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1-15(ゴレイア迷宮5階層).

 俺は転移魔法陣の前に立っている。


 この魔法陣を使えば1階層の安全地帯にある魔法陣に転移することができる。そして一度転移魔法陣を使うと使うと、次からは逆に1階層の魔法陣から10階層の魔法陣まで移動できるようになる。ただ、今、俺の目の前にある転移魔法陣はゴレイア迷宮の最深部にある。この先に迷宮は続いていないので、今後この機能を利用することはないだろう。


 俺が転移魔法陣に乗ると、特に俺が何もしなくても転移魔法陣が輝き始めて自動的に起動した。次に俺が気がついた時には俺は別の場所にある魔法陣の上に立っていた。1階層の安全地帯になっている広い空間だ。


「ふーっ」と俺は溜息を吐いた。俺は奇跡のような運の良さで生きて1階層まで戻ってきた。レベルを27まで上げ、この世界では知られていない魔剣士の職につくおまけ付きだ。


 辺りを観察すると俺が落ちた迷宮の奥に続く通路の裂け目は既に修復されている。迷宮の持つ不思議な力だ。反対に迷宮の出口(入り口?)は大きな岩と土砂で塞がれている。俺が人一人通れるくらいに削った隙間が再び塞がれているのだ。


 俺は落胆の気持ちを抑えて出口を塞いでいる岩を砕き土砂を取り除く作業を開始した。





★★★





 今日は、あの日以降初めてゴレイア迷宮を訪れている。


 転移魔法陣は使わない。あの10階層の魔法陣のある場所まで転移しても行き止まりだ。あそこからボス部屋にも戻れない。反対側からはボス部屋の扉は開かないからだ。また10階層のボスに挑戦しようと思ったら1階層からあそこまで行くしかない。試してみたが5階層のボス部屋を抜けたところにある魔法陣にも転移できなかった。俺が5階層のボスをクリアしていないからだろう。


 俺がゴレイア迷宮を訪れた理由は、ひょっとしてまた御遣様に出会わないかと期待しているのと、5階層のボスのドロップ品だ。伝説級の魔剣ソウルイーターより良い武器が落ちるとは思えないが、ドロップ品には武器だけでなくアイテムとかもある。それに俺が使わない武器でも迷宮産の武器は高く売れる。


 まあ、主な目的はお金ってことだ。平民である俺にとっては重要なことだ。


 ちなみに10階層まで行って、もう一度ジャイアントバジリスクに挑む気はない。失敗が即死に繋がるこの世界で、進んであんな思いをするのは馬鹿だ。あれは文字通り死と隣り合わせの戦いだった。そもそも、盾役や回復役なしであそこまでたどり着くのだって無理だろう。


 それでも5階層くらいまでなら…。


 俺はゴレイア迷宮に入ると、以前よりはっきりしてきた『迷宮物語』の記憶をもとに最短距離を進む。

 3階層辺りから一度に現れる魔物の数が増えた。出現するのは魔狼と大猿の魔物だ。どちらもかなり素早い。以前の俺なら1体ならともかく2体以上現れたら逃げるしかなかっただろう。だが、今のレベル27の俺にはなんの問題もない。


「『雷弾』!」

「ぎゃうん!」


 バッシュ!


「がう!!」


 『雷弾』で一体の魔狼を倒した後、そのそばで硬直しているもう一体の魔狼を一刀両断する。これで終わりだ。


 そして、4階層では出現する魔物の種類は3階層と変わらなかったが、さらに数が増えた。必ず3体以上で現われるようになったのだ。だが、3体以上現れても同じ方法でいけた。   

 俺は『雷神の守護者』と魔剣ソウルイーターの補助効果のおかげで攻撃スピードが速い。『雷弾』で硬直させている間に、ほとんどの敵を倒せる。たまにちょっとダメージを受けたところで魔剣ソウルイーターのHP回復効果がある。


「やっぱり、レベル差があるとぜんぜん違う。だが…」


 俺は思わず口に出して感嘆していた。レベル27になり俺は強くなった。だが、同時にそれだけではない何かを感じていた。ステータスが上がりスキルを覚えたからといって、すぐに思った通りに体を動かせるわけではない。


