第244話 おッ、おぉぉぉ──ッ!
服を脱ぎ終わり、全裸となる。
俺がそっと足を差し出すと、ジェリーワームはそれを嫌がらず受け入れてくれた。
──ヌプリ。
ピンク色の、温かな口内に俺の足が埋まる。
温かい。
足先から順に、ジェリーワームの肉壁に生えるヒダが俺の体を絡め取り、そして奥へ奥へと招いてくる。
俺の体はまたたく間に首元までをスッポリと吞まれてしまった。
「こ、これは……」
そのぬくもりはまるで風呂。
とはいえ、決定的に違うのはその感触だ。
ジェリーワームの肉壁にビッシリと生える細かなヒダが、まるで高級毛布の起毛のごとく肌に優しくまとわりつく。
──ヌルヌル。
「な、なかなかどうして、悪くない……!」
王国内の活火山がある地域に泥湯というものがあるのだが、もしかしたらこれはそれに近いのかもしれない。
全身をなでるヒダの動きは優しく、肌を傷つける気配はない。
それどころか、
「おっ、おふぅっ!?」
ヒダはどんな細かなすき間にも入ってきた。
脇の下、股下はもちろんのこと、手の指の間から足の指のすき間まで。
念入りに撫でるようにしてヨゴレをこそぎ落としていってくれる。
最初こそ驚いたが、しかし慣れてしまえばどうということもない。
それに、
「おッ、おッ、肩と、腰がッ、おッ、おぉぉぉ~~~ッ!」
肉壁の中に突如として現れた硬い突起が、俺の体の各ツボを刺激する。
その力は最初は弱く、しかし俺に効かないと見るやどんどんと強くなっていき、ちょうどいい塩梅で繰り返される。
これは……これはすごい。
「なんッ、という高性能ッ! だろうッ……!」
痛さと気持ちよさの狭間で、思考が単純化するのがわかる。
脳内にエンドルフィンが溢れているのだろう……心身が解きほぐされていく。
──それから、いったいどれだけの時間が経っただろうか?
次第にジェリーワームの動きは小さくなっていき、そして、ペッと。
俺もまた床に吐き捨てられる。
受け身は取らなかったが、しかし体中にまとわりついた粘液のおかげか、摩擦もなく床の上を滑っていったのでまるで痛みはない。
「なるほど、これが……ジェリーワーム浴か……」
仰向けになり、何を考えるでもなく天井を見上げた。
全身を満たすのは途方もない充足感。
粘液に濡れた体を、不思議と厄介に感じない。
むしろ全身が蒸しタオルに包まれているようにポカポカとしていて気持ちがよかった。
「ど、どうでしたか? ジェリーワーム浴のお加減は……」
ヒョコリと。
床の上で大の字に寝そべる俺を、覗き込んできたのはモナルダだった。
どうやらすでに体は乾いているらしく、もう服を着ているようだ。
「……言葉もないね」
俺は親指を上げ、グッドサインを送った。
パァッと、モナルダの表情が輝いた。
そこへと、
「キウイっちたち、ドコぉっ!? ここにいるのーっ?」
そんな声とともに、部屋の扉が開く。
顔を覗かせたのはオトガイだった。
まだ早朝と呼ぶにも早い時刻だというのに、起きてしまったらしい。
「いったいどうしたのだね? まだ寝ていてもいい時間だが」
「あ、やっぱりこの部屋にい──」
オトガイが俺を見留め、そして絶句。
「んなっ……なっ、なぁッ!? どっ、どうしたはこっちのセリフなんですけどぉっ!?」
オトガイはそっぽを向くと、ビシリと俺のことを指さして、
「なんで裸で床に寝っ転がってんのっ!?」
「ジェリーワーム浴をしていたものでね。今は体を乾かしている最中なんだ」
「説明されてもぜんっぜん状況がわからないッ!」
「まあ、あまり直視はしないでくれると助かるよ」
オトガイはしかしチラチラと俺を見つつ、周囲を見渡した。
「そのデカい虫なにっ!? そんで、なんでジラっちとモナっちは平然と突っ立ってんのっ!?」
「私は、わが君が決めた行動を見守るだけですので……」
「わ、私はジェリーワーム浴後なので……」
「だからそのジェリーワーム浴ってなんなのっ!? ……っていうか、今はそんな場合でもなくてっ」
オトガイは「ハァ……」と、心を落ち着かせるように大きく息を吐き出すと、
「ねぇみんな、ラボの外の様子がなんかおかしいの」
「外の様子が?」
「うん。なんかさ、波が押し寄せてくるような、そんな音がしてた……」
オトガイのその言葉に、俺たちは顔を見合わせる。
「ジラド、何か感じるか?」
「申し訳ございません。外への警戒を怠っていましたもので。ですが今なら聞こえます──すぐそこに」
ジラドが指さした先、オトガイの足元に俺たちの視線が集まった。
そこへと現れたのは、黒い波。
「ひぎゃっ!? 蟲ぃっ!?」
オトガイは文字通り跳び上がると、部屋の壁を蹴って俺のすぐ側までやってくる。
「あっちもこっちも直視できないぃ~!!!」
「すまないね。もうちょっとで乾くはずだから、堪えてくれたまえ」
蟲たちはオトガイの反応にも興味を示さず、一直線にモナルダの元へと向かっていった。
「い、いったいどうしたの……?」
その場にしゃがみ込み、蟲たちと対話するようにその手のひらを床へと投げ出すと、蟲たちがよじ登る。
そして何かを伝えるかのような規則的な動きを見せると、モナルダの目が見開いた。
「……えっ。森に、侵入者……?」
そんなまさか、とでも言いたげな口調だ。
「侵入者とは穏やかではないな。まさか……メリッサがついてきたか?」
「いえ、蟲たちから聖力の反応はありません。おそらく、モンスターの類かと。稀にいるんです、蟲を捕食しようとして黒の森に立ち入る個体が」
モナルダはため息交じりに、大群をなした蟲たちの上に腰をかけた。
「い、居座られても困りますから、駆除しないと……」
「モンスターを殺すのかね? もしや、絶対死の神術で?」
「は、はい。騒動を収めるには、それが一番楽なので……」
なんと。
神術のお披露目か。
「私も同行しよう。ぜひこの目で絶対死を拝みたいのでね」
メリッサも詳細を知りたがっていたようだし、いい土産話にもなるだろう。
「え、ですが……」
しかし、モナルダは困ったように俺を──俺の頭から下を一通り見やると、
「そ、その恰好でですか……?」
「……ふむ。乾くまでいささか待ってくれないか」
いまだ全裸だった俺は粘液が早く乾くように手足をブラブラと、大きく動かし始めるのだった。
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次のエピソードは「第245話 【Side:人形】また貴様か!ダークヒーラー!」です。
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