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1-16(キマイラ).

 俺は5階層のボスであるキマイラを観察する。ライオンの頭に、胴体はなんっだけ? 尻尾は蛇だ。ゲームやアニメでよく見る魔物の一つだ。キマイラを実際に目の前にすると相当な威圧感がある。思った以上に大きく感じる。さすがにボスだけのことはある。しかし俺は既に10階層のボスを目にしそれを倒している。


 いやいや、油断は禁物だ。この世界はリアルなのだから…。


「『雷剣』!」


 俺は剣に雷属性を纏わせる。 


 キマイラが突然飛び掛かってきた。


 速い! 


 俺はキマイラの前足での攻撃を魔剣ソウルイーターで防いだ。


 ガキッ!


 キマイラの前足の爪と魔剣ソウルイーターが激突して火花が散った。


(『スラッシュ』、『二段斬り』、『ダッシュ』、通常攻撃!)


 魔剣ソウルイーターが雷属性を纏っている効果でキマイラが硬直している間に『スラッシュ』、『二段斬り』とスキルを連続して使う。『二段斬り』の打ち終わりの硬直を『ダッシュ』でキャンセルすると通常攻撃を一発加えてすぐに距離を取った。安全第一だ。


「ぐぎゃーー!!」


 俺のコンボ攻撃が決まってキマイラは悲鳴を上げて暴れている。コンボは繋がるほど威力を増す。ジャイアントバジリスクと戦った時よりコンボ攻撃に関しては上達したと思う。まあ、あの時より落ちついて戦えているおかげもある。


 しばらくキマイラの攻撃をよく見て避けていると、一番威力のある『二段斬り』のCTが空けた。『雷剣』の硬直効果のCTも空けている。


(通常攻撃、『スラッシュ』、『二段斬り』、『ダッシュ』!)


 最初の通常攻撃は『雷剣』の効果で硬直させるためだけのものなので当たりさえすればOKだ。その後はさっきと同じ順番で攻撃する。そして…。 


(『雷弾』、通常攻撃、通常攻撃、通常攻撃!)


 今度は続けて『雷弾』を使う。『雷弾』の硬直時間は『雷剣』のそれより少し長い。俺はできるだけ多くの通常攻撃を叩き込んでからキマイラから離れた。


 このコンボも決まった。


「ぎゃあぁぁーー!!」


 キマイラは防戦一方だ。『雷神の加護』と魔剣ソウルイーターの補助効果のおかげで攻撃スピードが速いのでコンボが繋がりやすい。


 だが、それだけではない!


 前世の知識、『雷神の加護』と魔剣ソウルイーターの補助効果、そしてこの世界で父さんやシグルド様に鍛えられた剣技、どれが欠けてもこうはいかなかっただろう。特に本来間合いを詰めるスキルである『ダッシュ』を基本『二段斬り』の打ち終わりの硬直をキャンセルするために使っているので、父さんやシグルド様に鍛えられた相手の懐に入る踏み込みの速さやタイミングが役に立っている。

 

 その後も速さに勝る俺が確実にキマイラにダメージを与えていく。キマイラはもともと速さに優れる魔物なのだから、レベルの違いはあるにしても俺の攻撃スピードはなかなかのものだ。


 だが、俺は油断せず慎重にキマイラのHPを削る。5階層とはいえ相手はボスだ。しかも、一番問題なのはこの後だ。


 そしてついにその時が来た。キマイラの体が赤く発光し始めた。


 キマイラはHPが20%を切ると速さや攻撃力が大幅に上がる。さらにはブレスを使った全体攻撃をしてくる。これがあるため、ゲーム時代も適正レベルのプレイヤーの多くが初見での攻略には失敗していた。この状態のことをゲームでは狂乱状態と呼んでいた。キマイラに限らずHPが少なくなるとこの狂乱状態になるボスは多い。


(『集中』!)


