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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第96話 研究仲間ができてうれしいなぁ

地下室に構えられていたセーフルームの抜け道。俺はふらつきながら歩くムコムゥの手を引きつつ、そしてゾンビ・シーフに絶賛気絶中のイワガネを背負わせつつ、来た道を戻って階段の手前まで向かった。

すると、



「キウイ様! ご無事でっ!」



その地点、新水薬の開発場所と思われる大鍋が構えられた場所へと立っていたのは、地上階でこの建物の守りを務めていた魔族たちを相手取っていたシェスとオトガイの二人だった。



「もう、心配したのですよっ? この建物へと乗り込んで早々、お一人で勝手にどこに消えてしまったんですから……!」


「おお、それはすまなかったね」



どうしても、好奇心に背中を押されてしまって仕方がなかったのだ。

なにせ、ゾンビ・シーフが特定した新水薬の研究所へとシェスの聖術「魔族に対する目くらまし」を使用して忍び込んだ時点でワクワクは最高潮。そこへきて、何かの木箱にムコムゥを隠すように詰め込んでこの建物へと移動させてくる瞬間を目撃してしまったのだ。



……こんなのもう、われわれに知られたくないことがある! と宣伝しているようなものではないか。それを知りに行かなくてどうすると言うのだろう?



ゆえに、建物に到着するなり、荒事はシェスやオトガイへと任せて、俺自ら部屋の隅から隅までを捜索してしまうのは必然というもの。その後に地下室なんていうこれまた定番の隠し部屋を見つけてしまったなら、俺の理性がダンスを始めてしまったとて仕方ない……

というのは、きっと言い訳が過ぎるだろう。



「次からはもう少し気をつけることにするよ」



ちょっと好奇心に振り回され過ぎた、それは反省しよう。

そして繰り返さないように気をつける。できる限り。

ただ、なるべく心配をかけない範囲での知識追求を心がけたいのだけれど。



「ところでキウイっち、そこの二魔は……新水薬の黒幕だよね?」



オトガイが俺の後ろをのぞき込む。

その赤い瞳がとらえているのは、もちろんムコムゥとイワガネだ。



「どうすんの? 警吏に突き出す? この戦時下においてもたくさんの廃魔を生み出してきたんだろうし、たぶん魔国への反逆罪でソッコー極刑になると思うケド」


「いやいや、まさか」



そんなのは、とてもじゃないがもったいない。

確かにこの二魔が魔国へとダメージを与えたのは確かだろう。だが、それを差し引きしてでも、優秀な頭脳は簡単に闇へと葬ってしまうべきものじゃあない。



「彼女……ムコムゥにはこれからも研究を続けて「薬に対する魔力付与の術式」についての様々なノウハウを蓄積してもらうつもりだ」


「え……でも、それって私情だよね? 魔国の……魔王陛下の意思を仰がずに判断しちゃって大丈夫なの?」


「問題ないだろう」



それについては断言できる。

魔国幹部にはある程度の裁量権が認められており、それが行き過ぎかどうかの判断基準は「その行動が魔国のためになるかどうか」だ。

であれば、俺のおこないは完全に将来の魔国のためになるものだから。



「えっと、じゃあそっちの蜘蛛人種のイワガネは? そいつもまさか……」


「うむ。適切に活用するつもりだよ」



俺はコクリとうなずいてみせる。

バカとハサミは使いようとはよく言ったもので、人間にも魔族にも不要な存在などどこにもない。いると思うのだとすれば、それは " 使い方 " が間違っているのだ。



「イワガネが築いている地位……それを今のままそっくり " 丸ごと " いただいてしまおうじゃあないか」


「っ!? 丸ごといただくって……ちょ、待って待って? それってつまり、キウイっちがクラブ経営しつつフロアも沸かすってコトっ?」


「違う、そうじゃない」



俺は咳ばらいをひとつ。

それから言葉を続ける。



「いただくのは地位だよ。セーフルームも、クラブも、あまつさえ研究所さえ持っているイワガネには、これから私の思うがままに動いてもらう」


「うわっ、そゆことっ? 悪ぅ……!」


「フフ……クラブでの純利益をすべて研究開発の資金に回すことができる。なんとも素晴らしいシステムじゃないか」


「うーん……でもそっか。考えてみれば、やってることはグレーだケド、魔国的には妙なクスリを潰せて、一方のキウイっち的には知識追求ができる……超絶ワンワンなんだね、ソレ」


「それを言うなら「超絶WIN-WIN」だが、まあそういうことだ」



さらに付け加えていうのなら、新水薬の大元を捕まえられたということは、これまでイワガネたちがソレを売りさばいていた顧客のリストなんかも手に入るだろう。

そうすれば新水薬の中毒者を効率よく探し出し、 (強制的に)治療することもできる。

ゆえに、俺のやることには何も問題などない。



……ああ、うれしいなぁ。俺は魔国へと貢献しつつ、俺と同じ研究大好き仲間を増やすことができる。なんと幸運なことだろう!



チラリとムコムゥへと振り返り、ニッコリと、陰で練習を重ねていた友好的な微笑みを向けておく。



「ククク……まあ、そういうわけだ。これから仲良くやろうじゃあないか……!」


「ひゃっ、ひゃいぃぃぃ……!」



なぜか、ムコムゥにはビクリと肩を跳ね上げられてしまう。怯えられている。

どうしてだろう。ちゃんと言葉は通じているハズなんだけれどもな。

会話ってムズカシイ。


まあ、それはともかくとして、俺たちの方針は定まった。

いったんここは引き上げて、これからの新水薬についてムコムゥと腰を据えてじっくりと話し合いたいところだったのだが、しかし。



「──ま、待ってくれ。それだけは、やめてくれ……!」



そう絞り出すように発言したのは、ゾンビ・シーフに背負われており、ついさっきまで気絶していたはずのイワガネだった。

どうやら、いつの間にか起きていて俺たちの話に聞き耳を立てていたらしい。

まあ、それはいい。問題はそこじゃない。



「『それだけはやめてくれ』とのことだが、『それ』とはなんだ?」


「お、俺を利用する、というところだ……それをするくらいなら、どうかいっそのこと魔王陛下の御前に突き出してくれよ……!」


「む? なぜだ? 極刑になるだろう?」


「そっちの方がマシなんだよぅっ!」



イワガネは、その顔の八つの単眼を情けない青色へと変えて、鼻水混じりの声で続ける。



「俺がシャバにいて、アンタの言う通りに動いていると知られたら……絶対に " 組織 " のヤツらに見つかって、" 粛清 " を受けちまうっ!」


「組織? 粛清……?」


「俺はクラブや研究所のオーナーだけど、それは「管理を任されている」ってだけなんだ! 俺はそういう役割を与えられた組織の一員に過ぎないんだよぅっ!」



その声は必死そのもの。どうにも、何かの言い訳をしているふうでもなければ、デタラメを並べている様子でもない。

もう少し、詳しく話を聞いた方がよさそうだ。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第97話 組織の腕利き暗殺者集団?」です。

それではまた明日、よろしくお願いいたします!

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