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3-4(主人公?との出会い).

 俺とアディが昼食を終えて通りに出て歩いていると「ねえ、あなた達もカイル探索者養成学園の新入生だよね」と突然背後から声をかけられた。


 振り返るとそこには俺たちの同年代の少年と少女がいた。ちょうどさっきの魔道具屋の前だ。俺は少年に見覚えがあった。声を掛けてきたのは、手で梳いたら刺さりそうな硬そうでつんつんした青い髪をショートカットにした元気の良さそうな女の子のほうだ。


「えっと、アルスと…」

「私はサラ・フィッシャーっていうの」


 アルスはサラをつついて「アルメッサー辺境伯家のアデレード様だよ」と言った。


「あ、すみません、アデレード様」


 サラが頭を下げる。


「問題ないわ。同級生でしょう」

「俺はレオニードだ」と俺も名乗る。

「えっと、レオニードね。それにしてもアルスの名前を憶えていたのに、こんな美人の私の名前を憶えていないなんて…」


 俺がアルスの名前を憶えていたのはアルスが平民だからだ。平民のクラスメイトは俺とアルスそれに僧侶のステラの3人だ。アルスかステラのどちらかが主人公だ。


「やっぱり、隣のアデレード様が美人だからか…。まあ、とにかくよろしくね。あ、アデレード様の彼氏なんだからレオニード様って呼んだほうがいいのかな」

「え、まだ彼氏ってわけじゃあ…」


 アディが照れている。俺はこの活発そうな女の子の率直な物言いに好感を持った。


「俺は平民だよ」


 アディと一緒にいる俺が平民だと言うとサラとアルスは驚いている。だけど、聞いてみるとアルスと一緒にいるサラだって子爵家の娘らしい。


「アデレード様って、ちょっと頼りなさそうな人が好みなんですか?」

 

 ちょっと待て、俺が頼りないって…。確かに『迷宮物語』の世界では見かけたこともないモブだけど…。


「アルスはレオニードと違って強そうでしょう」


 サラは相変らず失礼な発言を続けた。さっき持った好感度を返してほしい。


 サラの斜め後ろに立っているアルスは俺と同じ茶色の髪をしている。この世界では一番普通の髪色だ。整った顔立ちだが、サラが言うほど強そうには見えなかった。どっちかというと大人しい感じだ。


「えっと、僕はアルスです。僕も平民です」

「同じ平民同士よろしくな、アルス」


 俺とアルスはガッチリと握手した。


「アデレード様、よろしくお願いします」


 アルスはアディに丁寧に頭を下げて挨拶した。


「サラもアルスも様はいらないわ」

「でも…」


 アルスはもちろん、率直そうなサラもさすがに4大貴族の娘であるアディにどう接するべきか迷っている様子だ。


「同級生なんだから、ね!」

「わかったよ、アデレード」

「わかりました。アデレード」


 その後二人の話しを聞いてみると、平民でしかも大人しいアルスがクラスで何かと浮いていたのをサラが気にして仲良くなったらしい。いかにも正義感が強そうなサラらしい。


「レオニードはどうしてアデレード様…じゃなくてアデレードと?」

「俺は平民だけどアルメッサー辺境伯領の領都アルヘイムの出身なんだ。それでちょっとアディと縁があって…」

「へえー、アデレードのことをアディって呼んでいるんだー」

「ま、まあね」


 隣でなぜかアディが顔を赤くしている。


「それでアルスとサラのほうこそデートなのか?」


 今度は俺が反撃した。


「ち、違うよ」


 サラは顔の前で手を振って否定すると「アイテムボックスを見に来たのよ」と言った。だけど今度はサラの顔が赤い。

「買うの?」

「私はもう持っているの。一番容量の小さいやつだけどね。アルスのために値段を確かめにきたって感じかな」

「買うのはとても無理だよ。僕はとりあえずは学園の貸し出し制度を利用するよ」

「アルスなら、すぐ買えるようになるよ。きっと凄い探索者になる。私の勘って結構当たるんだよ」


 もしアルスが主人公なら同級生の誰よりも強くなる。


「ありがとう、サラ」

「それでレオニードもアルスと同じでアイテムボックスを見に来たの?」

「う、うん。さっき買ったんだよ」


 本当は交換したんだけど。なんだかアルスに申し訳ない気分だ。


「え!」

「そうなんだ…」


 アルスもサラも驚いている。当然だ。平民の俺が簡単に買える値段じゃない。


「ちょっと、臨時収入があってね」


 俺は言葉を濁す。アディも約束通り秘密を守ってくれている。


「そうだ。これから4人で迷宮に行ってみない?」


 サラが顔を輝かせて言った。


 ザルバ大迷宮には近いうちにカイル探索者養成学園の授業で入ることになる。だが、その前に経験しておいてもいいかもしれない。考えてみればアディは『迷宮物語』では主人公の友達になるキャラクターだ。アルスは主人公でこの出会いは偶然ではないのかもしれない。


 それなら二人と仲良くしないほうがいいのか? 


