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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第246話 【Side:人形】死人形 VS生人形

──黒いスケルトン。



いったいなぜコイツが、ここにっ!?

驚愕に満ちたマロウのその目を、スケルトンの暗い魔力を宿すドクロの目が覗き込み、そしてその口がカパリと開く。

その中から溢れ返るのは、数えきれないほど多くの黒い蟲。



……ヒッ!?



あまりのおぞましい光景に、頭を真っ白にするマロウへと、さらに追い打ちをかけるように、



「ズゴゴゴゴゴ──ッ!」



ドクロの口内に広がる闇が、渦巻いた。

マロウのその人形の体からは湧き上がるようにして青い生命力が立ち昇り、揺らいでいたそれは次第に一つの流れを形成して、スケルトンの口へと吸いこまれていく。

襲い来る虚脱感。

そして、魂の喪失感。

ゾッと、人形の背筋に寒気が走る。



……マズいッ!!!



戦慄している余裕も、これ以上生命力を押し殺している余裕もありはしない。



……このまま何もしなければ、死!!!



魂を燃え上がらせるようにして、マロウは全力を解放する。

するとにわかに、まるで青い太陽が昇ったがごとく、早朝前の黒の森の夜が明るく照らし出される。



「!? なにアレッ!?」


「ボグ殿、いったい何を捕まえているのだ……!?」



後方、洞窟の方で。

突如として現れた、生命力に満ち満ちたエルフの等身大人形の姿に、キウイたちがその目を見張っていた。



……そうだ、恐れ(おのの)け、愚者どもよ。



戦慄するのは本来、逆。

賢者であるマロウの姿にこそ、畏れを抱くべきなのだ。


気持ちを立て直したマロウは、生命力を凝縮し一つの細い線とすると、それを前方、ボグへと向けて鋭く撃ち放った。

高圧のかけられたそれは、岩をも切り裂く威力を持つ。

しかし、



「ズゴッ」



背負っていた黒の大剣を引き抜いたボグはたやすくそれを弾いてみせる。

驚く様子もなかった。

アンデッドなのだから感情がないのが当然といえば当然だが、マロウは気に喰わない。



……小癪なッ……!



心の中で舌打ちをしつつ、しかし優先順位を間違えたりはしない。

今はともかく、撤退が最優先だ。


幸いなことに、大剣を手に持ったことで、ボグのその手はマロウの人形の体から離れていた。

この機を逃すわけにはいかない。



……今は、生きねば!



マロウはボグへと背を向けると、一目散に走り出す。

黒の森を抜けるため、全速力だ。

人形の体が悲鳴を上げるが、それを気にしてもいられない。



「ズゴゴゴ……!」



ボグは大剣を引きずるようにしながら追ってくる。

しかし、その口や体の内側に大量の蟲を蠢かせている影響だろう、先ほどよりも動きは緩慢だ。

一度は逃げ切った相手なことを考えると、追いつかれることはないだろう。

振り返りざま、次第にボグとの距離は開いていくのを見て、マロウは再び生き延びたことを確信して安堵する。



──しかし、それも束の間。



マロウの頭上を追い越していったのは、暗緑色の火の玉。

いや、決してそんなものではない。

それでは表現し切れないほど見る者を不安にさせるソレは、嗅覚のない今のマロウにですら吐き気を催させるほどの、おぞましい臭気をまとった魔力の弾。



……なぜ、こんなものが、頭上を?



それを考えると、ゾクリと。

人形の背中がささくれだったような悪寒が、マロウを襲う。



……俺は知っている、この技を。真正面から見たことすら、ある。



ズキリと。

痛覚などないはずなのに肩口が痛む。

あの時、あの銀のオオカミに噛み千切られた、肩口が。



「──逃がしてくれるなよ、ボグ殿。なかなかに珍しいモンスターのようだからね」



その声の主は、マロウが振り返って確かめるまでもない。



……ダークヒーラーッ!!!



