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1-12(ジャイアントバジリスク1).

 ボスと対峙し周りを観察する。部屋の四隅には人の背丈ほどの高さの台座があり、その上にバジリスクをかたどった像が置かれている。それぞれ黒、金、赤、青と色が違う。


 ボスバジリスが「グオォォォォー」と雄たけびを上る。部屋全体がビリビリと振動する。


 ボスバジリスクの目が金色に光る。ボスバジリスクは突然体を捻ると尻尾で俺を薙ぎ払おうとした。巨体にもかかわらず凄いスピードだ。ゴライア迷宮の最終ボスだけのことはある。ゲームではこのボスはジャイアントバジリスクと呼ばれていた。

 俺は素早くバックステップしてそれを躱す。レベルが上がったおかげで体が軽い。ジャイアントバジリスクの尻尾が目の前を通り過ぎて風圧を感じた。当たったらレベル25の今でも一発で瀕死になりそうだ。やはり盾職や回復職それに遠距離攻撃できる者を含めたパーティーで挑むべき相手だ。それにあの黒光りする鱗。ダメージが通りそうな気がしない。


 俺は態勢を立て直し剣を構える。


 ジャイアントバジリスクはすぐには攻撃してこず俺を観察している。まるで、なんでお前のような者がたった一人でこんなところに来たのだ、とでも言うように…。


 だが俺は一人とはいえレベルは25だ! 意を決して斬りかかる。


 (『ダッシュ』!)

 (『二段斬り』!)


 バシュ! ズサッ!


 ダッシュで一気に間合いを詰めると威力の高い『二段斬り』で攻撃した。しかし、『二段斬り』でも大したダメージを与えられない。思った通り黒い鱗は硬い。


 ジャイアントバジリスクが足を上げ俺を踏みつぶそうと前出た。『二段斬り』は威力は高いが攻撃後に僅かな硬直がある。対人戦の場合はこの隙を突かれやすい。


 間一髪で硬直が解け、俺は右に転がってジャイアントバジリスクの踏みつけを避けた。危なかった! 


 だが、次の瞬間、ジャイアントバジリスクは頭を振り下ろして攻撃してきた。目が赤く充血し口からギザギザの歯が覗いている。俺はそれも寸前で避けた。踏みつけからの頭の振り下ろし。この動きは知っている。ゲームの時と同じだ。


 俺はその後の尻尾での薙ぎ払い攻撃も体を反らすようにしてギリギリで避けた。ここまではゲームでジャイアントバジリスクの攻撃パターンを知っていることが役立っている。


 よし! 


 そろそろ『2段斬り』のCT(スキル再使用時間)が終わる。


(『集中』!)


 まずは『集中』で筋力と俊敏を上げる。物理攻撃スキルのCTも短縮されているはずだ。


(『雷弾』!)

(『二段斬り』!)

(『スラッシュ』!)


 『雷弾』の硬直効果が続いている間に『二段斬り』から『スラッシュ』まで繋げる。得意のコンボ攻撃だ。コンボは繋がれば繋がるほど威力が増す。俺のレベルは25なので例え10階層のボスでも『雷弾』の硬直効果がレジストされる確率は少ない。


 そして次はこれだ!


(『雷剣』!)


 俺の剣による攻撃には雷属性が付与された。これで物理ダメージに加えて魔法ダメージも与えることができる。だが雷属性の一番のメリットはそれではない。威力なら炎属性や氷属性のほうが上だ。雷属性のメリットは相手に硬直のデバフを与えられることだ。『雷剣』の場合、レジストされなければ30秒に1回硬直効果が発動する。『迷宮物語』時代、PVP(プレイヤー対プレイヤー)では特に硬直効果は好まれた。『雷剣』の継続時間は1分、CTは3分だ。これは『集中』と同じである。要するに雷属性系の魔剣士は3分のうち1分間は雷属性を剣に纏わせて戦うことができるということだ。


 俺は雷属性を纏った剣で攻撃しながら『二段斬り』のCTが空けるのを待つ。途中での踏みつけ攻撃も予備動作を見逃さず避ける。


 よし! 『集中』の効果もある。もう行けそうだ。


(『二段斬り』!)