 いや、もしゲームの強制力なんてものがあるのなら、むしろ俺も二人と仲良くなっていたほうがいい。それに、なんといっても二人はとても気持ちのいい奴らに思える。


「レオ、私も行きたいわ」


 結局アディの一言で俺たち4人はザルバ大迷宮を探索することになった。探索者ギルドに向かって歩きながら話を聞いてみるとアルスは俺と同じで寮に住んでいるけど、それまでは行商人の両親とあちこちを旅してたらしい。それで、カイル探索者養成学園に入学できたんだから大した才能だ。主人公かもしれない。


「そんなとこまで旅したことがあるんだ」

「うん。オルデン聖国やリアブルク連合国にだって行ったことがあるんだよ」

「へえー、それは凄いな」

「それで、両親は今も?」

「いや、今は王都の商会で働いてる」

「そうか…」


 両親はアルスのために王都に定住することにしたんだろうか…。とにかく、アルスはいろいろと経験を積んでいるみたいだ。


 そうこうしているうちに、俺、アディ、アルス、サラの4人は探索者ギルドに着いた。王都カイルはザルバ大迷宮の上に建設されているので入口は当然王都カイルの中にある。カイル探索者養成学園からも近い。というか城壁のような壁で囲まれたその一角に入るためのカイル探索者養成学園の生徒専用の入り口もある。そして壁の中には大迷宮の入り口と繋がっている探索者ギルドの大きな建物がある。


 探索者ギルドの建物はゲームで記憶している通りのものだった。僕たちは探索者ギルドの中にはいるとキョロキョロと辺りを見回した。若い探索者が絡まれるとかいうテンプレのイベントは特に発生しない。


「レオ、あの壁に貼ってあるのは?」


 俺は壁に近づいてそれを確認した。


「騎士団と一緒に魔物を討伐してくれる人を募集しているみたい。出発は明後日なんだって」

「そんな依頼もあるのね」


 この世界には迷宮以外の場所にも魔物がいる。俺だってワイルドボアとかを討伐して生活の糧を稼いでいた。魔物との遭遇率は迷宮の中ほどじゃない。それでも魔物が増え過ぎないように騎士が討伐に行くことがある。民の生活を守るのも騎士の役目だ。

 よく見るとそれ以外にも、外の魔物の討伐依頼がいくつかある。ゲームでよくある冒険者のシステムのようだ。『迷宮物語』では特に冒険者という職業はなかったが、いわゆるダンジョンである迷宮以外の場所でも魔物を倒して経験値稼ぎはしていた。だが迷宮に潜らないと大幅なレベルアップができないのはこの世界と同じだ。ちなみにゲームでは迷宮の外で魔物を倒すと素材やお金に変わったがこの世界ではそんなことはなく普通に死体になる。この辺りはゲーム通りではない。『迷宮物語』が現実になったことでいろいろ調整されている。そんな感じだ。 


「ねえ、ねえ、迷宮に入るんじゃなくてこの依頼をやってみない?」


 サラが見ているのは迷宮ではなく地上でのゴブリンの討伐依頼票だった。どうやら、サラはアルスのために少しでも稼げる依頼を受けたいみたいだ。迷宮で魔石を手に入れるのもその方法だが、こっちのゴブリン討伐依頼のほうが金を稼ぐ上では効率がいいと思い直したようだ。平民がカイル探索者養成学園に入学した場合、俺もそうだが、学費も寮費も免除される。だけどアルスの家にとっては働き手を一人取られたようなものだ。アルスはできるだけ稼いで両親の助けになりたいようだ。


 うん、立派な心掛けだ。


 そしてサラはアルスの力になりたがっている。そんな話を聞いてしまったら、ここは協力しないわけにはいかない。


「いいんじゃない、レオ」


 アディもその気だ。


「ああ、せっかくだし、4人でこの依頼を受けよう」

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