暗緑色に彩られた魔の言弾(コトダマ)は、キウイの指から連射され宙を走る。

そしてそれを追いかけ、その足を速めていたのはボグ・チェルノ。



「ズゴゴゴゴゴゴ──ッ!!!」



その目標をマロウから魔の言弾(コトダマ)へと移し、ボグは駆ける。

だが、そうとは知らないマロウの脳裏に思い浮かぶのは、この魔の言弾(コトダマ)に気を取られている間にウルクロウに背後をとられた記憶だ。

だからこそ、このボグもまた自分の背後を(やく)そうとしているに違いないと、覚悟を決めるしかない。



……この賢者である俺が、最強であるこの俺がッ、そう何度も後れをとると思うなよッ!



クルリと。

マロウは振り返ると、後のことなど知らぬと言わんばかりの、極大の生命力を人形の両手に集約する。

それはマロウが賢者として名を轟かせるに値するだけのもの。魔国幹部をして、直撃すれば敗北の瀬戸際に立たせるほどのエネルギー量だった。


そして……それこそが、マロウ最大の悪手であった。

魔国幹部ボグ・チェルノの動きが一瞬にも満たない刹那、止まる。

それは、エサから脅威へと。

処理の優先順位が切り替わった瞬間だった。



「……ズゴッ」



まだ剣の届く間合いではない。

それにも関わらず、ボグは大剣を大振りにする。

ともすれば体ごと持って行かれそうなほどの空気の流れがマロウを包み込む。



……突風ッ? いったい、何を……!?



嗅覚の利かないマロウは気づかない。

自らの元に運ばれてきた濃いアーモンド臭のする空気──飽和せんばかりのシアン化水素の存在に。



──チンッ。



ボグが振り抜いた大剣の勢いそのまま、刀身を鞘に納める。

摩擦によって飛び散る火花。

直後、



──周囲一帯を、青紫の爆炎が吹き飛ばす。



……。


……。


………………えっ?



気付けば。

マロウの視界を埋め尽くすのは、夜空。

星々の輝くその端はわずかに白み始め、太陽が昇りかけていることがうかがえる。

いや、そんなことはどうだっていい。



……なぜ俺は、空を飛んでいる……?



もがこうとして、しかし、両手も両脚もないことに気が付く。

下を向こうとして、胴体もないことがわかった。

頭だけが、天高く宙を舞っているのだ。

しかも、盛大に燃え上がりながら。



……いったい、何が起こったのだ……?



そして、頭の上昇は止まる。

ググッ、と重力に引かれるようにして、自由落下が始まった。



──ゴロンッ。



地面に落ちたマロウ……その人形の頭は、燃えるその勢いをさらに強めていった。

炎一色の視界の中、ユラリ、ユラリと。

陽炎のように形の定まらない影が近づいてくる。

その正体は……死神。

いや、違う、あの忌まわしき黒いスケルトンだ。

スケルトンは自らも燃えながら、それをいっさい気にする様子もない。

そして自分以上に激しく炎の立つマロウ人形の頭を鷲掴みにすると、持ち上げて口元まで持って行き、



「ズゴゴゴゴ……」



……オイ、ズゴゴじゃねぇよ。待ってくれ。俺の身に、いったい何が起こったのだッ? やめろ……やめろッ!!!



「ズゴゴゴゴ……」



……オイ、オイッ! 待て! このままじゃ本当に死ぬ! こんななりでも、俺はまだ生きているんだ! 俺は賢者マロウなんだ! まずはそれを知れ……俺がここにいるんだということを!



「ズゴゴゴゴ……」



……オイ、待て、このままじゃ本当に死ぬ! 聞こえないのか、誰か……誰か、俺を認識しろ……認識しろ! なぜ俺が、こんなわけのわからんヤツに……誰……認……して……。



「ゴゴゴゴ──ズッ……」



人形の頭から流れ出す生命力は、その全てがボグの中へと吸い込まれる。

そうして、東の賢者の全ては焼け消えていった。



いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第247話 絶対死の神術を極めた理由」です。


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次回は1/23更新予定です。

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