 俺はバフスキル『集中』を使った。これで筋力と俊敏が1.2倍になった。物理攻撃スキルのCTも短縮されている。


(『雷剣』!)


 さらに『雷剣』で剣に雷属性を纏わせる。この時のために両方のスキルのCTを管理しながら戦っていた。


 キマイラが尻尾で払うように攻撃してきた。


 速い!


(『ダッシュ』!)


「うぐっ!」


 狂乱状態になったキマイラの尻尾での攻撃が俺にヒットして俺は思わず呻き声を上げた。ただし、俺はダメージを受けたが『ダッシュ』を発動していたのでスーパーアーマー効果により俺の攻撃が中断されることはない。俺はそのままコンボ攻撃に移った。


(『スラッシュ』、通常攻撃、『雷弾』)


 最初に『ダッシュ』を使ってキマイラと激突した時、魔剣ソウルイーターは雷属性を纏っていた。その効果でキマイラが硬直しているところに『スラッシュ』と通常攻撃を1発入れてから『雷弾』使う。


(通常攻撃、『二段斬り』、『ダッシュ』、通常攻撃、通常攻撃)


 『雷弾』で硬直している間に、通常攻撃を挟んで『二段斬り』使う。既にCTが空けていた『ダッシュ』で『二段斬り』の打ち終わりの硬直をキャンセルしてから最後に通常攻撃を2発加えて距離を取った。ちなみに『ダッシュ』は間合いを詰めるスキルだが一応物理攻撃スキル扱いである。


 『集中』の効果でよりスピードが増している上、物理攻撃スキルのCTも短縮されている。スキルとスキルの間に挟める通常攻撃の数も増えている。『迷宮物語』ではこういう微妙に手数を増やす技術が大切だった。これが最終的には大きな差に繋がるのだ。俺は実践の中で確実に上達している。前世の知識があればすぐに実現できるというものではない。 


 その後も、俺は次々とコンボ攻撃を放つ。


 とにかく、『集中』と『雷剣』の効果が持続している間に狂乱状態のキマイラを一気に倒しきる!


 狂乱状態の時のキマイラは攻撃力やスピードが格段に上昇する代わりに防御力は下がっている。『集中』を使っている俺のスピードは狂乱状態のキマイラにも劣っていない。その上、繰り返し『雷弾』と『雷剣』の効果で硬直させられるのでキマイラは反撃に移ることができない。こうして一番注意すべきであるHP20%を切った後の狂乱状態キマイラは大した攻撃もできないまま魔石とボスドロップ品を残して消えていった。 

 キマイラの強さはレベル10前後のプレイヤーが4人で討伐することを想定して設定されているはずだ。俺のレベルだとソロでも思った以上にHPを削るのが速かった。狂乱状態になってからもキマイラはブレス攻撃をすることさえできずに魔石になった。


 それでも俺は心からほっとしていた。


 この世界ではちょっとした失敗が死に繋がるのだから当然だ。考えてみれば『天雷』を使えばもっと楽だったかもしれない。だが、ボス相手に何種類かのコンボ攻撃を試せたのは、今後のことを考えるとよかったと思う。





★★★





 その後、俺は一週間続けて5階層のボスであるキマイラに挑んだ。


 そして今、目の前には7つ目のキマイラの魔石がある。残念ながらレベルアップはしなかった。俺のレベルはすでに27だから5階層のボス程度ではソロで討伐してもなかなかレベルは上がらない。だが、7つの魔石のほかに目的だったボスドロップ品を7つ手に入れた。これまでに手に入れたのは一般級の剣、一般級の槍、一般級の盾、力の指輪(一般級)、知恵の腕輪(一般級)が2つだ。盾は武器扱いなので迷宮のボスからドロップする。


 さて今日のボスドロップは…。どうやら、杖のようだ。俺はボスドロップ品の杖を拾い上げる。




 キマイラの杖(レア級、補助効果:魔法攻撃力+5%、魔法攻撃力+3%、魔法攻撃力+1%)




 なんだって!


