表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

幕間 目が覚めたら。

 夢を見てた。お父さん、お母さん。それに、大好きな友達のこと。

 家の中では、和気あいあいと、いつもの美味しいご飯を食べて。時々喧嘩する2人を宥めて、慰めて。

 お父さんが、いつも通り、食べすぎてお母さんに怒られてた。

 私は笑って、その間に唐揚げをつまみ食いして──。

 学校では、昨日見た配信の話とか、近くのカフェに新商品が出てたとか、どうでもいい話で盛り上がってて。

 だけど。あれ。

 これって、夢なんだっけ。

 当たり前の日常だったはずだけど。

 なんだか……よくわからない。

「友歌ちゃん」

 声が聞こえる。振り返ると、友達が、お母さんが、私を呼んでた。

 待ってて、今すぐ、そっちに行くね! そう言って駆け出したのに、まるで距離が縮まらない。

 なんでだろう、こんなにも近くにいるはずなのに。

 だんだん、だんだん、遠くへと離れていってて。行かないでっ! って、手を伸ばしたんだけど……。



「行かないで……」

 そんな自分の声で起こされて。ほっぺたに、なにか熱いものが垂れてる気がした。

 目を開けたら、いつもの天井が広がってるって思ったのに。

 今日見たのは全部が夢で、家族に、友達に、楽しい笑い話が出来ると思ってたのに。

 見えたのは、都会じゃ見られない、星座も埋もれるほどの星の海で。

 キレイだった。美しかった。

 木々のざわめきも。風の匂いも。とっても心地よくって。


 だから私は──泣きたくなった。


「あっ……、う、うっ……」

 夢があまりに優しかったから。

 私の居場所は、もう遠い星の向こうにあったから。

 隣にいるベア公の温もりは確かで。それが、嫌でもこの世界が現実なんだって思い知らされて。

 あっちの世界が私のいるべき場所だったはずなのに、今私はここにいる。それが、たまらなく寂しくなった。

 現実じゃないと思ってたから、あんな小っ恥ずかしいことが言えた。

 夢の中だからこそ、私は恐れずに進むことが出来たんだ。

 ……だから。

「うっ、ひぐっ……うぅっ……」

「……グァ……?」

 ベア公は私の声に、起きてしまったみたい。そして、泣いてる私を見てた。

 ベア公は、なんで私が泣いてるのかなんて、きっとわからない。

 それでも、ぽふぽふと撫でてくれた。

 こんなにも大きくて、本当なら怖いはずの生き物なのに。

 手のひらの肉球が、私の頭を優しく撫でてくれて。

「ベア公……、私、私……! あぁぁ……!」

 柔らかさが、私の心を解してくれる。涙で濡れた瞳で、ベア公も見れなくなっちゃったけど、ベア公はずっと、私のそばにいた。

 たったそれだけのことなのに、心に付いたキズに、カサブタがついてくれた気がしたんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