 あのジャイアントバジリスクとの戦いでも感じたことだ…。


 5階層まで降りると出現する魔物がサラマンダーになった。サラマンダーはそれまでの魔物に比べれば強いし外皮が硬い。


 「『集中』、『雷剣』!」


 俺は『集中』、『雷剣』の両方を使ってから攻撃に移る。どちらも効果が1分間継続してCTは3分だ。これで筋力と俊敏が1.2倍になった上、魔剣ソウルイーターに雷属性が付与されている。


 バシュ!


「ぐぎゃー!!」


 バシュ! バシュ!


 サラマンダーはあっという間に魔石に変わった。


 雷属性の効果で外皮の内側にもダメージが入る上に30秒に1回硬直効果が発生するからだ。一撃で倒せなくても硬直している間に追撃すればなんの問題もない。


 この『雷剣』の硬直効果に関してはちょっとした裏話がある。当初、『雷剣』の硬直効果に30秒に1回と言う制限はなかったのだ。


 ゲームスタート時点では雷属性の魔法スキルを得る確実な手段がなかった。そのため3回目の大型アップデートでゴレイア迷宮が追加された。以降、雷属性の魔法スキルを持つプレイヤーが増えた。当然、雷属性の魔剣士になる者もスキル『雷剣』を持つ者も増えた。

 ところで、PVP(プレイヤー対プレイヤー)では基本的に相手を行動不能にするスキルをいかに先に当てるかが勝負を分ける。当てた後、それぞれの職の最も威力の高いスキルやコンボを使う。これが基本だ。

 PVPでは、いきなり大技を繰り出しても避けられるだけだ。だが、相手を行動不能にする種類のスキルにはCT(スキル再使用時間)がある。その上、硬直や仰け反りなどを防ぐスーパーアーマーや無敵などの効果が付与されたスキルも存在する。そして、それらにも同じくCTがある。そこを駆け引きや技術により、いかに先に行動不能スキルを相手に当てるかが勝負を分ける。


 PVPとはPSプレイヤースキルがものをいう世界でありPVPコンテンツとはこのPSを競うものだ。


 『雷剣』を使うと発動中常に相手を硬直させる雷属性を剣に纏わせて戦うことができる。当初の硬直効果が30秒に1回という制限のない『雷剣』はPVPで反則級に強かった。ユーザーから苦情の嵐となり、修正された結果、『雷剣』の相手を硬直させる効果は30秒に1回しか発動しないことになった。だが修正の後でも少人数のPVPにおいて『雷剣』を使えることの優位性は変わらなかった。


 実際、今の俺が一番向いているのは少人数の対人戦だろう。相手を硬直させる効果のあるスキルを『雷弾』と『雷剣』の二つ持っている。それにいざとなれば『天雷』もある。魔剣ソウルイーターの特殊効果でHPも減り難い。さらに魔剣ソウルイーターの補助効果と『雷神の加護』で攻撃スピードも速い。まさにPVPのためのビルドだ。


 もちろん、硬直効果は魔物相手にも有効だ。だからこそ、今俺は5階層のボス部屋の前に立っている。ここまではなんの問題もなくたどり着いた。

 

 5階層のボスはキマイラだ。キマイラは5階層のボスとして他の迷宮でも採用されている魔物だ。ビットリオ侯爵領にある迷宮だった思う。要は使い回しである。まあ、『迷宮物語』で重要なのは王都にあるザルバ大迷宮だから他の迷宮に開発にリソースを避けなかったのは仕方がない。それにエンドコンテンツの目玉は大規模PVPの陣営戦だったのだから…。


 キマイラは俊敏性の高い魔物だ。まあ、それでも今の俺には問題ないと思う。いや、油断は禁物だ。この世界はゲームではないことを改めて自分に言い聞かせると、俺は巨大な扉に近づいた。


 俺が近づくと扉は自然に開いた。

 作者の悪い癖で説明的すぎた気がします。説明とか設定とかが割と好きなんです。すみません。

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