早よ拾え 快晴目線
ある休み時間のこと。俺、江指快晴と親友の大起優意は次の授業が移動教室なので、廊下を歩いている。
前方を歩いているのが甘利月乃とその親友、春日井詩織である。
俺の隣の優意は甘利さんのことが好きなのでそわそわしている。見てて面白い。声がややでかくなってる。
ポトッと甘利さんがシャーペンを落とした。甘利さんは気づかず歩いている。
「これはチャンスだぞ優意」
「むりむり」
首をブンブン振る。悪魔の落とし物じゃないんだからそんなにビビらなくていいと思うのだが。
「甘利さんを俺だと思って渡せばいいんだよ。とりあえず拾え。甘利さん行っちゃうぞ」
「甘利さんがお前⁉ いや、むり。想像もできない」
「どーでもいいから、早よ拾え」
「お前が拾えばいいじゃん」
こいつどんだけ触れたくないんだよ。好きが遠回りしている。
「じゃ、春日井に渡したら? 春日井のやつ?って質問して、違うよってなるでしょ。そこで、春日井に月乃の?って質問をあっちからしてもらう作戦でどう?」
「じゃあ、これは春日井のやつな訳ね」
優意は深呼吸してシャーペンに手を触れる。顔が赤くなってる。うぶだな。ていうか、春日井のってなった瞬間、触れられるようになるの春日井に失礼じゃね?
「神様、仏様、快晴様見守ってて」
「承った」
優意は少し小走りで行って、春日井に声をかけた。ちょっと面白そうなので俺も近くで声が聞こえるくらいのとこに来た。
「えっ? 私のじゃないよ」
春日井が手を横に振る。
「あっ、これ私のだ。ありがとう快晴くん! 今度何かお礼させてね」
華……! 甘利さんとにかく華やかすぎやしないか?
「あっ、は、はい!」
片言だぞ。顔がもっと真っ赤になっててタコみたいだ……大げさだけど。
優意は猛烈なダッシュでこちらに向かってくる。
「ウオーー」
「怖」
息切れしながら俺の目の前までたどり着いた。
「やりきったぜ。快晴」
「好きで付き合いたいならもっと頑張れよ」
「も、もっと……?」
また、面白いなと思った。