力の強さ
翌朝、準備した荷物をもって質屋(ミールの家はそれも兼ねていたらしい)の前にいた。ちなみに、自分はシロからもらった鉄パイプとしばらく分の食料と水をマフラーに入れ、シロは予備で持ってたらしいパイプと自分のリュックを持っていた。
ミールはまぁ、何かたくさんよくわかんないものを入れていた。シロから「あれは気にしない方がいいよ。」と言われたけど、いや、気になるよ流石に。
「さてさて、準備できたし行こうか。探し物のアテはあるの?」
「ああ、もちろん。都市の南側に塔があるんだけどね、その塔にあるからそこを目指す感じだねぇ。」
「オッケー、じゃあ行こっか。」
そうして都市であるミカエラに入っていった。
「何か、武器とか多いね。」
前にいた都市にも武器や兵器はあった。けど、この都市はそれ以上の量や種類があった。
「ここの都市は戦争の中心地だった感じだからね。一番戦争の爪痕が深いんだよ。」
激しかったからだろうか、戦車や装甲車両が鉄塊になり、武器は乱雑に至るところにあり、翼をもがれた戦闘機が横転し、そして誰を殺すかも忘れた爆弾や地雷も転がっていた。
それにしても、なぁ...。凄いミールが気になる。なぜって?見ればわかるよ。だって...、
「ねえ、ミール。」
「ん?どうしたんだい?」
「何でさ、そのカバン持ててるの?力強すぎない?」
自分の身長ぐらいのパンパンのカバンを軽々持っていたからだ。どうなってんだこれ?何でそんな涼しい顔できるのかな?
「これぐらい普通だけどねぇ。」
「え?」
「え?」
普通...?これが...?
「いや無理だよ、自分持てないもん絶対。」
間違いなくびくともしない自信がある。持ててもバランスがとれないだろうし。そう考えたら本当に何で持ててるか分かんなくなってきた。
「...ちょっといいかい?」
するとミールは、コンクリートの壁に向かった。そして、腕を振り上げて、
"ゴッ!!"
振り下ろした拳を中心に、蜘蛛の巣状にヒビが入っていた。
力が強いとか、そういう次元じゃない。明らかに異常だ。
「これを見て、どう思ったんだい?」
「...明らかに普通じゃないなって思った。」
「...これは、みんなができることだよ。私が特別力が強いとかじゃなく、これが普通さ。」
これが、普通。つまり、この世界では、
「自分は、皆より力が圧倒的に弱いってこと?」
シロが頷いた。あれ、ちょっと待ってよ?力でみんなに負ける、この世界では盗賊がいる。と、いうことは...
「これちょっと不味いかも...。」
「「だよね...。」」
「ちなみに、レイってこれ喰らったら耐えれそう?」
「無理だね、良くて骨折しまくる感じになりそう。」
まさかこんなことになるとは...。
「とりあえず、レイは俺かミールから絶対に離れないでね。」
「うん。」
...これは何か対策とか考えた方がいいかな。流石にずっと守ってもらうのは大変だし。何かいい方法は、
"ブヴォン!!"
どこからか大きな音が聞こえてきた。
「ミール、この音...。」
「ああ、エンジン音だねぇ。しかも、出力が強めの。確認しにいくかい?」
「だね。何があるかは知っておかないと、ね。」
そうして、音の聞こえる方へ向かっていった。そこには、大きな倉庫だった建物があった。
「一応、構えておいて。」
そう言うと、シロはパイプを構えた。中にいるであろう人物は、友好的である保証はない。姿を見て、すぐに襲って来る可能性もあるのだ。ミールもナイフを取り出していたので自分もパイプを取りだし構えた。果たして、中に居るのは敵か、見方か。シロが閉じていたシャッターを開けた。
「...飛行機?」
倉庫の中には大きなプロペラがついていた飛行機があった。そして、エンジン部に潜り込んでいる人影があった。シャッターの音に気がついたのか、エンジン部から顔を覗かせた。
「...ん?珍しいのお、客人かな?」
ふぉっふぉっふぉ、そう笑いながら顔を出したのは髪の毛と髭が真っ白になり、学生帽のような軍帽のような、そんな帽子をかぶったおじいさんだった。