表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/116

9-10(襲撃2).

「レオ、あれじゃない?」


 複数の人が争うような音とともにその光景が目に入った。既に襲われているようだ。やっぱり、イベントが…。いや、そもそも今起こっているのがストーリーと同じイベントとは限らない。時期も少し早い。


 それに…。


「レオ、かなりの手練れが混じっているわ。あれは、もしかして…」


 アディの言いたいことはわかる。あのレベルの強者達の集団といえば…。


「ああ、ストレイド王太子の親衛隊かもしれないな」

「でも…まさか…」


 見たところ、かなりの手練れが20人くらいは混じっている。いや、手練れという表現では控えめ過ぎる。そのくらいこの世界においては強過ぎる一団だ。まともに戦えているのはジギルバルト団長を筆頭に数人だけだ。こんな強者軍団がそうそういるはずがない…。


「だとしたら…いったい何が目的なのかしら?」


 『迷宮物語』でもシズメア教の過激派の仕業に見せかけて、実はストレイド王太子の陣営がクリスティナ王女と王妃を襲わせたのではという噂が流れる。


 シルヴィーによれば、『迷宮物語』では実行犯は見かけ通り過激派のシズメア教徒らしいが…。


 それはともかく、『迷宮物語』ではゴドウィン王の後継者がストレイドからクリスティナに変更されるのを防ぐためだというのが噂の根拠になっていた。だが、この世界では先にゴドウィン王が暗殺されているのだから王太子であるストレイドが王になるのは決定事項だ。今や、ストレイドにクリスティナや王妃を襲う理由がない。だが、実際には噂どころか襲撃者の中にストレイド王太子の親衛隊だとしか思えない連中が混じっている。少なくとも俺の目にはそう見える。


 アディの質問に俺は「わからない」と答える。


「危ない!」

「『チャージショット』!」


 アディの叫び声に応えてサラが馬上から放った『チャージショット』が、今まさにクリスティナ王女の命を奪おうとした襲撃者を捉えた。


「ぐふっ!」


 クリスティナ王女を襲っていた襲撃者は剣を真上に掲げたまま奇妙な呻き声を上げると、両膝を地面につけるとそのまま前のめりに倒れた。


「サラ、ナイスだ!」


 サラに声を掛けたアルスは、襲撃者達の間に飛び込むように馬を降りると、クリスティナ王女の方へ向かって走っている。


「サラ! やったわね!」


 興奮した声でアディがサラを称える。


 あっという間にクリスティナ王女のところまで走っていったアルスは、ジャンプして襲撃者達に斬り掛かかる。『跳躍斬り』だ。その後すぐに『回転斬り』で数人の襲撃者を弾き飛ばしたアルスは「クリスティナ様、無事でよかったです」と言うと、庇うようにクリスティナ王女の前に立った。そんなアルスを見るクリスティナ王女の顔が赤い。


 さすが主人公だ…。別に俺は羨ましくはない…。


 俺もすぐに戦闘に加わる。俺は馬を降りて『挑発』で襲撃者を引き寄せると次々と斬り捨てた。アディ、サラ、シルヴィーも遠距離スキルで攻撃する。突然、俺達が現れたことにより襲撃者達は混乱している。確かに強敵だが、俺達5人はザルバ大迷宮20階層をクリアしたことにより大幅にレベルアップしている。俺達のほうがレベルは上だ。


「とりあえず、数を減らしたいよね」


 確かに数がやけに多い。ただし、強者と思われる者は20名くらいだ。


「範囲魔法スキルを使いたいが、この状況じゃあ…」


 今は敵味方入り乱れての乱戦になっている。突然、アディが馬の腹を蹴って前に出た。


「私はアルメッサー辺境伯の三女アデレードよ。まとめて相手してあげるから掛かってきなさい。死ぬ勇気があるならね!」


 アディが大声で叫ぶ。アディの挑発に襲撃者の注意はアディに向いた。かなりの数の襲撃者がアディ目掛けて集まってきた。アディは素早く馬を返す。


「なんだ、口だけか!」

「ふん、こっちで相手してやるわよ」

「なんだと!」


 襲撃者達がアディを追う。


「『氷矢嵐』!」


 そこへシルヴィーの範囲攻撃魔法スキルがさく裂した。ブリザードのような空間が出現すると、その中では無数の尖った氷の矢が襲撃者達を襲っている。最上級職の魔導士になったシルヴィーが『氷矢雨』を強化することにより覚えた最上級攻撃魔法スキルだ。しかもシルヴィーが使っているのは伝説級の氷龍の杖だ。たちまち辺りは阿鼻叫喚となった。降ってきた氷が襲撃者の血で赤く染まっている。アディも魔法攻撃スキルで追撃している。


