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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第59話 万能型ダークヒーラーの育成

魔王城内には魔国幹部それぞれに専用の執務室があるらしい。

俺が招かれたその一室は、ダークブラウンとターコイズブルーを基調としたほの暗い海中のような落ち着いた雰囲気であり、その部屋の主である青髪のエメラルダにとてもよくマッチしていた。



「キウイ、あなたの部屋もそのうちできる予定ですが、今しばらく待ってくださいね」


「そうですか……それはうれしいですが、私はもらっても宝の持ち腐れになるでしょうね」



なにせ、俺の拠点はアラヤ総合医院なのだ。

執務室にいては患者も来れないし、器材もないから研究も捗らないだろう。なので単純に部屋の使い道がない。


エメラルダはソファ席を促してくれたので、俺たちは彼女の正面の二席へとありがたく腰かけさせてもらう。



「アラヤ様……本当に魔国幹部になられたのですね……」



俺の隣に座るのは、相変わらずの胸がキツそうなスーツ姿のサキュバスで、俺の使い魔をしてくれているミルフォビアだ。

基本的に魔王城内で行動する際は彼女がついて来てくれることになっており、今日もその例に漏れない。



「エルデンでのご活躍を耳にしない日はありませんが、まさか魔国幹部が増員される日が来て、それがアラヤ様になるとは……」


「……まったくもって私も同じ感想だよ」



とはいえ、もうそれについてはどうこう言っても仕方ない。

ちょうどよく戦功が立てられそうな機会を前に、つい欲を出して目立ちすぎてしまった自業自得でもあるのだ。

今後は自重しよう。

幸い、魔国幹部というのは責任だけが大きいだけではなく、しっかりと恩恵もあるようだ。ダークヒールの研究に必要な費用などは魔国が肩代わりしてくれるみたいだし、そういったメリットをしっかりと享受させてもらおう。



「さて、さっそくですが。キウイ、あなたに任せることになる初任務についてをお話しますね」


「……確か、万能型ダークヒーラーの育成だとか?」


「ええ。そうです」



エメラルダはコクリとうなずくと、



「現状の魔国軍には特定種族専門のダークヒーラーしか存在していません。これまではそれでも十分だったのですが、近代の戦争においては人間たちの使用する銃火器や " エルフたちが新発明した強力な聖術 " も脅威となっており、負傷兵の数が爆発的に増えました。専門特化のダークヒーラーたちだけでは手が回らなくなってしまっています」


「魔族たちの生来持つ強靭な肉体だけでは、時代的に限界を迎えつつある……そういうわけですな」


「はい。ですが、強靭な肉体こそがわれわれの一番の長所に他ならず、それを活かさない手段はありません。そこで……われわれは前線でマルチに活躍できる万能型ダークヒーラーを求めることにしたのです」



エメラルダは俺に視線をやる。



「そのダークヒーラーの存在がどれほどの戦果をもたらすかは、先のエルデン奪還戦であなたが証明した通りですよ、キウイ」


「……なるほど」



確かに先の一戦において、アギトという一大戦力とその男を回復させる俺……ダークヒーラーの存在は大きかったと思う。終盤は敵である勇者アレスが少し不憫になるほどの一方的な展開だったからな。



「それを他のいくつもの戦場においても再現しよう、ということですね?」


「その通りです」



ダークヒーラーの育成計画の必要性については理解できた。

だが、その育成すべきダークヒーラーはどこから見つけてくるのだろうか?

俺がそう問おうとしたとき、「その疑問に答えますよ」とでも言わんばかりに、執務室のドアがノックされた。



「──お初にお目にかかりまッチュウ、キウイ・アラヤ様」



執務室へと入ってきたのは首元から足元にかけてをすっぽりと黒いローブに包まれた二足歩行の陸生タコ型魔族──オクトパーシアの男だった。



「私は魔国軍で軍医総監を拝命しておりまッチュウ、エイセイと申しまッチュウ」



おちょぼ口でそう話すエイセイは大変うやうやしくあいさつをしてくれる。おそらくは俺が魔国幹部だからだろう。こちらも礼を欠かぬように、その場で頭を下げた。



「これはどうも初めまして………ところで、寡聞(かぶん)にして存じず申し訳ないのですが、軍医総監とは?」


「魔国軍属の全てのダークヒーラーたちの取りまとめや人事に携わる役職でッチュウ」



つまりそれは、魔国軍のダークヒーラーのトップということだろう。

相当なやり手に違いない。確か腕が八本あるはずだし、八名同時のダークヒールや八か所の患部への同時治療とかもできそうだ。



「本日はエメラルダ様より要請がございましたので、アラヤ様へとお渡しするこちらのリストの作成をしておりましたでッチュウ」



エイセイのローブの中から伸びる長い触手によって手渡されたのは、軍医のリストだった。五十名近い魔族のそれぞれの名前、種族名、そして実務経験などが細かに記載されている。

どれどれ、見ていこうか。

大事なのは特に経歴や経験年数なのだが……



・経験18年 専門種族:一

・経験18年 専門種族:一

・経験20年 専門種族:一

・経験24年 専門種族:二

・……

・……

・……

・経験127年 専門種族:三

・経験162年 専門種族:二

・経験189年 専門種族:二



「……な、なるほどなるほど……」


「いかがでッチュウ? 中堅からベテランまで、いま各部隊からすぐに引き抜けそうな優秀な軍医を全てリストアップしておりまッチュウ」



確かに、経験年数も経歴も申し分ない。



「これはすごいですね……! この方なんて、魔国統一戦争の参加者ではありませんかっ」


「本当ね。魔貴族のお抱えダークヒーラーの名前まであるわ。よくこれほどまでのベテランたちの都合をつけましたわね、エイセイ」



俺と同じくリストをのぞきこんで目を丸くするミルフォビアとエメラルダの反応に、エイセイは誇らしげだった。



「そーれはもう、大いに張り切りましたでッチュウ! なにせわれわれダークヒーラーが全面に出て活躍できる貴重なチャンスなのでッチュウ、アラヤ様には最高の配下をご用意せねばと思ったしだいでッチュウ!」



エイセイは誇らしげだった。

なんとまあ、ものすごく配慮してくれたのだろうなということは伝わってきた。



「エイセイ殿、ここまでの詳細なリスト化は大変だったでしょう。本当にありがとうございます」


「いえいえっ、お役に立てたならば苦労も吹き飛ぶというものでッチュウ。それで、お目当てのダークヒーラーは見つかりましたでッチュウ?」


「……それがですね」



俺は最大限の丁重さを心がけ、告げる。



「大変申し訳ないのですが、ここに挙げてくださっている軍医の中からでは選べそうにありません」




いつもお読みいただきありがとうございます!


「おもしろい」


「続きも気になる!」


と少しでも思っていただけましたら、

ぜひ評価ポイントやブックマークをよろしくお願いいたします!


次のエピソードは「第60話 ゼロ」です。

明日もよろしくお願いします!

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