(『ダッシュ』!)

(『スラッシュ』!)


 俺は『二段斬り』のCTが空けると同時にコンボを放った。『二段斬り』の打ち終わりの硬直を『ダッシュ』でキャンセルして次の『スラッシュ』に繋げる『迷宮物語』でもよく使われていたコンボだ。『ダッシュ』を覚えたことで可能になった。 


「グギャアァーー!!」


 ジャイアントバジリスクが叫ぶ。ジャイアントバジリスクの瞳が真っ黒になっている。その後も似たような攻防が続く。


「うっ!」


 直撃は避けたがジャイアントバジリスクの尻尾攻撃が掠ってダメージを受けた。『集中』の効果で筋力と俊敏が上がっている時と効果が切れている時との感覚の差に戸惑ってしまったのだ。いくら動きを知っていても実践で完璧に避けるのは難しい。改めてゲームとは違うと実感する。


 集中しなければ…。盾役もいない中、一発でも直撃を食らったら終わりだ。


 俺はCTが空け次第『集中』を使う。攻撃は威力の高いコンボ攻撃主体だ。俺は『雷弾』と『雷剣』という硬直効果を持つスキルを二つ持っているのでコンボを繋ぎやすい。その間もバジリスクの少しの動きも見逃さないように集中している。

 

「ハア、ハア」


 い、息がくるしい。コンボ攻撃により確実にダメージは与えているがやはり一人では時間がかかる。集中力が途切れそうだ…。


 だめだ! 集中しろ! 俺は自分に言い聞かせる。そのおかげか、俺はジャイアントバジリスクの目が青く光ったのを見逃さなかった。


 特殊ギミックの発動だ!


 これまで俺は戦いながらジャイアントバジリスクの瞳の色を観察していた。最初は金色だった。そして赤、黒、青と変化した。今回の青で4色目だ。これがギミック発動の合図だ。


 部屋の4隅にある台座の上にある4つのバジリスク像がギィーという耳障りな音たてながら向きを変えた。この後、俺に向かって目からビームのようなものを発射してくるはずだ。


 この攻撃は盾防御不可攻撃だ。さらに、すべて『回避』で避けるには『回避』のCTが空くのが間に合わない。要するに自分で移動して避けるしかない攻撃だ。当たれば今の俺のレベルでも一発で瀕死になる。その上、30秒間行動不能のデバフ付きだ。ここにはデバフを解除してくれる回復役もいない。掠っただけで終わりだ…。


 落ち着くんだ!


 発射の順番はジャイアントバジリスクの瞳の色が変化した順番と同じだ。


 まずは金!


 俺は回るように移動して金色のバジリスク像から発射されたビームを避けた。


 1秒毎にビームが発射される。次は赤だ。俺はまた移動してビームを避ける。緊張で足の動きがぎこちない。剣を持つ手に汗がにじむ。


 3番目は黒だ! 黒い像から目を逸らすな!


 黒いバジリスク像からビームが発射される。予測していた俺はそれを避ける。いくらゲームの知識があっても実際に自分の体を使ってやるのとは違う。コマンドを順番に実行するのとは違うのだ。しかも死と隣合わせの状況で…。


 最後は青だ!   


 その時、緊張しすぎたのか、最後の1回となって油断したのか、俺の足がもつれた。


「ああー!!」


 青いバジリスク像からのビームが俺に迫る!


「『回避』!」


 バリ!


 青いバジリスク像からのビームが俺を捉えたが『回避』の無敵効果によって防がれた。助かった! 最後に『回避』を残しておいてよかった…。『回避』のタイミングがちょっとでもズレたら死んでいた。『回避』の無敵効果は1秒もないのだ。心臓に悪い…。


「フーッ」


 思わずため息が漏れる。視界がぼやける。汗が目に入ったのだ。別にこの部屋が暑いからじゃない。むしろボス部屋はひんやりしている。

 

 発射される順番を知っていないと絶対に避けられない初見殺しのギミックだ。


 俺はなんとか難関の一つをクリアした。だが、これで終わりじゃない…。

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