 レア級の上、なんと補助効果が3つ全部ついている。『迷宮物語』でも3つ補助効果がつくことは滅多になかった。しかも、すべて魔法攻撃力アップの補助効果だ。補助効果は全く同じものが複数付くことはない。なので3つとも上昇率が違う。


 それにしても…。


 この杖は魔法職にとっては大当たり中の大当たりだ。『迷宮物語』時代には魔法職のプレイヤー達がこの補助効果が付いた杖を手に入れるために何日も迷宮を周回していた。この杖はレア級だが魔法攻撃力だけなら伝説級に匹敵する。


 この世界ではゲームの時以上に迷宮産の武器は貴重だ。ゲームとは違い命を懸けて取りに行くものなのだから…。


 この世界では未だに攻略されたボスは15階層が最高だ。おそらく神話級の武器は存在していない。現実的に最も性能のよい迷宮産の武器やアイテムは伝説級だろう。俺の持つ伝説級の魔剣ソウルイーターはこの世界最強の武器の一つだ。そう考えれば、このキマイラの杖だって補助効果を含めれば相当なものだ。最後に当たりを引いたようだ。

 

 俺はそろそろ王都に向かわなくてはならない。王都では寮生活になる。今、借りている家を引き払ったりいろいろ整理することはある。今日で一旦ゴレイア迷宮の探索は終わりだ。俺はボス部屋を抜けると転移魔法陣で一階層の安全地帯に戻る。


 それは、俺がゴレイア迷宮を出てすぐに起こった。


 ゴゴゴゴォォォォー!!!!


 地震だ! 


 あの時と同じだ! 俺は両手で頭を庇うようにしてその場に伏せる。小石が頭の上ギリギリを通り過ぎる。しばらくその態勢で地震が収まるの待つ。やがて揺れが小さくなり、ついには何も感じられなくなった。俺はゆっくりと立ち上がると辺りを見回した。


 迷宮が…。


 俺が目にしたのはゴレイア迷宮の入り口が岩石と砂で完全に埋まっている光景だった。最初に発見したときと違って俺一人で入り口を確保するのは難しそうだ。


 もしかすると、ゲームの強制力というやつなんだろうか? それとも単なる偶然なのか…。

 ゴレイア迷宮は3回目の大型アップデートで追加された迷宮だ。然るべき時に発見されるような気がする…。


 それよりもと俺は意識を切り替える。


 いよいよカイル探索者養成学園入学だ。カイル探索者養成学園の入学式は、すなわち『迷宮物語』のスタート場面でもある。楽しみでないといったら嘘になる。だが、俺にはするべきことがある。


 まずはアディが死ぬのを防がなくてはならない! それは今の俺にとってさえ簡単なことではない。


 俺はカイル探索者養成学園の新入生としては破格のレベルになった。だが、世界最強になったわけでもなんでもない。


 俺はもう一度自分に言い聞かせる。


 ここはゲームの世界ではない。死んだら終わりの現実世界だ。けっして油断することなく目的を達成しなければならない。

 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 第1章はこれで終わりです。主人公とは別視点の短い第2章(6話くらい)を挟んで主人公が学園に入学する第3章になります。主人公の学園での活躍までちょっとだけお待ちくださいね。

 もし本作に少しでも興味を持って頂けたらブックマークと『★★★★★』での評価をお願いします。また、忌憚のないご意見や感想をお待ちしています。読者の反応が一番の励みです。


 また、拙作「ありふれたクラス転移~幼馴染と一緒にクラス転移に巻き込まれた僕は、王国、魔族、帝国など様々な陣営の思惑に翻弄される…謎解き要素多めの僕と仲間たちの成長物語」と「乙女ゲームの断罪の場に転生した俺は悪役令嬢に一目惚れしたので、シナリオをぶち壊してみました!【連載版】」も読んで頂けると嬉しいです。

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