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旅立ちの前夜

「──でさ、何でシロはこんな場所にいたの?」


 今、自分たちはシロが荷物を置いているという場所があるらしく、そこ向かっているとき、聞いてみた。

 普通、旅をするっていってもただ見て回るだけならこんな場所までには来ないはずだ。実際、自分が目覚めた場所だって恐らくはこの都市の中心とも呼べる場所だろう。


「ああ、ちょっと物資とかそういうのを探索して探したりしてたんだ。」

「物資?もう残ってるものなんてそうそう無いんじゃないの?」

「それが結構あるんだよね。道具やら食糧とかね。」

「食糧って...さすがに腐ってるんじゃ...。」

「それが意外と大丈夫なんだよね。まぁ、缶詰とかそういう保存食だけだけど。」


 彼はにやっと笑って見せた。中性的だからなのか、可憐な少女の笑顔にも、楽しげな少年の笑顔にも見える。

 なんだろ、これからこの人と一緒にいるのが楽しくなりそうだ。


 そう歩いていると、ふと開けた場所に出た。

 彼は振り返って、


「着いたよ。」


 そこには、テントとリュック、そして焚き火の跡があった。

 その場所は、建物の中央が崩れ、上を見上げれば空が広がっていた。

 シロは瓦礫に持っていた鉄パイプを立て掛け、リュックに見つけてきたものだろう缶詰を2、3個入れた。


「んー、もう暗くなってきたし、ここで夜を明かそうかな。焚き火の準備しなと...、あ!レイはここに座って休んでて。」


 そう焚き火の後の、瓦礫の上を指差した。座るにはちょうど良さそうだ。

 そうして、しばらく待っていると、シロは、色々な大きさの枝を持ってきた。


「自分もなにか手伝うよ。」


 なにもせずずっと待ったままなのはソワソワするし、何だか申し訳ない。

 なので、そう手伝いを申し出た。彼は、火をつけようとしていた手を止めた。


「んー、じゃあレイはリュックから缶詰とスプーン二つずつ出してもらっていいかな?缶詰はリュックの底の方、スプーンは確か小さいポケットに入ってたと思う。」

「うん、わかった。」


 リュックの中は、ランプや服、その他様々なものが入っていた。それらをかき分けてゆくと、缶詰が見つかった。スプーンは鞄の側面に入れてあり、布で巻かれていた。

 にしても本当に色々なものが入ってるな、探索で見つけたものかな?

 とりあえず、必要なものは見つけたし戻ろう。


「持ってきたよ、これでいい?」

「うん、完璧。それじゃあ食べよっか。」


 パチパチと心地よい音を立てる焚き火を囲んで座る。

 彼が缶を開けるのを見よう見まねで真似して開けると、美味しそうなスープが入っていた。


「...美味しい。」

「でしょ?これで長持ちするんだから本当に便利だよ。」

「だね。...この世界ってさ、魔法とか科学とか、そういうものがあるって言ってたよね。」

「うん、そうだけどどうしたの?」


 彼は食べようとして口まで持ってきたスプーンを止め、こちらを見る。

 不思議そうな顔をするものだから、少し戸惑った。


「いや、魔法とかそういうものは自分にとって聞き馴染みのないものだから。どういうものか気になったんだ。」

「そっか、じゃあそのうちそういう国にも行こっか。」


 そういえば、自分を勧誘するときにも国とか他の都市とか言っていた。

 そういう国ってことは、色々な種類の国があるってことなのかな?


「いろんな国があるの?」

「うん、確か八個の国があるね。科学とか、魔法とか、農業に畜産とか。そういういろんな特色ある国だらけだよ。」


 国か。色々気になることが増えてくばっかりだ。なんだろう、久々にワクワクしている感じがする。記憶が消える前も、もしかしたら自分は旅をしていたのかもしれないな。


「とっても楽しみだね!」

「きっと楽しめるよ。」

 が

 雑談をしている間にすっかり食事は終わり、夜もすっかり更けた。空を見上げると、星が煌びやかに光っていた。

 寝る準備を済ませ、それぞれ寝転がった。


「それじゃあおやすみ、レイ。」

「うん。おやすみ。」


 夜はさらに更けていた。月が、浮かんでいた。

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