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技術者

目が覚めた。

起き上がると、昨日の焚き火の跡と誰もいない毛布があった。

シロは何処かに行ってしまったのだろうか、毛布を畳ながらそう考える。


「おはよう。よく眠れた?」

「うん」


シロはこの辺りを探索して見つけたであろう缶詰を持って帰ってきた。

なにげに美味しかったんだよねあれ。これからあれ食べれるって結構幸せだな。


彼は目の前に座って缶詰をしまい始めた。


「さて、そろそろ移動しようと思うんだ。」


移動...つまり旅が始まる。


マズイ、スッゴい楽しみだ。昨日の話だけでもワクワクしていたのに本当に旅に出るってなったらより楽しみが強まっている。


「どこに行くの?」


新しい都市か、それとも国か...


「まずは国に...って行きたいところなんだけど、まずは知り合いのところに行こうと思うんだ。」

「知り合い?」

「うん。そこの知り合いにちょっと任せてるものがあって、それを回収しにね。ちょっと歩くことになるけど。」


知り合い...というのもどうやらその人は都市の近くで質屋をやっているという。他と違う点は、それは彼女が物作りが大好きだということらしい。

シロ曰く、


「凄いものを作るときは凄いけど、大体おかしな物を作る変態。」


らしい。大丈夫なのかな、それ。

というか変態ってどういうこと?

まぁ悪い人ではないらしい。


そして、今はその人がいる場所に向かっているところだ。

かつての道路を歩いていると、よく色々なものを見かける。廃墟と化した建物、ツタが絡み付いた鉄塔、生い茂った緑そして、


「...戦車?」


苔むして朽ちかけてはいるが、自分がよく知る化学兵器があった。

ひとつだけでなく、いくつもの。それだけじゃなく、銃のようなものも。


「シロ、何でこんなに兵器があるの?」

「ん?えーと、かつて昔戦争があったんだ。それによって人がいなくなってしまったとされているんだ。」

「...されている?」


何で、そこが曖昧になるのだろう。


「うん。それがね、1つも遺体が出てこないんだ。大人も、子供も、男も女も。骨の1つも出てこない。だから、仮説としてるんだ。」


妙な話だ。戦争は、人と人との盛大な殺し合いだ。

殺し合い、ということは必ずと言って良いほど人が死ぬはず。でも、その人が出てこないのは妙だ。


「まぁ、もしかしたら何かあるのかもね。」


知り合いの人に向かうまでに、幾つもの朽ちた人がいた証拠がたたずんでいた。

けど、都市を抜けると人工物は無くなり、そこには荒野が広がっていた。


「ねえ、シロ、一応確認なんだけど、本当に人ってこの世界で生活してるの?」


そう思うほどに広大な荒野が広がっていた。文字通り見える範囲が全てにだ。


「住んでるよ。都市の周りがこうなってるだけ。国とかがあるところには草木があるし、めちゃくちゃ広い森もあるよ。」


この光景では当分に信じられないな。

そう思い、再び歩き始めた。


一方、とある場所で。


「ハックシュン!...誰かが噂でもしてるのかねぇ...。」


紫髪の女性が、顔をしかめながら呟いた。

手にとったコーヒーをすすり、カウンターを見る。彼女の周りには多くのモノが置いてあった。それは金属だったり、木材だったり、或いは──。


その中で異質な、なぜこんなところにと思う物があった。暖かい目で彼女はそれを見た。


懐かしい、昔の思いを巡らすように目を閉じ、それを撫でた。


それは思い出であり、記録であり、かつて居た証拠であった。

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