幕間 目が覚めたら。
夢を見てた。お父さん、お母さん。それに、大好きな友達のこと。
家の中では、和気あいあいと、いつもの美味しいご飯を食べて。時々喧嘩する2人を宥めて、慰めて。
お父さんが、いつも通り、食べすぎてお母さんに怒られてた。
私は笑って、その間に唐揚げをつまみ食いして──。
学校では、昨日見た配信の話とか、近くのカフェに新商品が出てたとか、どうでもいい話で盛り上がってて。
だけど。あれ。
これって、夢なんだっけ。
当たり前の日常だったはずだけど。
なんだか……よくわからない。
「友歌ちゃん」
声が聞こえる。振り返ると、友達が、お母さんが、私を呼んでた。
待ってて、今すぐ、そっちに行くね! そう言って駆け出したのに、まるで距離が縮まらない。
なんでだろう、こんなにも近くにいるはずなのに。
だんだん、だんだん、遠くへと離れていってて。行かないでっ! って、手を伸ばしたんだけど……。
「行かないで……」
そんな自分の声で起こされて。ほっぺたに、なにか熱いものが垂れてる気がした。
目を開けたら、いつもの天井が広がってるって思ったのに。
今日見たのは全部が夢で、家族に、友達に、楽しい笑い話が出来ると思ってたのに。
見えたのは、都会じゃ見られない、星座も埋もれるほどの星の海で。
キレイだった。美しかった。
木々のざわめきも。風の匂いも。とっても心地よくって。
だから私は──泣きたくなった。
「あっ……、う、うっ……」
夢があまりに優しかったから。
私の居場所は、もう遠い星の向こうにあったから。
隣にいるベア公の温もりは確かで。それが、嫌でもこの世界が現実なんだって思い知らされて。
あっちの世界が私のいるべき場所だったはずなのに、今私はここにいる。それが、たまらなく寂しくなった。
現実じゃないと思ってたから、あんな小っ恥ずかしいことが言えた。
夢の中だからこそ、私は恐れずに進むことが出来たんだ。
……だから。
「うっ、ひぐっ……うぅっ……」
「……グァ……?」
ベア公は私の声に、起きてしまったみたい。そして、泣いてる私を見てた。
ベア公は、なんで私が泣いてるのかなんて、きっとわからない。
それでも、ぽふぽふと撫でてくれた。
こんなにも大きくて、本当なら怖いはずの生き物なのに。
手のひらの肉球が、私の頭を優しく撫でてくれて。
「ベア公……、私、私……! あぁぁ……!」
柔らかさが、私の心を解してくれる。涙で濡れた瞳で、ベア公も見れなくなっちゃったけど、ベア公はずっと、私のそばにいた。
たったそれだけのことなのに、心に付いたキズに、カサブタがついてくれた気がしたんだ。