてよかったと思う。この世界の主人公がどんな性格なのかちょっと心配したが普通にいい奴だった。
そして5階層のボスを周回した俺たちのステータスがこれだ!
【レオニード・メナシス 15才】
<レベル> 27
<職業> 魔剣士4
<スキル> スラッシュ、二段斬り、ダッシュ、回避、集中、雷剣、死線
<魔法スキル> 雷弾、天雷
<称号> 雷神の守護者
<武器> 魔剣ソウルイーター(伝説級、特殊効果:HP吸収、補助効果:攻撃速度+5%、攻撃速度+3%)
キマイラの盾(一般級、補助効果:HP増加+1%)
<装備アイテム> 力の指輪(一般級)、知恵の指輪(一般級)
【アデレード・アルメッサー 15才】
<レベル> 16
<職業> 魔法使い8
<魔法スキル> 炎弾(A+1)、炎槍(A+1)
<武器> キマイラの杖(レア級、補助効果:魔法攻撃力+5%、魔法攻撃力+3%、魔法攻撃力+1%)
<アイテム> 知恵の指輪(レア級)
【アルス 15才】
<レベル> 17
<職業> 剣士9
<スキル> スラッシュ、回避、回転斬り、跳躍斬り、集中
<魔法スキル> 風刃(C+1)
<称号> 光の守護者
<武器> キングオーガの剣(一般級、補助効果:攻撃速度+1%)
<アイテム> 力の指輪(一般級)
【サラ・フィッシャー 15才】
<レベル> 15
<職業> 弓士8
<スキル> 強射、チャージショット(A+1)、後方回避
<武器> コカトリスの弓(一般級、補助効果:HP持続回復0.5%)
<アイテム> 必殺の腕輪(一般級)
俺のステータスは変っていない。5階層のボス程度ではレベルアップしない。
アディはレベル16になった。スキルとしては『炎弾』と『炎槍』の威力を強化することができた。強化A+1とは威力が一段階強化されているという意味だ。キマイラの杖 の補助効果も含めればアディの魔法攻撃力はかなりものだ。ただ、『迷宮物語』では必須と言われていた『後方回避』も『瞑想』も覚えていないのが気になる。『後方回避』は後衛がバックステップして攻撃を回避するスキルだ。そして『瞑想』は剣士の『集中』に似たスキルで1分間、ステータスの知恵と精神が上昇し魔法攻撃スキルのCTを短縮する効果がある。どちらも魔法職なら絶対に欲しいスキルだ。この世界の人は職業スキルを選択できないので仕方がないのだが…。
アルスはレベル17だ。アルスのレベルがアディやサラより高いのは『光の守護者』の称号があるせいだ。アルスは剣士レベルが9になり剣士で取れる5つのスキルすべてを得た。その中に『集中』が含まれていたのは良かった。『回転斬り』は発動前後に隙の多いスキルだが剣士で唯一の範囲攻撃スキルだ。それに一旦発動さえすれば発動している間は硬直や中断などの効果を受け付けないという『迷宮物語』ではスーパーアーマーと呼ばれている効果を持っている。『跳躍斬り』は相手に硬直を付与する効果がある上に、間合いを詰めるのにも使える便利なスキルだ。キングオーガ戦でもアルスはこれらを上手く使っていた。それにアルスは必須スキル『回避』を持っている。まずまずのスキル構成だ。
サラはレベル15になった。サラが一番多くレベルを上げた。『チャージショット(A+1)』のA+1とは威力の高い溜めスキルである『チャージショット』のクリティカル率とクリティカル威力を上げるスキルだ。『チャージショット』は弓士の主要スキルで最大5回まで強化できる。『迷宮物語』では最大まで強化するのがよいとされていた。弓士はもともとクリティカル率が高く必殺の攻撃を特徴としている職なのでクリティカル関連を強化するのは良い選択だ。
といっても、この世界の人は選択できないのだが…。
最初のボス戦でサラがキングオーガに止めを刺したときもクリティカルが発生した。サラが装備している必殺の腕輪(一般)はクリティカル率とクリティカル威力の両方が少しだけ上るアイテムで弓士にぴったりだ。さらに、サラはアディと違って『後方回避』を持っているので現時点では文句のつけようのないスキル構成だ。ちなみに、弓士には物理系近接職の『集中』や魔法系職の『瞑想』に当たるスキルはない。その代わりクリティカル率やクリティカル威力が高く設定されている職だ。
あとは、アルスのために一般級とはいえキングオーガの剣が出たのも良かった。なんとなくだけど、同じ5階層のボスでも後から追加された迷宮であるゴレイア迷宮のほうがドロップ品が良かったような気がする。もちろん確率の問題だから偶々かもしれない。
ちなみにステータスには表示されていないが、武器には 攻撃力、攻撃速度、魔法攻撃力、魔法攻撃速度、クリティカル率、クリティカル威力などの基本性能が設定されている。剣にも 魔法攻撃力、魔法攻撃速度 の設定があるし、逆に杖にも 攻撃力、攻撃速度が設定されている。もちろん剣のほうが 攻撃力や攻撃速度が高く、杖のほうが 魔法攻撃力や魔法攻撃速度が高く設定されている。ただ、剣士だから魔法スキルが使えないとか魔法使いだから物理攻撃ができないというわけでない。
とにかく俺たちは順調に成長している。だが油断はできない。もう少しであれが起こるからだ。アディが死亡するイベントが…。そもそも。俺はあれを防ぐために前世の知識まで使って学園に入学したのだ。だが、あれを防ぐのは今の俺でも簡単ではない…。
俺をチラっと元気にアルスやサラと話しているアディを見た。
俺は絶対にアディを守る!




