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9-8(王の死).

「ゴドウィン王か殺されるなんて…。大変なことになったわね」


 アディの言う通りで今の王都カイルは厳戒態勢だ。街には王国騎士が溢れている。この国の最高権力者であるゴドウィン王が暗殺されたのだから無理もない。確かにストーリーの最後に王は死ぬ。そして国は完全に二分される。だが、それは今じゃないはずだ…。それに王の死因は病死だ。


 だいたい、王より先に王妃が…。


 ここは学園にあるアルメッサー辺境伯派専用になっている会議室だ。俺はアディと二人で今回のゴドウィン王暗殺について話している。


「一体何が起こっているんだ?」


 街にはいろいろな流言が飛び交っている。その中でもっとも有力なのが過激なシズメア教徒の仕業だというものだ。だが、テロリストがどうやって王宮まで入り込めたのだろうか?


「王国騎士団の中にもシズメア教徒がいるって噂があるわ」

「まさか」

「王国騎士団にはオルデン聖国に近い地域の出身者もいるわ。今は神オルデン聖国だけど…」

「だが、採用する時に思想背景とかは調査するだろう」

「そうだとは思うけど…シズメア教徒がどのくらいファミール王国にいるのかは、正確にはわかってないんじゃないかしら」


 それ以上に気になるのは、これが『迷宮物語』のストーリーとは違うということだ。この時期に起こるのは王ではなく王妃の暗殺だ。一緒にクリスティナ王女も襲われるが生き残る。ジギルバルト王国騎士団長の奮戦で生き残るのだ。しかしクリスティナ王女を庇った王妃が死んでしまう。


 それが、あのジギルバルト団長を狂わせてしまう。トガムゼの呪いも関係している。


 王妃はもともとアルメッサー辺境伯派のアッパーヒル侯爵家の出身だ。ジギルバルト団長はアッパーヒル家の領地の出身で元は平民だが、騎士団長になった今は叙爵している。

 『迷宮物語』では、平民ジギルバルトと王妃の恋物語が描かれていた。二人が知り合ったのはアッパーヒル家の領都で行われた武闘大会でのことだ。優勝者したジギルバルトの首に優勝の証であるメダルを掛けたのが現王妃だ。そこからアッパーヒル家の令嬢と平民の恋物語が始まった。王妃が王に嫁ぐことになった際の二人の別れ場面は涙を誘う美しい場面だった。

 そして、王妃暗殺の後、狙われたのはクリスティナ王女であり、目的はクリスティナ王女を王の後継者にしないためにストレイド王太子が仕組んだとの噂が流れる。王は後継者をクリスティナ王女に変更しようと悩んでいるというのだ。もちろん王はその噂を否定した。しかし、その後すぐに王は死んでしまう。病死だ。王の死後、クリスティナ王女は王の後継者になる意思を示さず、最後はストレイド王太子を担ぐ王族派とアルバート殿下を担ぐ地方領主の権限拡大派で国を二分する騒乱の時代に入るわけだ。主人公の前に現れるラスボスは闇落ちしたジギルバルト団長だ。そしてそれがエンドコンテンツである陣営戦に繋がっている。


 だが、今回殺されたのはゴドウィン王だ。王は王宮の自室に一人でいたところを殺害されている。もちろん部屋の前には護衛がいたが、護衛も殺されていた。


「それにしてもセシルが殺されるなんて…」


 セシル・バークリー、王国騎士団第一師団第一大隊の大隊長だ。王国騎士団第一師団第一大隊の役目は王族の警護である。セシルは次期騎士団長の呼び声も高い男で、レベルも40近くあったはずだ。


 そのセシルが…。


「ちょっと気になるのは、シズメア教の過激派の仕業だという噂の他にアルバート殿下の仕業だって噂があることよ」


 アルバート殿下が…。『迷宮物語』のシナリオに似ているが…違う…。


 俺の怪訝そうな顔を見たアディが「アルバート殿下は長男なのに王太子に指名されなかった。それで不満を持っていたって話よ」と言った。

「だけど、ストレイドが王太子に指名されたのはずいぶん前の話だろう。なんで今頃になって…。しかも、まだ王が暗殺されて数日でそんな噂が…」


 それに王を殺したからって自分が王太子になるれるわけでもない。むしろ、これでストレイド王太子が王になるのが決定的になっただけじゃないのか?


