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1-13(ジャイアントバジリスク2).

 4つのバジリスク像からビームが発射される特殊攻撃をなんとかクリアした後は、ジャイアントバジリスクの物理攻撃を俺が避けて、偶に俺がコンボで反撃するという展開に戻った。

 ジャイアントバジリスクの動きは速いが、なんとか直撃は免れている。これも日頃の鍛錬のおかげだ。ゲーム知識があれば避けられるというものではない。


 父さん、ジグルド様、俺を鍛えてくれて感謝します。


 それでも何度か攻撃が掠って俺のHPは確実に削られている。だが、それは相手も同じだ! いや、むしろ俺のほうが多くのダメージを与えている!


 でも油断は禁物だ!

 集中力を切らしてはいけない!

 ボスのちょっとした動きも見逃してはいけない!


 ゲームと違って死んだら終わりだ。そのプレッシャーは半端ではない。その時、ジャイアントバジリスクが突然攻撃を止め、振り向いて部屋の中央に戻った。


「グオォォォォー!」


 部屋の中央に戻ったジャイアントバジリスクはひと際大きな声で咆哮した。


 二つ目の特殊攻撃がくる合図だ!


 ドン、ドン、ドン、ドン!


 ジャイアントバジリスクは部屋の中央で足を踏み鳴らす。


 ドン、ドン、ドン、ドン!


 部屋全体が揺れている。轟音と振動で鼓膜が破れそうだ。


 ジャイアントバジリスクが足を踏み鳴らすたびに、ジャイアントバジリスクの周りから衝撃波が部屋の外側に向かって広がり俺を襲う。一発の威力はそこまでではない。しかしこの攻撃は回避不可で確実にダメージを受ける。本来『回避』はすべての攻撃を無効にするスキルなのにだ。『迷宮物語』のおいては、こうした理不尽な特殊攻撃は珍しくない。特にボス戦では…。


「ううぅー!」


 次々と波のような衝撃派が俺を襲う。この世界ではHPやMPが表示されないのでわかりにくいが確実に俺のHPは減っている。

 

 本来この攻撃は素早く盾持ちの後ろにパーティーメンバーが一列に並んでやり過ごすのが定石だ。最初の特殊攻撃とは逆で回避は不可だが盾での防御は可能という仕様だ。盾役のスキル『ガード』のCTやスタミナ管理が重要になる。それでも盾役のステータスによってはある程度ダメージを受ける。パーティーメンバー全員に継続回復スキルをかけて耐えるという手もある。だが、ここには盾役も回復役もいない…。


 俺は何もせずこの攻撃を受け続ける。少しずつHPが削られる。


 く、苦しい…。おそらくHPが半分を切った。


 さらにダメージを受ける。


 息が詰まるような苦しさを感じる。だがもう少しだ。


 ドン、ドン、ドン!


「うぅ…」


 思わずうめき声が漏れる。痛みで気を失いそうだ。ゲームと違ってHPが減る痛みや苦しさは半端ではない。俺は歯を食いしばって耐える。


 くそー! まだか。


 そしてその時は訪れた!


 頭の中のステータス画面に発動不可を表す暗いグレーで表示されていた『死線』の文字が明るくなっている。発動可能になったのだ。俺はこれを待っていた!


「『死線』!」


 思わず声に出して叫ぶ! 体中が熱くなり力が漲る。物凄い高揚感に包まれる。


 死線はHPが20%以下になった時に発動可能になるスキルで、発動すると30秒間、筋力、耐久、器用、俊敏、知力、精神と6つのステータスを2倍にする破格のスキルだ。


 一時的に能力が上がるようなスキルは他にもある。HP20%以下などの発動条件のないスキルだってある。『集中』もそうだ。だが、集中で上がるのは筋力、俊敏の二つだけだ。それに『集中』のステータスアップは1.2倍だ。仮に一段階強化された状態でも1.4倍だ。


 魔剣士の『死線』だからこそHP、MPを除くすべてのステータスが上がるのだ。しかも倍率は2倍だ!


