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1話【告白】

上手く言葉にできない。術が分からない。時々自分が嫌になる。そんな中学生の心情を「神田(かんだ) 晴空(はるく)」の視点から表現する。もどかしくも拙い言葉で関係を紡いでゆく恋愛をお楽しみ下さい。

尚、本作品は主人公の視点からの描写にしておりますので、他の人物像は言動からご自身の好きに妄想してあげて下さい。

「よっ、モテ男くん」


僕は帰宅して、いつもの様にメッセージを確認すると見慣れない文章が届いていた。小学生の頃から仲の良い女友達の凛堂鈴華からだ。


「なにそれ?」


僕は少しばかり良い想像を期待しながら返した。


「別に〜、でも最近よく話聞くよ?」

「まじで!誰から?」

「それは内緒だよ〜、気になる?」

「気になる。教えてくれ!」


気がつくと制服も着たまま夢中で返信していた。頬が緩んでいた事に恥ずかしくなり、我に返った。着替えを済まし、宿題をこなそうと机に向かうが先程の返信が気になってそれどころではなかった。

(誰なんだろう、てか話を聞くってどんな話だ?)

僕は天井の電球をぼんやり眺め、自己分析を始めた。

(勉強は普通でこの間の2年2学期末考査の学年順位は真ん中よりやや上程度だったし、部活動のバスケはレギュラーではあるけど運動でモテるのは小学生までってよく聞くからなあ)

などと考えながら目線を鏡に移した。

(顔は中の下かな、いや中の上は堅いか、もしかするとイケメ…いやいや自分を過大評価すると痛い目をみるぞ)

そんな自問自答を繰り返しながらも、鈴華からのメッセージを見た時から胸の高鳴り所謂、高揚感というやつに僕は支配されていた。

すると、「ごはん!降りてきて!」と1階のリビングから母の大声。僅かなため息をこぼして、僕は階段を気だるそうに降りた。夕食中いつも通りたわいの無い会話をしたが、内容など全く入ってこなかった。

風呂も歯磨きも済ませて部屋に戻り、直ぐにメッセージを確認した。ああ、また気持ち悪い顔をしている気がする。しかし、メッセージを読み一変した。


「晴空って、好きな人いる?」


一瞬無音が流れた。表情が固まり、体温が上がるのを感じた。例えるなら豆鉄砲を食らった鳩。息が詰まるというのはこういう事を表すのだろうか。想像した返信と違っていて驚いたが、鈴華に嘘をつくのは性にあわないと思い素直に答えた。


「いるよ。1年の時から」


そう僕には好きな人がいるのだ。


僕が彼女を認識したのは、中学校に入学して間もない頃の下駄箱だった。いつものように上履きに履き替え、振り返ると何かにぶつかった。「わっ」とよろける女の子。僕は支えようと咄嗟に肩に手を回した。しかし彼女は自力で元の体勢に戻り、僕と目を合わせた。(やばっ、近い)僕も素早く元の体勢に戻り「ごめん」と謝罪した。彼女は「全然大丈夫!」と元気な笑顔を向けてくれた。

「ユナー、いくよー?」彼女は友達に呼ばれ、僕の前を去っていった。帰宅後、部屋で天井の電球を眺めながら今日のブレザーの硬い感触を思い出す。

(ごめんだけじゃなくて大丈夫?って言えばよかったかな。ユナって呼ばれてたなあ、何組なんだろう…てか笑った顔可愛かったなあ)

きっとこの時からだろう。学校内でよく見かける様になったのは。

名前は小白結凪。周りの友達は下の名前でユナと呼んでいた。1年1組に在席していて、1年2組の僕とは隣のクラスだった。更に女子バスケ部だった為、目で追う回数は必然的に増えていった。

まるで監視をするかのようにチラチラと彼女の行動に目を向けたり。目が合うと別の所を見ていたかのように振る舞ってみたり。すれ違う時は友達と少し大きな声で会話をして、大袈裟に笑ってみたり。

行動には必ず理由が存在する。理由とは意志だ。僕は彼女に知って欲しいのだ、神田晴空という人間を。好きだとか付き合いたいとかは正直まだ分からない。けど、言葉を交わして彼女を知りたいと僕は思うようになった。しかし僕は話しかけたり、まして連絡先を聞くなど出来るほど勇敢ではなかった。ただ運という不確定で他力本願な物に縋っていた。

それから部活の業務連絡程度に話す事はあったが、特に親しくなる事もなかった。所謂、ヘタレというやつだ。

そんなヘタレには更なる不幸が訪れる。1年の冬頃小白結凪に彼氏が出来たという噂を友達の島和人ことカズから聞いた。


「へぇ…小白って1組の?」

「そうそう!ハル知ってるだろバスケ部だし」

「で、誰と付き合ってるの?」

「サッカー部の月城渚くんだってさ」

「あぁ1組の」

「そうそう!かっこいいもんな月城くん」

「サッカー上手いしなー」

「それな!俺も彼女欲しいわ!」

「だなー」


と会話をしたが、僕は平静を装うので精一杯だった。心の中はカオスそのものだった。月城に対する嫌悪や嫉妬、それを感じてしまう自分の心の狭さ。これが悲しみなのか、怒りなのかすらも理解出来ずに、ただただやるせなさのようなものを感じ、僕は2人が付き合ってるという事実をひどく拒んでいた。

よく漫画やアニメなどで聖人主人公様が「俺はお前が幸せになれればそれでいい」的な事を放つシーンがあるが、僕には一切理解が出来なかった。

(自分が好きだった人が自分以外の誰かと幸せになる事を応援出来る程お人好しでもなければ、人間出来てねーよ。寧ろ上手くいってくれるなとも思っている。結凪は月城の何が良くて付き合ってんだよ。)

そんな愚痴を心の中で吐露した。

しかし、そんな事を思いながらも僕は2年生になった今でも彼女が好きだったのだ。

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