「ストレイド王太子も襲われたって聞いたわ」

「そうなのか?」


 アディは4大貴族アルメッサー辺境伯の娘だ。しかもアルメッサー辺境伯は王族派だ。アディのほうが俺よりもいろいろと情報を持っている。


「何とか生き残って療養中って話よ。はっきりしたことはわからないわ」


 アルバート殿下が王と王太子を一度に排除して自分が次期王にってことか…。いや、あまりにもあからさますぎる。クリスティナ王女だっているのに…。


「最近ゴドウィン王がクリスティナ王女を後継者にしようとしているっていう噂があったよな?」


 魔獣狩りではストレイド王太子の株が上がった。だが、クリスティナ王女の陣営で魔獣狩りに参加した俺達がギグス王国の『魔物寄せの香』を使った企みを防いだ。その背後にはミタリ帝国もいた。そのことでクリスティナ王女の先見の明というか、改めてその優秀さが評価されたことも事実だ。実際に俺達を陣営に加えたのはクリスティナ王女の判断だ。


 それに…。


 クリスティナ王女は生まれつき『超回復』を持っていると公表されているが、実はそれは事実ではない。クリスティナ王女自身がそう言った。あれはガガス迷宮のボスである御遣様から10才の時に得たものだ。それまでガガス迷宮の御遣様は初級スキルしか授けなかった。なのにクリスティナ王女は最上級回復魔法スキルである『超回復』を得た。


 まあ、アディも上級スキルの『大範囲回復』を授かったのだが…。


 とにかくそのこともあって、ゴドウィン王はストレイドを王太子にしたことを考え直し始めていた…。これは、『迷宮物語』でも裏設定になっていたんだと思う。


「そうね」とアディが頷く。


 この世界はストーリーからずれている。だが、王の迷いや噂…。微妙にストーリーに似ているところがある。これがゲームの強制力というやつなのだろうか? 


 アディが死亡するイベント、探索者狩り、魔獣狩り…。


 これまでだって、結局『迷宮物語』のイベント自体は発生している。やっぱりこの世界は戦乱の時代を目指して動いているのだろうか?

 

 今、クリスティナ王女は王妃と一緒にアルメッサー辺境伯領にいる。王妃の実家であるアッパーヒル侯爵家に滞在中だ。王妃や王女は不定期に王国の各地を表敬訪問している。今回は王妃の実家のあるアルメッサー辺境伯領に出向いているのだ。ゴドウィン王が暗殺されたのだから急いで戻ってきているはずだ。


 嫌な予感がする。


 本当はもう少しアルメッサー辺境伯領に滞在するはずだった。予定を変更して急ぎ帰路についているのだ。アルメッサー辺境伯領からの帰路といえば…。


 まさか…。


「アディ、俺はアルメッサー辺境伯領に行ってみるよ。というかクリスティナ王女の様子を見に行ってくる。王都へ帰って来ているんだから途中で会えるだろう」

「私も行くわ」


 アディが間髪を入れずに言った。


「私達も行くよ」


 サラ、いつの間に…。隣にはアルスもいる。アルスは僕も行くと頷いている。


「私も忘れないでね」


 シルヴィー…。


「みんな、どうしてここに?」

「サラがレオとアディがなんかこそこそしてるって教えてくれたんだよ。さすがに学園の中ではまずいんじゃないかと思って見に来たんだよ」 


 何を見に来たんだ。


「いや、アディと今回のゴドウィン王暗殺の件で情報交換してただけだよ」


 隣を見るとアディの顔が赤い。


 シルヴィーは俺の近くに来ると小声で「王妃暗殺のイベントを防ぐつもりなんでしょう」と言った。やっぱり、シルヴィーも俺と同じことを思いついたのか…。


 俺はクリスティナ王女やジギルバルト団長には好感を持っている。もともと王妃暗殺は防ぐつもりだった。クリスティナ王女の母親が殺されてジギルバルト団長が闇落ちする姿なんか見たくない。その時期が早まるかもしれないと思いついた俺は少し焦っている。急いでクリスティナ王女達と合流しようと思っているのだ。


「レオ、王妃暗殺はね、実行犯はシズメア教の過激派だよ。だけど、裏にはミタリ帝国もいるの。過激派の連中を上手く焚きつけたのはミタリ帝国ってことね」


 そういえば、シルヴィーはストーリーに詳しいと言っていた。


「でも、この世界ではそれを利用しようとしている別の誰かがいるのかもしれないよね。だって、先にゴドウィン王が殺されたんだもの」


 シルヴィーの言う通りだ。アディによれば、ストレイド王太子も怪我をして療養中という話だが…。


 怪しい…。


 俺は魔獣狩りで見たストレイド王太子の姿を思い出した。

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― 新着の感想 ―
マスターの描いたシナリオかな? 真・コレオグラファーだったりしないかな。 実はこっそりコレオグラファー=レオを疑ってるんですよね。笑
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