 魔剣士という職は相手に物理ダメージと魔法ダメージの両方を与えることができる。魔剣士の攻撃はどちらの耐性が高い敵にも有効だ。しかし、物理攻撃力、魔法攻撃力共に専門職には劣る。パーティーでの攻略が推奨されている『迷宮物語』においては、両方のダメージを与えることができる魔剣士は便利だが、パーティーに加えるには中途半端な能力ともいえる。そして魔剣士の中途半端さをある程度解消させるスキルが『死線』だ。効果が破格である代わりに発動に条件があり効果時間もたった30秒だけだ。それにCTも15分と長い。普通は1回の戦闘で1回しか使えない。


 それでも魔剣士の中途半端な能力を補う破格の効果を持つバフスキルそれが『死線』だ。


「『天雷』!」


 俺は、またしても声に出して叫んでいた!


 レベル25の魔剣士である俺が使う『天雷』は本来の魔導士が使う『天雷』の7割あるかどうかくらいの威力だと思う。しかし今の俺は『死線』のおかげでステータスが2倍になっている。その中には攻撃魔法の威力やデバフの成功率などに影響する知力や精神も含まれている。

 ちなみに魔法系の職が持つスキルに『瞑想』というのがある。剣士などが持つ『集中』と同じようなスキルでこちらは知力と精神が上がり魔法攻撃スキルのCTが短縮される。ステータスの上昇倍率は『集中』と同じで1.2倍だ。それに対して『死線』は制限が多い代わりに2倍である。したがって今俺が放った『天雷』は、レベル41以上の最上級職である魔導士が『瞑想』を使った状態で放った全力の『天雷』以上の威力がある。まあ、『瞑想』の強化度合にもよるが…。


 ここで決める!


 『死線』のCTは長いし今の俺には『天雷』をもう一度使うMPはない。一度だけのチャンスだ。


 ジャイアントバジリスクの頭上に巨大は紫色の魔法陣が現れる。それはバチバチと不気味な音を立て雷光を纏いゆっくりと回転している。


「グオォォォォーン!」


 何かを察したのかジャイアントバジリスクが咆哮する。いつの間にか特殊攻撃も終わっている。俺のHPもあとちょっとしか残っていない。体中が苦痛で麻痺しているようだ。頭もボーっとしている。


 巨大な紫色の魔法陣が眩い光を放つ。次の瞬間、巨大な紫色の魔法陣から地鳴りのような音と共に幾筋もの稲光が放たれた。


「ぎゃおおおぉぉぉーーー!!」


 ドドドオオォーン!!!!


 ジャイアントバジリスクの悲鳴をかき消すように地鳴りのような轟音が辺りに響く。まるで地震と嵐が一度に発生したような振動と圧力を体中に感じた。さすが最上級魔法スキルだ。


 まさか振動で俺が死ぬなんてことはないよな…。


「ぐぎゃぁぁーー!!」

  

 悲鳴とも断末魔ともとれる声が無数の稲光が放たれる音と混ざって俺の耳に届く。

 

 ジャイアントバジリスクを見ると黒い鱗がボロボロと剥がれ落ちている。ジャイアントバジリスクの体全体からブスブスと煙が上がり肉が焦げたような匂が部屋を満たす。『天雷』は、鱗を貫通しその下の肉体にもダメージを与えたのだ。


 だけどジャイアントバジリスクはまだ死んではいない。さすがにしぶとい。ここから先は剣で攻撃するしかない。


 俺は残りのMPで剣に雷属性を付与し斬り掛かった。『雷剣』だ。物理ダメージと魔法ダメージの両方を与えることができるがMPを消費してしまうのが欠点だ。でもまだ『死線』の効果は続いている。『集中』も使いたいがMPが心もとない。 


 俺は『雷剣』でジャイアントバジリスクを斬りまくる。すぐに『死線』の効果は切れてしまった。それでもMPが続く限り『雷剣』を使い続ける。疲れと痛みでコンボ攻撃をする余裕はない。


 黒光りする金属のような鱗で覆われていたジャイアントバジリスクだったが、既にその鱗はボロボロになりほとんどが剥がれ落ちている。


 俺は必至にジャイアントバジリスクを斬った。斬って斬って斬りまくった。ここで倒さなければ終わりだ。


 斬るんだ…。


 その時、不意に視界が狭まった。


 な、何が…。


 意識が遠くなる。


 き…斬るんだ…。


 ………。

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