「王妃様とクリスティナ様を守れ!」


 声をした方を見るとアモスがいた。俺と目が合ったアモスは憎しみに満ちた目で睨んできた。もちろんこっちもだ。俺達が現れて形勢が変わったのを見て王妃やクリスティナ王女に恩を売ろうとでも思って出てきたのだろう。


「レオ、僕があいつをやるからレオはあっちを」


 アルスが特に強者に見える二人を指していった。アルスは既にリーダーらしき二人のうち戦士らしい斧を持った男の方へ向かっている。さっきから観察していたが、二人はたぶん最上級戦士と最上級槍士だ。ジギルバルト団長以外の王国騎士団では相手にならない。二人のリーダーらしき男の周りには他にも数人の襲撃者がいる。


「サラ、シルヴィー、アルスを頼む!」


 戦士をリーダーとする一団をアルス、サラ、シルヴィーの3人に任せた俺は、もう一人のリーダーらしき男である槍士の方へ向かった。アディも一緒だ。ジギルバルト団長はといえば、やはり5人くらいの強者に囲まれている。


 俺は槍を持った男を睨みつける。


「お前、ストレイド王太子の親衛隊だな!」

「……」


 男は何も答えない。だが、俺はこの男を魔獣狩りで見た覚えがある。


「それに、後ろいるお前達、お前達はウラニア公国軍と一緒にいたよな」


 俺は槍を持った男の背後いる5人くらいを眺めていった。これは、はったりだ。そして、当たりだったようだ。5人のうちの一人が俺の言葉に一瞬体を硬直させたからだ。やっぱりウラニア公国軍と一緒にいたのもストレイド王太子の親衛隊だったのだ。


「やっぱりな。アディ、こいつらはストレイド王太子の親衛隊で間違いない。そしてウラニア公国軍と一緒にアルメッサー辺境伯領に攻めてきたのもこいつらだ」

「誰がお前の言うことなど信じるものか…」


 やっと男が口を開いた。


「私はアルメッサー辺境伯の娘アデレードです。貴方達がストレイド王太子の手の者だと必ず証言しますわ」

「アデレード、何を言っているんだ。ストレイド王太子がクリスティナ様を襲うわけがないだろう」


 アモスだ。こいつはどこまで馬鹿なんだ。


「お兄様こそ目を覚ましてください」

「なんだと、妹の分際で口を慎め、アデレード!」


 赤い顔をしたアモスが唾を飛ばして叫ぶ。みっともない…。


「こいつら皆殺しだ」


 男が冷静な口調で指示した。


「お兄様聞いたでしょう。こいつらは私達も含めて皆殺しにする気です。正体がバレたからですよ」


 ガキン!


 俺の盾と男の槍が激突した。男は『刺突』を使っていたようだが、俺も『ガード』を使ったので仰け反りはしない。『刺突』を防がれた男はすぐには攻撃してこない。俺の出方を窺っている。ちょっとはわかっているようだ。


「『雷弾』!」


 バリッ!


 これは予想していなかったらしく男はなんとか避けたものの硬直している。20階層をクリアした俺のほうがレベルは高い。


 続けていつものコンボに移ろうとした俺は、間一髪でバックステップした。


 バーン!!


 危なかった…。


 俺の前の地面に炎の槍が撃ち込まれている…。さらには斧を持った男が横から斬り掛かってきた。それを俺は盾で防ぐ。ガシンと思った以上に大きな音がする。どうやら『チャージアタック』だったらしい。強力な溜め攻撃だ。


「くそー!!」


 思わず片膝をついた俺に、すかさずリーダ格の槍の男が『3連突き』を放ってきた。


「ぐおー!」


 俺はかなりのダメージを受けたが、アディが「『大回復』!」とすかさず俺を回復してくれた。


 アディの回復魔法スキルで立ち直った俺は勢いよく立ち上がると同時に「『シールドバッシュ』!」と叫んで槍男を弾き飛ばした。もどきではない本物の『シールドバッシュ』だ。21階層からのレベル上げでレベル49になった時に覚えた。


「ぐわあぁー!」


 俺に追撃しようとしていた槍男は『シールバッシュ』で弾き飛ばされた上、硬直している。


「『挑発』!」


 俺は『挑発』で男を俺の近くまで引き寄せた。ついでに男の近くにいた魔法系の職だと思われる女も引き寄せられている。さっき俺に『炎槍』で攻撃してきた女だ。


「『回転斬り』!」


 俺は『挑発』の効果で移動できなくなっている二人を巻き込むように『回転斬り』を使った。二人は悲鳴を上げて逃げようとしているが『挑発』の効果で逃げられない。その結果『回転斬り』は3発とも命中した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