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早よ落とせ 詩織目線
移動教室で私、春日井と親友甘利月乃は廊下を移動中だ。
「しおちゃん」
「何?」
月乃はモジモジした声をしている。
「あの、後ろ……」
後ろ? 後ろを振り返ると、学年トップでモテるのに彼女のいない江指快晴とその親友大起優意がいる。
「あっ、大起くん!」
「シーッ! 駄目だよ内緒って約束したじゃん」
「いいじゃん。大起くんとしか言ってないし」
月乃はプクッと頬を膨らませる。この子がやるとあざとくならない。逆にあざとい。
月乃は大起くんのことが好きなのだ。
「ほら、この前の作戦実行の時だよ」
「この前?」
もう忘れたのか。
「ほら、落とし物の!」
「あー。あれね。って今からやんの?」
「今からに決まってんじゃん。ほら、シャーペン早よ落とせ」
「カツアゲみたいだよ。しおちゃん」
「カツアゲじゃないから。落として拾わせんの。いい?」
できるだけ自然に落としたのだった。